映像資料の感想(環境社会学U)

2008年1月15日 2008年2月7日改訂

●ボノボ(2008年1月11日)

『謎の類人猿ボノボ(NHKスペシャル)』NHK1996年1月7日、49

キーワード:ボノボ(旧称ピグミーチンパンジー)、チンパンジーとともにヒトに最も近縁、自然界における人類の地位、暴力と平和における自然と文化

配布プリント 戸田「霊長類と暴力」『ナガサキコラムカフェAGASA』4号(200611月)4445頁、表 ヒト上科(ヒトと類人猿)の状況、ボノボHP(京都大学)のトップページ

伊谷原一 「ワカメスのアイデンティティ」、西田・伊沢・加納編『サルの文化誌』、 平凡社、1991年。

五百部裕 「ピグミーチンパンジーのオス間関係」、河合雅雄編『人類以前の社会学』、教育社、1990年。

五百部裕 「母親に頼るオスと自立したオス」、西田・伊沢・加納編『サルの文化誌』、 平凡社、1991年。

榎本知郎 『ボノボ 謎の類人猿に性と愛の進化を探る』、丸善株式会社、1997年。

榎本知郎 『性・愛・結婚 霊長類学からのアプローチ』、丸善株式会社、1998年。

加納隆至 『最後の類人猿』、どうぶつ社、1989年。

加納隆至 「人間社会の原型か?」、西田・伊沢・加納編『サルの文化誌』、 平凡社、1991年。

2頭の子を運ぶビヒ黒田末寿 『ピグミーチンパンジー』、筑摩書房、1982年。

黒田末寿 「食行為の社会化と食物分配行動の進化」、西田・伊沢・加納編『サルの文化誌』、 平凡社、1991年。

スー・サベージ・ランボー 『カンジ』、古市剛史監修、加地永都子訳、日本放送出版協会、1993年。

古市剛史 『ビーリャの住む森で』、東京化学同人、1988年。

古市剛史 「父兄社会を牛耳るメスたち」、西田・伊沢・加納編『サルの文化誌』、 平凡社、1991年。

古市剛史 『性の進化、ヒトの進化 類人猿ボノボの観察から』、朝日新聞社、1999年。

 出典 ボノボHP(京都大学) http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/shakai-seitai/shakai/BONOBOHP/index.htm

その他のウェブサイト

ビーリア(ボノボ)保護支援会 http://homepage3.nifty.com/bonobo/

  Bonobo Conservation Initiative http://www.bonobo.org/

以上3つのサイトにはボノボの写真多数。下記の写真集とともに閲覧してほしい。

 

その他の文献

『人と話すサル カンジ』スー・サベージ・ランボー、ロジャー・ルーウィン、石館康平訳(講談社、1997年)

『ヒトに最も近い類人猿ボノボ』フランス・ドゥ・ヴァール、フランス・ランティング写真、加納隆至監修、藤井留美訳(ティビーエス・ブリタニカ、2000年)写真集

あなたのなかのサル : 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源フランス・ドゥ・ヴァール、藤井留美訳(早川書房2005年)

『男の凶暴性はどこからきたか』リチャード・ランガム,デイル・ピーターソン、山下篤子訳(三田出版会、1998年)

『暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る』山際寿一(NHKブックス、2007年)著者はゴリラの研究で有名。

『5万年前 このとき人類の壮大な旅が始まった』ニコラス・ウェイド、安田喜憲監修、沼尻由起子訳(イーストプレス、2007年)

加納隆史、リンゴモ・ボンゴリ、伊谷原一、橋本千絵「ワンバの挑戦」パオラ・カヴァリエリ,ピーター・シンガー編(山内友三郎,西田利貞監訳)『大型類人猿の権利宣言』(昭和堂、2001年)

フランス・ドゥ・ヴァール(五百部裕訳)「ボノボの性行動と社会 人類にきわめて近いこの類人猿は、雌優位の平和的な社会を築いている」『日経サイエンス』1995年5月号

   (私がボノボに強い関心を抱いたのは、聖心女子大学でこの論文を見つけて読み、翌1996年にNHKで今回の映像を見たからである。もちろんピグミーチンパンジー(ボノボの旧称)の存在はそれ以前から知っていた)

橋本千絵「性行動の進化と社会 ボノボ、チンパンジー、ヒトの比較から」『科学』2007年6月号637641ページ(岩波書店)

『環境学と平和学』戸田清(新泉社、2003年)

戸田清「霊長類と暴力」『ナガサキコラムカフェAGASA』4号(200611月)4445

 

表 ヒト上科(ヒトと類人猿)の状況

 

 

居住国

人口

暴力と平和

戦争

殺人

子殺し

強姦

1.ヒト(ヒト科ヒト属)

国連加盟は192カ国

66億人

2.ボノボ(ヒト科チンパンジー属)

コンゴ民主共和国

約1万人

 

 

 

 

2.チンパンジー(ヒト科チンパンジー属)

アフリカの約20カ国

10万人

 

3.ゴリラ(ヒト科ゴリラ属)

アフリカの約10カ国

10万人

 

 

 

4.オランウータン(ヒト科オランウータン属)

インドネシア、マレーシア

約3万人

 

 

 

5.テナガザル11種(テナガザル科)

アジアの約8カ国

 

 

 

 

 

人間は動物界、脊索動物門、脊椎動物亜門、哺乳綱、サル目、真猿亜目、ヒト上科、ヒト科、ヒト属、ヒトである。表の左端の数字はヒトからの進化的な遠近であり、チンパンジー属2種はヒトから等距離なのでどちらも2である。サル目は原猿亜目(キツネザルなど)と真猿亜目に大別され、真猿亜目は新世界サル(ライオンタマリン等)、旧世界サル(ニホンザル)、ヒト上科に大別される。テナガザルの個体数推計については数字を入手できなかった。類人猿を「人」で数えることは松沢哲郎が提唱した。

ボノボ、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンの人口を合計しても、長崎市の人口を下回る。いずれも絶滅危惧種である。特にボノボが危機的である。

 

人類(サル目ヒト科ヒト属およびその祖先)とチンパンジー属(サル目ヒト科チンパンジー属)は700万年くらい前に分岐した。これが猿人とチンパンジー(いまのチンパンジーではなく、チンパンジーとボノボの共通祖先)の分岐である。猿人(サヘラントロプス属、アウストラロピテクス属など)は、ヒト属(ホモ属)へと進化した。ヒト属は原人(北京原人など)、旧人(ネアンデルタール人など)、新人(クロマニヨン人などのホモ・サピエンス)にわけられる。ネアンデルタール人はアフリカから欧州・中東に進出した原人の子孫であるが、新人へと進化することなく絶滅したというのが通説である。ヒト(ホモ・サピエンス)は15万年ほど前にアフリカで誕生し、世界に広がった。猿人も新人もアフリカで誕生したのであり、人類は原人段階と新人段階の2回の「出アフリカ」(アフリカから世界各地への拡散)を経験したというのが通説である(猿人はアフリカを出ることができなかった)。原人は新大陸に到達できなかった。旧大陸の動物は猿人、原人、旧人、新人と共進化してきたが、新大陸の動物はいきなり新人の脅威に直面したので、特に絶滅が激しかった。人類の進化については、『われら以外の人類 猿人からネアンデルタール人まで』内村直之(朝日新聞社、2005年)などを参照。チンパンジーとボノボは300万年くらい前に分岐した。おそらくボノボはこの300万年のあいだに「平和の文化」を進化(発展)させたのだと思う。ヒト以外の人類(パラントロプス、北京原人、ネアンデルタール人など)はすべて絶滅したので、ヒトに最も近い現存生物はチンパンジーとボノボである。資源利用と環境破壊、暴力、平等と不平等、男女関係、協力と争い、性行動などを考えるとき、ヒトと近縁の生物の比較は重要である。環境破壊は5万年ほど前に始まったとみられる。新大陸に典型的な大型鳥獣の絶滅である。農業と都市文明の成立(1万年前)に伴って、その他の自然破壊(森林破壊、塩分集積による農地の劣化・砂漠化など)や環境汚染(重金属汚染など)が始まった。同時に戦争も本格化した(縄文時代にほぼ戦争はなく、弥生時代に戦争が始まった)。中世の環境破壊は古代とあまり変わらない。産業革命以降、環境破壊は激化した。ヒト科動物の世界では、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンが男性優位であるのに対して、ボノボは女性優位である(哺乳動物の世界を見ると、たとえば他の肉食動物と違って、ハイエナは雌優位である。なおハイエナは死肉あさりもするが、優秀なハンターでもある)。ボノボはマザコンとも言われ、男(雄)の順位も有力な母親を持つかどうかにある程度左右されてしまう。ボノボは極めて暴力が少ない。ヒトでもチンパンジーでも若い男性と中年男性が最も暴力的であり、「男性優位」と「暴力の多さ」が無関係とは思えない。カナダのヘア・インディアンは、女性の地位が高く、レイプがほぼ皆無といわれる。ボノボとヒトは、生殖以外の目的(快楽や、争いの緩和)でも性行動を行う。以前は霊長目といっていたが、最近はサル目という。食肉目がネコ目に言いかえられたので、イヌやオオカミは「ネコ目イヌ科」という妙な表現になっている。チンパンジーは18世紀に発見され、近代生物分類学の父リンネも知っていたのに対して、ボノボの発見(チンパンジーとボノボの違いの発見)は1928年(昭和時代初期)のことである。1980年代までは「ピグミーチンパンジー」という表記が一般的であったが、チンパンジーと紛らわしいというので、1990年代からボノボ、ビーリアという表記が定着してきた。なお日本人はチンパンジーを見ても「サル」と言うが、類人猿はmonkeyではなくapeである。

種間競争では、攻撃的なチンパンジーが勝者、平和的なボノボが敗者であると言うしかない。チンパンジーはアフリカの約20カ国、ゴリラは約10カ国に住むが、ボノボはコンゴ民主共和国(旧ザイール、旧ベルギー領コンゴ、広島・長崎原爆のウランの一部もここで採掘)のみに住む(他の類人猿よりも、もともと生息域が狭い)。チンパンジーは図太く、ボノボは繊細である。第二次大戦末期のドイツの動物園で、空襲におびえるボノボがショック死したが、チンパンジーは平気だった(都市への無差別爆撃はもちろん米英の戦争犯罪)。人類との関係ではもちろんすべての類人猿が敗者(IUCNレッドデータ絶滅危惧)である。1970年代には10万人以上いたと思われるボノボは1万人を割っているかもしれない。

松沢哲郎(京大霊長類研究所所長)らの瞬間的記憶力の研究では、パソコン画面に5つの数字を0.21秒開示し、小さい順に答えさせる課題で、平均年齢19歳の大学生より平均年齢5歳半のチンパンジーの方が、正答率が高かった(朝日新聞2008年1月19日別刷の特集)。若いチンパンジーの成績が京大生を上回るという驚くべき結果である。「想像以上に、ヒトができることはチンパンジーにもできて、チンパンジーにできてヒトにはできないことがあった。」人間は高度な言語能力を獲得する代償として、ある種の短期記憶能力を失ったのである。なお、チンパンジーに対する「残酷な」生体実験は、現在ではほぼ行われていない。類人猿を「1人、男、女」と呼ぶことで知られる松沢の著書には『チンパンジーはちんぱんじん』(岩波ジュニア新書、1995年)、『チンパンジーの心』(岩波現代文庫、2000年)、『進化の隣人 ヒトとチンパンジー』(岩波新書、2002年)などがある。

 

以下に「ビーリア(ボノボ)保護支援会」のサイトから古市博士(NHKの映像にも出ていた)の「ボノボが危ない」を引用する。

http://homepage3.nifty.com/bonobo/

 

ボノボが危ない

 

アフリカ中央部の大国、コンゴ民主共和国(旧ザイール共和国)にのみ生息する、私たちヒトに最も近い類人猿のボノボ(ボノボのページ)。ボノボは、今世紀[20世紀]前半に発見されて以来、霊長類やヒトの進化について、さまざまなことを教えてくれてきました。そのボノボが、森林伐採、商業目的の狩猟、そして内戦と、さまざまな理由で存続の危機に直面しています。

 私たち日本人研究者は、ボノボが発見されて間もない1974年以来、ボノボの住む熱帯雨林のちょうどまんなかあたりにあるワンバという村に調査基地を構え、生態や行動の研究と保護活動を進めてきました。しかし、1991年からの度重なる内戦のために、奥地での活動は1996年を最後に中断したままになっています。

 戦争は、野生動物に大きな危機になります。森を進軍する兵士は野生動物を食料とし、生活に困った住民は、わずかな現金収入のために普段は獲らない野生動物でも捕まえて食料にしたり売ったりしようとします。現在コンゴにどのくらいのボノボが残っているのかはまったくわからなくなっていますが、すでに1万頭を大きく割り込み、このままでは絶滅の可能性もあるという推測もあります。

 戦争状態が続く限り、私たちはまったく無力です。これまでに積み上げてきた保護活動のノウハウも、現地に入れないのでは役に立ちません。とはいっても、平和が来るまで待っていたのではボノボはいなくなってしまうかもしれない。せめてコンゴの首都キンシャサで、何かできることはないだろうか。そう考えてはじめたのが、この「ビーリア(ボノボ)保護支援会」の活動です。ビーリアというのは、村人たちが使うボノボの現地名です。

 

マダム・クローディンとAAC

 

 このボノボ保護支援会の最大の目的は、キンシャサで草の根のボノボ保護活動を進めていらっしゃるクローディンさんの活動を支援することです。

 キンシャサで生活するフランス人のクローディンさんは、内戦でキンシャサの治安も悪化していたころ、ろくに餌も与えられずに動物園の檻に閉じこめられたまま放っておかれていたボノボたちを見るに見かねて、その世話をしはじめました。活動の資金源があるわけではなく、与えるものがないときには、市内のホテルを回って残り物を集めたりもしていました。

 やがてそんな彼女の活動に共鳴する人たちが現れ、ボランティアで活動を助ける人、空いている土地を貸してくれる学校などが現れ、彼女はAACles Amis des Animaux au Congo, コンゴ動物の友の会)というNGO組織を設立し、ボノボのためのサンクチュアリーを作って保護活動により大きな力を入れることになります。

 AACの活動の中心は、ボノボの密猟を出口で止めるということです。コンゴの奥地で捕獲されたボノボは、オトナなら肉として消費され、子供ならキンシャサまで運んで来られてペットとして売りに出されます。これを見つけて、コンゴ政府の許可のもとに強制的に没収し、「ボノボを捕まえて首都にもっていっても金にはならない」ということを、全土に知らせようというのです。何か、とても遠い間接的な活動のようですが、生息地の現地に入れない今、これも大きな保護活動なのです。この他に、より積極的にボノボの運搬ルートであるコンゴ川に検問所を設ける計画を進めたり、コンゴ全土に向けたラジオ放送でボノボを失うことが将来的にコンゴにとって大きな損失になることを訴えたりしています。

 没収したボノボは、当然彼女が育てなくてはなりません。今はキンシャサ郊外のアメリカンスクールのキャンパスを借りて、10数頭のボノボを育てています(ボノボ・サンクチュアリー訪問記)。単に飼育するだけでなく、地元の住民や学校などを対象に見学会などを積極的に開き、ボノボのことを少しでも多くの人に知ってもらう活動を進めています。これだけのボノボを良い状態で飼育するには、多くの人の力を借りなければならず、それにかかる資金も大変なものです。また、売りに出されるボノボの監視や没収、ラジオ放送などの活動にもかなりのお金が必要です。今は、欧米の動物園や保護団体などからの寄付にたよって運営していますが、私たちも、彼女のこの貴重な活動を、なんとか支えていきたいと考えています。

 

ご支援のお願い

 

 活動を初めてからこの2年間で、日本の皆様から思いのほか多額の募金をいただき、これまでに3回、合計2万ドル近くをAACに送ることができました。これまでは、募金をいただいた方に個別に活動のご報告をお送りしていましたが、これからはこのホームページを立ち上げ、より緊密にAACと私たちの活動をご報告していきたいと思います。この活動の趣旨をご理解いただき、今後とも少しでもご支援をいただけるよう、お願いいたします。

 

ビーリア(ボノボ)保護支援会 

古市剛史

 

以上引用。

 

受講生の感想

「ボノボという最後の類人猿と呼ばれている動物のことは初めて知った。とても人間に近く、群れ同士の助け合いを見ていると心が温まった。また、言語を理解でき、そしてさらにはそれを教えるということはとても重要であり、進化していると思う。流行があるというのは柔軟であると思う」(男子)

「ボノボがすごい。立ち居振る舞いはほとんど人間と同じにみえた」(男子)

「本当に言葉を理解している霊長類がいるんだと思って驚いた。そういった生物を研究することで進化の過程というものがわかってくれば良いと思った」(男子)

「ボノボには力の弱いメスを優先させるルールがあるようで、他の類人猿にはこれは見られない」というナレーターの言葉に、他の類人猿にヒトも含まれているのかなあと思うとおかしかったです。ボノボの方が争わない分精神的に優れている。また「長い親指をもつのはボノボと人間だけ」と聞き、親指の大切さを知りました」(女子)

「アフリカではよく動物が殺されていくという話を聞くが、ボノボもその例にあてはまるのだろうか? でも、ここまで人間と共存できている動物もそういないと思った。ワンバ村の人々はボノボを害と思わず、むしろ仲間だと言いきっていたし、このような関係が他の動物にも当てはまればいいのにと思った。」(男子)

「類人猿が人類のことばを理解できるなんて初めて知りました。特にボノボの群れにはきちんと決まったルールがあることも人間社会に近いと思いました」(男子)

「類人猿でもボノボのようなとても頭の良い種がいるのは今日初めて知った。将来的に映画のように私たち人間と立場が入れ替わる日も来るかもしれないと思った」(男子)

「ニュースにしても何かと暗く血なまぐさい話題が多かったので、今回のボノボのビデオはとても新鮮でした。生物学的に人間に近いということで行動が似ていましたが、人間よりもずっと心優しいのですね。人間がもしもボノボ寄りに進化していたら、もっと社会は違うものになっていたでしょうか? 人間は「賢い」というより「ずる賢い」方に進化してしまったかな?」(女子)

戸田コメント 人間がボノボ寄りに進化して暴力の少ない社会をつくっているパラレルワールドを描いたSFがあれば面白いだろう。

「ボノボはあまり数が多くなく強いわけでもないので、しっかりしたグループ社会ができたんだと思います。こんなに優しい気持ちで過ごせたら幸せだと思いました」(女子)

「今回の講義はいつものビデオとは少し違ったビデオであったが、チンパンジーよりも知的レベルがヒトに近い生き物がいるのを初めて知った。仲間がお互いに助け合う精神は今の人には欠けてきつつあるので、ボノボを見習わなければならないのではと思った」(女子)

戸田コメント 私が使う映像は「暗い」ものが多いので、環境社会学Tの「アイガモ農法」と環境社会学Uの「ボノボ」を「清涼剤」にしている。

「ボノボの思いやりの心に気持ちがやわらいだ。戦争をするのは「本能的」なものだという考えがあるが、それは間違っていると思った。また、博士の言葉を理解する能力があることに驚いた」(女子)

戸田コメント 人類史(ヒト属の歴史)700万年のなかで戦争があるのは貧富の格差が大きくなってから、つまり最近1万年の出来事であると思う。

「ボノボはとても優しい種である。素晴らしい社会だと思った。特にエサを奪い合わないルールは感心した」(男子)

「ボノボという存在を知り、霊長類のすごさを感じました」(男子)

「今日はボノボのビデオを見た。ボノボの知能の高さには驚いた」(男子)

「ボノボが人間の言葉を理解し行動しているのがとてもかわいらしかったです。しかし、このように人間に近い動物がいるということはとても驚くべきことで、まだまだいろんな動物が進化しつづけているという事実を少しこわく思います。いつの日かボノボのような賢い動物が人間と一緒に暮らす日が来るかもしれませんね」(女子)

戸田コメント ヒト属の脳はこの700万年のあいだに重さが3倍近くになったが、チンパンジー属の脳の重さはこの700万年のあいだにほとんど変わっていない。ヒト属の脳の進化は生物の歴史のなかでまったく異例の現象である。猿人の脳はチンパンジーとほとんど変わらなかった。原人になると脳の急速な進化が起こった。『なぜヒトの脳だけが大きくなったのか』濱田穣(講談社ブルーバックス2007年)など参照。

「映像でボノボの生活を見ると本当に人間のように見える時がある。人間の言葉(英語)を理解し、それに従って動くところから、知能の高さを感じさせるし、争いが起きないように全てのボノボが思いやりを持つところは尊敬しなければならないところだと思う。人間は欲望に勝てずに戦争や環境破壊を起こしてしまった。もしボノボのように欲を抑えて他を思いやる気持ちを人間すべてが持っていたら、どんなに平和だろうと思った」(女子)

「ボノボの生態についてはよく知らなかったので、興味深かった」(男子)

「ボノボの社会では大きな争いが起きる前に解決するシステムが確立していた。オスとメスのそれぞれにリーダーがいるというのは、非常に興味深かった。今回ボノボという動物を初めて知った。ボノボの社会には群れの他の者に対する思いやりがあふれていた。とてもかわいい動物で、しかも最もヒトに近い動物ということで、今後ますます研究されていくのだろうと思った。今日の映像には心暖まるものがあった」(男子)

「豊かな森に同じ種の仲間と生活することができるボノボだからこその思いやりなのかなと感じました。同じ属のヒトもそうあればなと思うところもありました。」(男子)

「ボノボの譲り合う文化に驚きました」(女子)

「今日のビデオでボノボという動物の存在を知ったのだが、ここまで知能が高い動物がいることに大変驚いた。ほのぼのした気持になった」(男子)

「ボノボはすごく優しくて良かった。皆がルールを守って生活しているから協力できるのかと思うと、知能の高さとその方向性が人間も学ぶところが多いと思う」(女子)

「今まで、人間に近い動物としてチンパンジーは知っていたが、ボノボについては知らなかった。今回映像を見てその心の広さに感動した。ボノボは人間が進化していく中で忘れてしまっている「仲間を思う心」を持っていて、争いをしようとしないのですごいと思った」(女子)

「ボノボという生物を初めて知ったが、とても頭が良い動物であると思ったと同時に、仲間を思いやる心があるすばらしい動物であると思った。ヒトは様々なことで争いあうが、ボノボの社会では争いがないと知り、ボノボの社会は理想的な社会であると思った」(男子)

戸田コメント ボノボの社会は争いがないのではない。争いが激化しないのである。

「ボノボは本当に知能が発達していると思った。他者への配慮ができて争いがないというのはすごいと思った」(男子)

「今までボノボという哺乳類について全く知りませんでした。今回のビデオを見てボノボは最も人に近く、知能だけでなく、動物に抑えられ難いはずの本能を抑えての行動があるのは驚きでした。」(男子)

「ボノボという動物を初めて知った。ボノボはメスや年老いた者にも優しく思いやりがあり、争いがほとんど見られないというのに驚いた。ある意味人間よりも知能が高いと思った」(男子)

「子殺し行動は自らの適応度を上げるための行為ですが、これは暴力扱いになるのでしょうか? それからまったく関係がありませんが、ヒラリー・クリントンがしきりにchangeと言っているのはよく聞きますが、オバマ氏は何をかかげているのでしょうか?」(男子)

戸田コメント ヒトの子殺しも適応度を上げる行為かもしれない。江戸時代の貧しい農民の「間引き」は家族の共倒れを防ぎ遺伝子を残すためだった。『暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る』山際寿一(NHKブックス、2007年)の第5章は「暴力の自然誌 子殺しから戦争まで」と題されている。動物の子殺しといえば、ライオンやハヌマンラングール(インドのサル)が有名である。群れを乗っ取った雄が前の雄の子を殺して雌を妊娠させる。山際前掲書188頁でチンパンジーの異様な子殺しが紹介されている。「チンパンジーの子殺しの異様な特徴は、殺した子どもをみんなで食べてしまうという点である。これは獲物の肉を食べるときと酷似していて、オスやメスたちが殺到して肉を求め、分配をせがむ。この異様な興奮が肉食という習性のためなのか、別の要因によるのかはよくわかっていない。」チンパンジーは小型のサル(コロブスなど)などを殺して、分け合って食べる。ゴリラはほぼベジタリアンである。ボノボもベジタリアンに近い。なお、哺乳類の子殺しを初めて発見したのは日本の学者である。『子殺しの行動学杉山幸丸(講談社学術文庫、1993年)。ヒト属では、猿人のパラントロプスが「早すぎたベジタリアン」で、脳を大きくすることができず、他のヒト属との競争に敗れた。オバマ候補の力点は、「一貫してイラク戦争に反対してきた」、低所得層減税、大企業増税などみたいである。

「ボノボが火を使っているのには驚いた。ボノボがなぜこんなにも平和的なのだろうか」(男子)

「食料など、不足しているものを譲り合ったり、分け合う。困ったことや、1人では不可能なことがあれば、助け合って解決する。人間は霊長類中では一番進化していると言われているが、人間が自分たちより下位だとしている動物に比べてどうだろうか。今回見たボノボのように信頼関係が成り立っていない。上記のような行動は皆無であり、自分さえよければいいと思っている人が多くいる。トップにいるというのなら、下位の者がすることはできてあたりまえだろう。優越感に浸る前に、学習していく努力を惜しんではいけないと感じました」(男子)

「ボノボという種についていままでチンパンジーと同じ類人猿程度に思っていたが、意外にも人間よりも人間があるべき姿だなと感じた」(男子)

「ボノボは争いを避けるために譲り合うという社会ができていて、平和に暮らせていると思った。人間もボノボを見習うべきだと思ったし、譲り合いの心がもてれば戦争もなくなるのではないかと思う」(男子)

「暴力は食料などがうまく共有できない、できてないことから生まれるのではないだろうか? 差を生むしくみが暴力と結びついていると思う。ボノボの移動のときに最後のボノボが来るまで待っている行動、さらに交替をする行動に驚いた。人の言葉が理解できる能力をそなえているのであるから、ボノボ同士の意思疎通の言葉などがあるのではないか?」

戸田コメント 人類史700万年のなかで暴力が激化したのは、貧富の差が拡大し、階級社会ができた1万年前(農業と都市文明の成立)からだと思われる。日本では、弥生時代から暴力が激化した(『人はなぜ戦うのか 考古学からみた戦争』松木武彦、講談社2001年)。ボノボのコミュニケーションは、言葉とまではいかなくても相当高度であろう。人類史における言語の誕生については直接証拠が残らないので推測が多いが、歌うネアンデルタール : 音楽と言語から見るヒトの進化スティーヴン・ミズン、熊谷淳子訳(早川書房、2006年)などが参考になる。

「ボノボがもっている仲間を思いやる心を人間ももっているのになぜ争いがおこるのかと思いました」(男子)

「ボノボは自分の想像以上に賢かった。人間の言葉を理解し、その意味もわかっている。ほとんど人に近いのではないだろうか」(男子)

「カンジがヒトの言葉が理解できるのはカンジのみの特別な能力なのか、それとも訓練すれば全てのボノボが修得できる能力なのか興味がわきました。四足歩行だったのに二足歩行になったりと少しずつ進化しているような行動を見ると、あと数万年すればヒトの言葉が理解できるのではないかとさえ思えた。研究のためとはいえ、ツムーリを叱っているシーンは心が痛かったです。あれだけ知能があると研究のために飼われているのもかわいそうに思えてきます。いくら自然の状態に近くして飼育していても、違いがあるだろうから、問題は起きないのだろうかと思いました。今後、一層、ボノボやチンパンジーなど知能の高い動物たちの研究が進んでいったら、彼らの権利を考えなければならない場面も出てくるのではないだろうかと思いました」(女子)

戸田コメント これは重要な論点である。欧米では「動物の権利」一般に加えて、「類人猿の権利」「霊長類の権利」についてさかんに議論されている。『大型類人猿の権利宣言』パオラ・カヴァリエリ,ピーター・シンガー編、山内友三郎,西田利貞監訳(昭和堂、2001年)、『なぜサルを殺すのか 動物実験とアニマルライト』デボラ・ブルム、寺西のぶ子訳(白揚社、2001年)参照。

「今までの講義では、人のいやらしいことを多く見てきたが、本日の講義で見たボノボは知恵もきまりも優しさも持っていて、人よりも人らしいと思った。人も豊かな生活よりも豊かな心を優先して暮らしていくべきだと思った」(男子)

「ボノボの知能の高さにも驚いたけれど、それ以上に仲間を大切にしたり気づかってあげたりする優しさや平和主義な行動にもびっくりした。博士がボノボに言葉をかけてそれを理解できていなかったら、わかるボノボが教えてあげたりしていて、知能も優しさも兼ね備えていて感心してしまいました」(女子)

「ボノボの話は初めて聞きました。すごく山の奥地の話で知られにくいところではありますが、素通りできないまだまだ多くの不思議がそこにはあるのだろうなと感じました。愛嬌があり、ずっと見ていたかったです。」(女子)

「ボノボの生き方は、今日の人間なんかよりよっぽど賢いのではないかと思う。他を思いやり、自然と共に生きている。現代人にそんなことはできない。互いに傷つけ合い、自然を壊すことで生きる。人もボノボのように生きられないのだろうか」(男子)

「一般的にチンパンジーが人間に最も近い高等動物として知られていますが、ボノボの高度な能力はチンパンジー以上に人間に近いと実感しました。チンパンジーもボノボ同様単語を理解する能力が備わっていますが、精神的なものに大きな違いがあると思います。争いごとを避け、仲間を思いやる心を潜在している点において、ボノボは本当に人間のようでした。これからのボノボの研究結果に大変興味を持ちました」(女子)

「飼育をすれば人間の言葉や会話を理解できるということに驚きました。また、野生のボノボは、ケンカや疑惑が生じてもすぐに仲直りをする等、思いやりにあふれ平和的な生き物だと思いました。人間も同じように平和的な考えを持っていたら世の中に戦争は起きなかったでしょう。しかしボノボに接することの多い村の人たちは思いやりと笑顔にあふれていて、何だか安心しました。ボノボは柔軟な頭を持っていて、カンジを見てもわかりますが、すぐに人間の影響を受けやすいと思います。これから先、人間の悪い所を見ずに生きてくれたら、と思います。ボノボには純粋で善意の塊のまま生きていってほしいです」(女子)

「ボノボの仲間を思いやる心が映像資料の中で垣間見られ、優しい動物だと思った。言葉や人と人との会話を理解できて、頭の良さに驚いた。平和主義だし、知能も高く、ヒトより断然賢いと感じた」(男子)

戸田コメント ブッシュ、ブレア、小泉・安倍、プーチン、キムジョンイル、アフマディネジャドなどよりボノボのほうが賢いと思う。

「人間の社会で思いやりが欠けている中、ボノボの思いやりの社会は見習うべきではないだろうか。人の言語を理解し、火を恐れることなくライターをも使いこなす映像には驚きだった」(男子)

「他のボノボに対して気配りができる、けんかの仲裁ができる、子供と遊ぶ時に力の加減ができる等、ボノボの思いやりの心には驚かされるばかりでした。豊かな熱帯林の中で培われていった心なのでしょうか。始めはほほえましいと思いましたが、それだけではなく、ボノボから我々が学ぶべきことは多いと思いました」(女子)

戸田コメント 男のけんかを女や子供が仲裁するといった行動が、ゴリラやチンパンジーでも知られている(「弱者による仲裁」)。『暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る』山際寿一(NHKブックス、2007年)第4章を参照。分配行動、仲裁行動や仲直り行動は霊長類学の大きなテーマのひとつである。

「たしか、以前にテレビで今回のビデオの様なボノボの特集を見たことがあると思うのですが、今回改めて見てボノボの性格やルールのあり方などに驚きました。人間社会にも争いを避けるルールや習慣が多くありますが、ボノボのように本能的なものではないので、そのようなルールを守れない人間はボノボよりも劣って見えました。また、野生のボノボたちの社会も、研究室で育ったカンジも、それぞれの場所に適した行動をするようになっているのだなと驚きました」(女子)

戸田コメント ボノボの映像は今回のものの他にも、NHKと民放の映像を研究室や自宅に所蔵。ワンバ村のボノボの様子がテレビの「どうぶつ奇想天外」で紹介されたらしいが、それは見逃した。

「ボノボの存在については知っていましたが、くわしい生態を見たのは初めてだったので、興味深かったです。森には食べ物が豊富にあるということですが、食べ物が多いことと争いが少ないことには関連があるでしょうか」(女子)

戸田コメント 関連はあるでしょう。

「ボノボの知能の高さに驚きました。人と一緒に暮らすことでカンジのようにボノボの性質がはっきり見えてすごかったです。他人への思いやり、気配りが、人間以上にできる動物だと思いました」(女子)

「ボノボの知能の高さに驚いた。この前テレビでチンパンジーのIQが人間のIQを超えることをやっていたが、チンパンジーが話せるようになる日が来るかもしれない」(男子)

戸田コメント チンパンジーのIQが人間を超えることはない。しかし短期記憶の一部などでチンパンジーは人を上回る。チンパンジーもボノボも声帯の構造からいって人のような音声言語は無理である。チンパンジー、ボノボ、ゴリラは手話、身振り言語をある程度習得できる。ネアンデルタール人もかなり身振り言語に頼っていたと推測されている。

「ボノボの知能の高さには驚かされた。ヒト以外の動物が思いやりの心を持っているというのは意外だった」(男子)

「ボノボという動物は初めて知ったのですが、本当に平和な社会を築いているのだなと感心しました。人間の社会はこういう社会とはほど遠いことをまた、痛感させられもしました」(男子)

「原始共産制が理想通りはたらいていると思います。完全に、人と比べても遜色のない社会の形成がみられました。もし世界の人口が少なければ、このような社会は形成できるのでしょうが、現在の状態では無理でしょう。実現は不可能でしょうが、人間社会の目指すべき理想のひとつとして数えても良いのではないかと思います。他人のことを思いやることができない一部の人間に比べて、遙かに人間的だと思いました。」(女子)

「ボノボの言語能力の高さに驚きました。ボノボが食べる物を食べて、食べないものは食べないというのは、非常に賢いやり方だなと思いました」(女子)

戸田コメント ボノボは雑食なのでそれで大丈夫だが、ゴリラはかなり草食に特殊化しているので、ゴリラの食べるものを全部食べると「失敗」もある。『暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る』山際寿一(NHKブックス、2007年)47頁。

「ボノボがどれほど知能の高い動物であるかがわかった。えさをめぐる争いをおこさないということに驚いた。そして、平和に過ごすためにボノボたちの社会の仕組みがあることがわかった。それもボノボが豊かな心を持っているからできることだ」(女子)

「ボノボのようにきちんと自分たちを管理できる動物でないといけない。争いを好む人間もいるので、ボノボのようになるのは本当にむずかしい。」(男子

「ボノボの能力の数々に驚かされっぱなしだった。人間のような感情と頭脳を持っており、親近感が湧いた。人間が対立や争いばかりしているのに、ボノボは争いを避けている。その点は見習うべきだろう」(男子)

「助け合い、分け合って生きるのは、相手のことを信頼して自分の欲望をおさえなければならないと言っていましたが、それができない人間は相手を信頼したり自分の欲望をおさえたり出来ないからだろうと痛感しました」(男子)

「今回の授業のビデオで、初めてボノボという動物を知りました。食べ物を仲間で分け合ったり、仲間をかばったりと、他ではあまり見たことのない光景で、驚きました。二歩足で歩いている姿は本当に人間にそっくりで、人間に一番近い動物だということが、よくわかりました。また、寝方などに流行があったことも非常におもしろかったです」(女子)

「ボノボと呼ばれる類人猿があれほど器用だとは思わなかった。生物の進化の過程を見た気がした」(男子)

「ボノボは人間に最も近い類人猿であり、人間はボノボよりも進化した生物なのに。「思いやり」や「平和の心」など大切な事をどこに置き忘れて戦争などの争いを始めてしまったのかが不思議でした」(男子)

「今日はビデオで類人猿ボノボについて学んだ。やはり人間に最も似ている動物という事で、行動、手先など多くの類似点を発見できた。これから先、もし人間が絶滅したら、ボノボの時代になるのかと思うと、複雑な気がした」(男子)

戸田コメント ボノボは1万人しかいない。

「動物でもまわりの仲間が困っていたら積極的に助けるような行動ができるので、人間ももっとお互いに助けあって生活していくことができてもいいと思います」(男子)

「ボノボの能力の高さというのに驚いた。人間と同じような思いやりを持っていたし、ケンカを極力避けようとするところもスゴイなと思った。またカンジが人間の言葉を理解していたのにも驚いた」(男子)

「ボノボは思いやり、助け合いの社会をちゃんと作っているからすごいと思った。また、人間の言葉もわかるボノボもいて、ボノボは人間に近いものがあるなと親近感を抱いた」(男子)

「動物にも心があるんだなと感じました。ボノボみたいに人間もみんななれば幸せなのにと思いました。でも、ボノボも今の人間みたいに殺し合ったりする日がきたら、『猿の惑星』みたいで恐いです」(女子)

「ボノボが人間の言葉の意味を理解して写真をわたしたのには驚いた。群れの中にルールみたいなのがあって、みんなで協力して生きていて、人間も昔はこんな風だったのかなと思った。まるで人間みたいだった」(女子)

「ボノボのVTRを見ていて、こんなにも群れの中で仲間同士が平和に暮らす野生動物がいるのだなと感心しました。見ていてほほえましいものでした。コミュニケーション能力が他の野生動物より長けているのだと思います。研究所で育てられたカンジが人の会話を理解できるようになったのも納得できます。」(男子)

「ボノボの社会は私にとっては非常に興味深いものでした。老人や子供を優先する思いやりがあったり、男女平等であったり、争いがなかったりと、和平的な社会が築かれており、チンパンジーやヒトとは全く異なっていると思いました。私たちはチンパンジー寄りの社会を形成しているように思いますが、ボノボのような社会を築けていたら、今は全く異なる平和的な社会になっていたのだろうと思いました」(男子)

「久しぶりに見ていてなごむ映像だった気がします(笑)。決まりを作って争いを避けたり、狩猟、採集の民族は取った食べ物分け合ったりしますし、ヒトも同じなのですね。何で人は戦争とか人殺しとか暴力をするのでしょうね。暴力のない生物はいるのに。今回のビデオは癒されました。ボノボすごい」(女子)

「地球で進化した人類が地球の環境を破壊し出したなんておかしなことである。生きる事以外で他の生き物を殺すのは人間だけだと以前聞いていたが。それでも人のように多くの暴力を行う生物は人間だけではないだろうか。映像資料を見て思ったが、本当に人がボノボみたいだったら良かったかもしれない」(男子)

「類人猿の仲間にはチンパンジーやゴリラの他にボノボがいることは知っていた。しかし、こんなにも行動が人間にそっくりだとは思わなくて驚いた。特にカンジがライターで火をつけたり、野生のボノボがサトウキビを両手いっぱいに持って歩く姿はほほ笑ましかった。この調査で人類の進化のナゾが解明されるかもしれないし、動物の大切さを再確認でき、ある意味環境教育になるなと思った」(男子)

「ボノボの知能の高さには驚かされました。人間は自然から学ぶことがたくさんあると感じさせる内容でした。こういった研究を続けていくことで、人間社会の発展につながっていけば良いと思います」(男子)

「ボノボの生態は人間と似ているところが他の類人猿よりも多くて驚きました。人間味があるのでビデオを見るのがおもしろかったです。また、チンパンジーが戦争をすること、ゴリラが子殺しをすること、オランウータンが強姦をすることにとても驚きました。どういう時にそのような行動をとるのかとても興味深いです」(女子)

戸田コメント チンパンジーの「戦争」と子殺し、ゴリラの子殺し、オランウータンの強姦については、『男の凶暴性はどこからきたか』リチャード・ランガム,デイル・ピーターソン、山下篤子訳(三田出版会、1998年)、『暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る』山際寿一(NHKブックス、2007年)を参照。

「ボノボの能力のすごさにはとても感心した。住民がボノボから学んだこともあるほどで、住民とボノボのつながりがあることもすごい。環境破壊でボノボの数が減っているということはないのですか?」(男子)

戸田コメント ボノボの激減(現在1万人)は森林破壊や密猟、内戦が原因だろう。私はボノボの激減に大変苦慮している。それだけが理由ではないが、抗うつ剤と精神安定剤が必要だ。

「猿の進化論はとても驚かされた。ボノボは言葉や会話を理解し、他を思いやり、二足歩行で歩くという人間がすることをするようになっている。まるで人間のようで進化ということに深さを感じた。そして、人間が猿から進化したものだと改めて思った」(男子)

「今日の講義で初めてボノボという動物を知りました。移動するときにはぐれないように見張りの役目がいたり、後ろのボノボの目印となるよう草を倒して歩いたり、争いをなるべく避けるなど、人に劣らないすごい能力をもっていると思いました。このようなボノボが人間にとって進化的にみるとチンパンジーと等距離にいるのは少し不思議な気がしました。映像を見るとボノボのほうがより人間に近いように見えました。人間社会のようにボノボの社会にも寝方などの流行があるというのも興味深いと思いました」(女子)

「人間の言葉をどの程度理解しているのか疑問に思いました。でも、すごい類人猿だと思いました」(女子)

「今回、ボノボに関するビデオを見て、人間の言葉をこんなに理解する事に非常に驚いた。チンパンジーが理解できるとは聞いていたが、ボノボはそれのはるか上だった。また、人間と違って争いを好まないことが印象的だった」(男子)

戸田コメント チンパンジーとボノボの知能の優劣比較は簡単ではない。チンパンジーについては、松沢哲郎(京大)の一連の著書を参照。

「ボノボは昔、人間と暮らしていて、ボノボを殺すことは仲間を殺すのと一緒だということに感動した。また、多様なコミュニケーション力のおかげで、エサをめぐって他のボノボと争うこともないというのはすごいと思った」(男子)

戸田コメント 「人間と一緒に暮らしていた」というのはワンバ村の人々の神話である。

「正直、今回の話はあまり興味がもてなかった。サルよりチベットなどの話がしてほしかった」(男子)

戸田コメント チベットというとたとえば地球温暖化によるヒマラヤ氷河の後退のことだろうか。

「ボノボにおいて争うケースが見られないのは驚いた。他の類人猿では決して見られない光景である。人間もあてはまるだろう。「平等社会」にふさわしい生き方をしていると感じた。それに譲り合いの精神は現代の人々も見習うべきである」(男子)

「今日は類人猿ボノボについてのビデオを見たが、大変興味深いものであった。ボノボの社会では雌と雄にそれぞれボスが存在するという極めて珍しい事実が発覚した。そして、雌がエサ場に優先して行ったり、年老いたボノボに気を配ったりと、大変心優しい社会がある。決してボノボ同士争ったりしないし、少しいざこざがあってもスキンシップですぐ仲直りするので、正直驚いた。また、ボノボは地域の村人とも密接に関係がある。村人は森で生きるすべをボノボから学び、尊敬している。とても良い関係を築いている。近年、殺人や事件が多く起こる人間社会よりも、ボノボの社会の方が平和なのかもしれない」(男子)

「ボノボの生態はとても興味深かった。中でも研究所にいるカンジは人間の言葉を高いレベルまで理解していて驚いた。カンジを見ていると、人間とあまり変わらないなあと思った。ボノボの社会は、力の弱い雌を優先させたり、食べ物を仲間に分け与えたりして、思いやりとか、仲間意識という点からは、人間よりも優れていると感じた。ボノボのこの先の研究に注目したいと思う」(女子)

「ボノボという霊長類を今日初めて知りました。平和主義でケンカをしていても途中で仲直りをしようという行動にでるし、食事を女性に先にとらせたり、仲間がはぐれないように気づかいをしたりと、争いを起こさないようにしようとする心がけの仕方を私たちも学ぶところがあると感じました。また、知能の高さにも驚きました」(女子)

「ボノボのカンジが人間の言葉を理解し、人間が使う道具を同じように使えることにとても感動した。野生のボノボのグループ内では、ルールがあり、それをきちんとみんな守っていた。村の人々が言っていたように、人間がボノボから学ぶことがたくさんあるかもしれない」(男子)

「今まで、自分からこういった内容のものを見ることはなかったが、ボノボの社会を見て、私たちがこれから学び取らなければいけない内容が多くあるように感じた」(男子)

「ボノボの知能の高さに驚いた。言葉を覚えるだけでなく、人の会話までも理解してしまえるなんて、訓練なしですごいと感じた」(女子)

「長崎平和研究講座の折にも類人猿の話は聞かせていただきましたが、今日はそれよりももっと詳しいボノボの話やアメリカにいるボノボのカンジの話が聞け、とても興味深かったです。同じ種同士で殺し合うのはヒトだけではないのだと知りました。しかし、やはり資源を取り合ったり、宗教で争ったり、民族間の争いなど、人間特有の戦争も多いのだと感じました。力の弱い雌を優先するボノボはとても優しい知能の高い類人猿なのだと感心しました。年を取った者も女性も大切にされ、エサの取り合いなどくだらない事はしないボノボの社会は現代の人間社会よりよほど優れているのではと思いました」(女子)

「カンジが人間の言葉や会話を理解していることにとても驚いたし、野生のボノボが雌や弱い者も優先したり、食べ物を分け与えていることに感動しました。知能は人間の方が高いかもしれないが、ボノボから学ぶことがたくさんあると感じました。ボノボのような譲り合いの社会ができたら争いなどなかっただろうから、人間は愚かだと思いました」(女子)

「人間は新しいものがうまれてくるにつれて社会の秩序が乱れてきていると思う。今日見たボノボのような弱いものを優先する姿勢は人間も見習うべきであると思う」(男子)

「何年先になるかはわからないが、ボノボが人間に近くなる可能性があるだろう。それを考えると、その時どのような社会になるのだろうか興味が沸いた」(男子)

戸田コメント 「類人猿が進化して人間に近くなる」可能性は小さい。

「人間以外に言語が理解できたり道具が使えたりする動物がいることにすごく驚いた」(男子)

「ボノボの争いを避けるための挨拶やスキンシップは面白いと思いました。ボノボには人間との共通点がいくつかあって、それが面白かったです。ボノボは生息地が狭いですが、人数も少ないのですか?」

戸田コメント 1万人を割ったのではないかと見られている。

「カンジの方が自分より頭がいいのではないかと思った」(男子)

「ボノボの世界は驚くほど平和的であるとわかった。体の弱い雌を優先させる制度や、人が触れているものをとらないという制度があることはすばらしいと思った。人間よりも先にジェンダー平等の社会を作り出しているところを見ると、人間よりも進化しているのではないかとも思えてくる。女性の3人に1人は性的暴力を受けるというデータがある。何とも恐ろしい世界だ。人間もボノボやヘア・インディアンを見習って、ジェンダー平等の社会をつくり暴力を追放すべきだ」(女子)

「ボノボの暮らしは平和的でうらやましい」(男子)

「まさかここでボノボが出てくるとは思わなかったが、なかなか面白かった。環境人類学でこれと似たような(生態など)ことが取り扱われるので、比較しながら観ることができて勉強になった。しかし社会学なので、暴力について調べてある点は興味がもてた。類人猿もあまり平和的とは言えない行為をしていることに驚くと同時に、暴力が文化であることが何より衝撃的だった」(男子)

「訓練を受けたチンパンジーは人間より記憶力が良いということを初めて知りました。それは科学進歩の大発見でもあるが、チンパンジーの将来の運命はどうなるかと私は心配しています。人間は科学研究のためにチンパンジーを利用することは可能であると思う」(女子)

戸田コメント カンジならチンパンジーではなくボノボだが? 京大のチンパンジーと人の短期記憶の比較実験(前述)のこと? 類人猿に対する実験の倫理的意味をめぐる議論については、パオラ・カヴァリエリ,ピーター・シンガー編(山内友三郎,西田利貞監訳)『大型類人猿の権利宣言』(昭和堂、2001年)を参照。

「こんなに人に近いボノボの群れを見るのが初めてです。人の言葉を理解できるのが驚きでした。ボノボはやがて人になれるでしょうか」(男子)

戸田コメント 「類人猿が進化して人になる」可能性はほぼゼロである。

「この授業で、戦争やテロなど悲しいビデオを見るのは結構多い。初めてそんな心を癒せる映像を見て、楽しかった。ヒトとボノボが友好的に共存して、世の中の紛争や経済利益なども除いて、幸せな生活環境と思う」(女子)

「カンジをはじめ、野生ボノボの生活は人間に非常に近いものです。考えにしても、行動にしても」(女子)

「今回の講義でビデオを通じてボノボの生活習慣がわかりました。ボノボは人間の言葉が理解できることに驚きました。村の人たちはボノボと調和的に生活することを感じました」(女子)

「ボノボはとてもかわいかった。彼らは、毛は黒褐色で、顔には毛がない。森林に住み、小群で移動しながら生活。雑食性で、性質が穏和である。小枝などを簡単な道具として使うこともできる。そして訓練して火も使える。とても驚きました」(男子)


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