ナイジェリアの石油・環境・人権(環境社会学Ⅱでの映像使用例)

戸田清   20071210日 2008年2月7日改訂

 

2007年度後期「環境社会学Ⅱ」での映像使用(200710月〜2008年2月)

1.『劣化ウランの恐怖』市民平和訴訟の会企画、ビデオプレス制作、1998年、35

英語原題は、Metal of Dishonor,米国、Peoples Video Network1997

キーワード:湾岸戦争、劣化ウラン兵器、白血病、帰還兵、イラクの子ども、経済制裁、構造的暴力、国家犯罪

 

2.『戦士の刻印 女性性器切除の真実』アリス・ウォーカー、1996年、57

原題、Warrior Marks1993年、英国  

キーワード:女性性器切除(FGM)、アフリカ諸国の約半数、伝統文化、構造的暴力、少女、通過儀礼、男性支配、イスラム以前の伝統

備考:看護専門学校の社会学では必ず使用、長崎外大社会学で時に使用。全学教育の社会学では使用したことがあるが、環境社会学での使用は初めて。

 

3a.『「911」の真実とは ダイジェスト版DVD』米国2004年、日本語版は人民新聞社2006年、30分。英語原題はConfronting The Evidence

3b.『NBC報道センター 911事件特集』2007年9月14日放映、関口達夫記者担当、戸田清出演、10

キーワード 9・11事件(いわゆる同時多発テロ)、ブッシュ政権の虚偽説明疑惑。

参考文献 

『9・11事件は謀略か 「21世紀の真珠湾攻撃」とブッシュ政権』デヴィッド・レイ・グリフィン きくちゆみ,戸田清訳(緑風出版、2007年)

『9・11事件の省察 偽りの反テロ戦争とつくられる戦争構造』木村朗編(凱風社、2007年)。戸田清ほか。

『「WTC(世界貿易センター)ビル崩壊」の徹底究明 破綻した米国政府の「9・11」公式説』童子丸開(社会評論社2007年)

 

4.『もんじゅ 明かされた真実』ストップ・ザ・もんじゅ事務局(大阪)2004年制作、38分 詩の朗読:吉永小百合、ナレーション:坂本龍一

キーワード:高速増殖炉、1985年提訴、一審で住民敗訴(2000年)、控訴審で住民逆転勝訴(2003年)、上告審で住民逆転敗訴(2005年)、上級審では国に有利、情報隠し、プルトニウム大国、核燃料再処理

参考文献 『高速増殖炉もんじゅ : 巨大核技術の夢と現実』小林圭二(七つ森書館、1994年)

 

5.『ジェネティック・マトリックス 巨大バイオ企業と闘った農民の記録』市民セクター政策機構、37分、2006年、DVD

カナダ制作の英語原題:The Schmeiserstheir lawyers and supporters and the biotech gene giant

キーワード:シュマーザー対モンサント社民事訴訟、カナダ最高裁、知的財産権、遺伝子組み換え作物

 

6.『ニュークス・イン・スペース2 アメリカ・宇宙支配の野望』プルトニウム・アクション・ヒロシマ、2000年、28

英語原題は、Nukes in Space 2:Unacceptable Risks1998

キーワード:宇宙の軍事化、人工衛星のプルトニウム電池、クリントン政権、土星探査衛星カッシーニ  

備考・プルトニウム・アクション・ヒロシマ代表の大庭里美は病死。

日本語字幕付きの英語ナレーションなので、英語学習にも便利である。

 

7.松本英揮氏(欧州格安エコツアー主催者、宮崎市在住)のゲスト講演(1130日)で、同氏持参のDVDビデオ、スライドを使用。

 

8.『奪われた緑のデルタ・ナイジェリア』NHKプライム111996年2月3日、44

(英国カトマ・フィルムズ1995年作品の日本語版)

キーワード:シェル石油、軍事独裁政権、オゴニ民族、ケン・サロウィワの冤罪刑死

キーパースン ケン・サロウィワ(Ken SaroWiwa、作家、環境・人権活動家、19411010日生まれ、19951110日刑死、享年54)、ウォレ・ショインカ(ノーベル賞作家)、ババンギダ将軍(軍事政権)、アバチャ将軍(軍事政権)

 

9.『死を招く債務 IMF・世界銀行とニカラグア』アジア太平洋資料センター、1998年、30分  英語原題は、Deadly Embrace、米国、ニカラグアネットワーク教育基金、1996年  キーワード:累積債務、構造調整プログラム(SAP)、IMF、世界銀行、ニカラグア、乳幼児死亡率の上昇

 

10.『ハルピンからの声』海南友子監督、2004年、21

キーワード:日本軍遺棄毒ガス(化学兵器)、日本軍遺棄砲弾、民事裁判

備考:『にがい涙の大地から』のダイジェスト版。

 

11.『謎の類人猿ボノボ(NHKスペシャル)』NHK1996年1月7日、49

キーワード:ボノボ(旧称ピグミーチンパンジー)、チンパンジーとともにヒトに最も近縁、自然界における人類の地位、暴力と平和における自然と文化

 

12.『ブッシュを裁こうPart2 ブッシュ有罪』アフガニスタン国際戦犯民衆法廷実行委員会制作,2004年,ビデオプレス,マブイ・シネコープ(大阪)発売。VHSビデオ。35

キーワード:民衆法廷、同時多発テロ、アフガニスタン侵攻、誤爆、空爆の思想、戦争犯罪、平和に対する罪(侵略の罪)、人道に対する罪、東京裁判、ニュールンベルク裁判、劣化ウラン弾、クラスター爆弾

 

13.『バイオ燃料 畑でつくるエネルギー』アジア太平洋資料センター、天笠啓祐監修、DVD、2007年、31

キーワード:自動車燃料と食糧の競合、8億人の自動車所有者と20億人の貧困層、バイオエタノール、バイオディーゼル、エネルギー収支、パーム椰子プランテーション

参考文献 『バイオ燃料 畑でつくるエネルギー』天笠啓祐(コモンズ、2007年)

 

 

本稿では、『奪われた緑のデルタ・ナイジェリア』(12月7日使用)の関連資料と受講生の感想を中心に記述する。

 

参考になるウェブサイト

Ken SaroWiwaWikipedia

http://en.wikipedia.org/wiki/Ken_Saro-Wiwa

Remenber  Ken SaroWiwa

http://www.remembersarowiwa.com/

Ken SaroWiwa FoundationCanada

http://www.kensarowiwa.com/

African Postcolonial Literature in EnglishKen SaroWiwa

http://www.usp.nus.edu.sg/post/sarowiwa/sarowiwabio.html

 

参考文献

『ナイジェリアの獄中から : 「処刑」されたオゴニ人作家、最後の手記』ケン・サロ=ウィワ著、福島富士男訳(スリーエーネットワーク、1996年)ケン・サロウィワの遺稿

『世界ブランド企業黒書 : 人と地球を食い物にする多国籍企業』クラウス・ベルナー、ハンス・バイス著、下川真一訳(明石書店、2005年)原著2003

「シェル石油」の項目(350頁)にケン・サロウィワの冤罪刑死についての記述あり。「ほぼ100に上る国で行われた市場調査によると、あらゆる石油会社の中で最も人気があるのがシェルだった。しかしこうしたシェルのイメージは、1995年に大きなダメージを受けた。環境団体のグリーンピースが大々的なキャンペーンを張り、北海の石油プラットフォーム「ブレント・スパー」を丸ごと海に沈めることによって発生する可能性のある大規模な環境破壊を食い止めたのである。そしてその後も数百万人のドライバーが、黄色い貝殻マークが描かれたガソリンスタンドを避けるようになった。この同じ年、シェルが石油生産を独占しているナイジェリアでは(戸田注 これは誤記では? 後述のようにナイジェリアの石油生産はシェルとシェブロン等である)、サニ・アバチャの軍事政府が、人権活動家ケン・サロウィワを始めとするオゴニ人の9名を処刑した。オゴニ人は長年にわたって。シェルやその他の石油コンツェルン、例えばエルフ、アジップ、モービル、シェブロンなどが南ナイジェリアのニジェールデルタで引き起こしている重大な環境汚染に対して抗議運動を行っていた。そのため、サロウィワの家族や国際人権団体は、上記の処刑の共犯者としてシェルを非難したのである。同コンツェルンは従来から、国民に対する残虐行為を日常的に行っている軍事政府に対して武器を提供したと言われていたが、2001年1月になるとシェルは、自社の施設を防衛するための武器を地方の警察に渡していたことを告白した。最近のシェルは、数百万ドルの広告費を使い、環境保護および人権分野の先覚者として振る舞うようになっている。しかしナイジェリアの状況そのものはほとんど変わっていない。老朽化したシェルのパイプラインからの石油漏れ、そして技術的に時代後れとなっている天然ガスの焼却処分によって、広大な農地が数十年先まで不毛の地となり、かつて魚に恵まれていた河川や空気が大規模に汚染されると共に、この地の住民から生活基盤と健康が奪われている。こうした汚染と引き換えにシェルが現地で行っている職場の確保や投資や社会的支援は、皮肉としか言いようがないほど僅かな程度に留まっている。この多国籍コンツェルンは、1億2000万の人口を持つナイジェリアの年間国家予算とほぼ同額の売上げを誇っているが、同国の国民に対する補償を依然として拒否し続けている。」

著者らはドイツのジャーナリスト。世界の有名大企業の不祥事を企業別に解説した本。日本からも三菱商事(326頁)が入っている。

『アメリカにいる、きみ』チママンダ・アディーチェ、くぼたのぞみ訳(河出書房新社、2007年)12月9日朝日新聞書評欄参照。

短編小説集であるが、1977年生まれ、イボ民族出身、現在イェール大学大学院でアフリカ学専攻の女性が、ビアフラ戦争や軍事政権の横暴に作品で言及。チママンダが渡米した1996年(ケン・サロウィワ刑死の翌年)にはナイジェリアの出版界は壊滅状況であったが、最近ではチママンダの作品がナイジェリアでも出版されていることから、ナイジェリアの民主化が、軍事政権の犯罪の未解明・謝罪や補償の未進展、政権の汚職腐敗などの問題をかかえつつも、それなりに進展していることがわかる。独裁政権のもとでは、ナチスドイツなどに典型的に見られるように、政府に都合のよいものを除いて芸術は抑圧されることが多い。チママンダのウェブサイトは

http://www.l3.ulg.ac.be/adichie/

『神話・文学・アフリカ世界』ウォレ・ショインカ、松田忠徳訳、(彩流社、1992年)。

長崎県立図書館所蔵。ショインカ(Wole Soyinka1934〜 )はナイジェリアのノーベル賞作家(1986年受賞)。アフリカ出身のノーベル賞作家は他に1988年のナギーフ・マハフーズ(エジプト)、1991年のナディン・ゴーディマ(南アフリカ)、2003年のジョン・クッツェー(南アフリカ)がいる。マハフーズはアラブ人、南アフリカの2人は欧州系白人である。ゴーディマとクッツェーはアパルトヘイト体制と対峙した人権派知識人。黒人のノーベル賞作家はショインカと1993年のトニ・モリスン(米国)、1992年のデレク・ウォルコット(トリニダード・トバゴ)。

『崩れゆく絆 : アフリカの悲劇的叙事詩』チヌア・アチェベ、古川博巳訳(門土社、1977年)

Chinua Achebeはナイジェリアの作家で「アフリカ文学の父」とも呼ばれる。

『現代アフリカの文学』ナディン・ゴーディマ、土屋哲訳(岩波新書、1975年)

「英語圏アフリカ諸国の中では、アフリカ文学の創造という点で、ナイジェリアの右に出る国はない」(39頁)

巻末の人名録(土屋作成)から日本でも著名な人を拾うと、チヌア・アチェベ(ナイジェリア、イボ民族)、ヤンボ・ウォロゲム(マリ、『暴力の義務』で女性性器切除をどちらかというと肯定的に描いた)、センベーヌ・ウスマン(セネガル、女性性器切除との闘いを描いた名作映画『母たちの村』(2004年)の監督でもある)、マジシ・クネーネ(南アフリカ、ズールー民族)、レオポルド・サンゴール(セネガル)、ウォレ・ショインカ(ナイジェリア、ヨルバ民族)、エメ・セゼール(マルチニック)などがいる。

『こちらナイジェリア・日本大使館医務室です』室塚あや子(悠飛社2003年)

『ナイジェリア : 第四共和制の行くえ』望月克哉編(日本貿易振興会アジア経済研究所、2000年)

いずれも未見であるが、日本人の目で民主化過程のナイジェリアを描く。

『ナイジェリアそして』海東翔(風塵社、1997年)

これも未見であるが、日本人の目で軍事政権末期のナイジェリアを描く。

『今日のナイジェリア』(ナイジェリア連邦共和国大使館、1976年)

未見であるが、東京の大使館による出版物。この時点でも軍事政権。

『ナイジェリア : ビアフラ問題を理解するために』細見真也(時事通信社、1971年)

これも未見であるが、ビアフラ戦争直後のナイジェリアを描く。ビアフラ戦争において旧宗主国イギリスがナイジェリア政府軍を軍事援助したことは、チママンダの小説でも言及されている。

国会図書館蔵書目録で「ナイジェリア」を検索すると、191件であり、その大半はODA(政府開発援助)関係の報告文書である。その中にケン・サロウィワの邦訳は出てくるのに、ショインカ、アチェベが出てこないのは、国会図書館の目録づくりの欠陥であろう。また、ウィキペディア日本語版の「ナイジェリア」を見ると、「ナイジェリア出身有名人」としてスポーツ選手は出てくるのに、サロウィワ、ショインカ、アチェベが無視されており、芸術や人権が軽視されていて、日本人のアフリカ認識の限界を示している。

欧州帝国主義がアフリカ諸国に及ぼしたインパクトについては、ガイアナ出身の経済学者ロドネーが必読である。

『世界資本主義とアフリカ ヨーロッパはいかにアフリカを低開発化したか』ウォルター・ロドネー、北沢正雄訳(柘植書房、1978年)

旧宗主国の利権がアフリカに及ぼす悪影響については次の文献がある。

『フランサフリック アフリカを食いものにするフランス』フランソワ=グザヴィエ・ヴェルシャヴ、大野英士・高橋武智訳(緑風出版、2003年)

日本のアフリカ研究者による一般向けの本としてたとえば下記がある。

『新書アフリカ史』宮本正興・松田素二編(講談社現代新書、1997年)

『アフリカは本当に貧しいのか 西アフリカで考えたこと』勝俣誠(朝日新聞社、1993年)

 

★学生の感想・質問

 

    先進国の石油文明との関連

 

「ナイジェリア政府やシェル石油会社はひどいなと単純に感じてしまうが、石油の恩恵にどっぷり浸っている私たち日本人にこれらの人権を無視した行為を責める資格はあるのだろうか。」(男子)

95年の時点でこのような石油開発に関わる虐殺が行われていたなど、初めて知りました。しかし石油を大量に消費している私たち先進国の人間がナイジェリアの政府や軍に対して何か言う資格もないと思いました。しかし必ず知っていなければならない事であり、石油の大切さを感じました。「世界がもし100人の村だったら」という番組で以前カカオをチョコレートになることも知らずに朝から夜まで木に登り採っている男の子がいて「この子たちの犠牲の上に私たちの生活は成り立っているんだ」と思ったのですが、今回のビデオも同じ思いを引き起こさせました。」(女子)

「油田地帯で今回のような出来事が起こっていたとは知りませんでした。政権としては油田による金を期待していたのでしょう。オゴニの人たちは従来の生活を。ナイジェリア政権のやり方はむごかったが、自分たちがその石油の恩恵を受けていることで、何ともいえない気持ちになった」(男子)

「私たちが石油を使う裏側ではたくさんの人々を苦しめ、殺しているのだと知りました。シェル石油があれだけ村を破壊し、人々の生活をむちゃくちゃにしているのに償いをしていないのはひどいと思います。しかし、権力を持つものがひどいことをしても被害者側に謝罪や賠償金が支払われないということは、今でもよくあることであり、そのように「よくあることだ」といえる社会はまちがっていると思いました。きっとビデオの前半に登場した左腕を失った女性や抗議運動をして撃ち殺された男性を撃った兵士は作業を邪魔した向こうが悪いとか理由をつけて無罪になったのだろうと思いました。ナイジェリアはケン・サロウィワさんを処刑したことでアメリカや世界の国々から抗議を受けていましたが、国連などから具体的に何か処罰があったのでしょうか? ビデオでは抗議があったとしか書かれておらず気になりました。」(女子)

「オゴニランドでこのような政府の横暴が行われているとは知らなかった。現在私たちがたくさんの石油を使っているが、背景にこのようなひどい事件があっているとは知らなかった。また、石油の農作物における影響も非常に恐ろしいものであった。」(男子)

「ナイジェリアという国のイメージはサッカーと、ギニア湾に面し、石油が出る他のアフリカ地域に比べたら豊かな国というものだった。しかし、その石油が元で、このような出来事が起こっているということが信じられない。そうやって掘り出された石油を使っている私たちも共犯者と言われても仕方ないだろう。」(男子)

「オゴニランドの石油の現状については非常に驚いた。政府の横暴もありえないだろう。私たちはもっと石油を大事にしないといけないと思った」(男子)

「石油はCOが〜とか言うより、こういう事実を見せた方がよっぽど省エネにつながると思います」(男子)

「石油を巡る地域住民と政府の対立構図を見たが、石油などの資源が金になるために殺される人々がいて、その恩恵を受けている先進国の人々がその事実をあまり知らないという矛盾を悲しく思う」(男子)

「シェルや石油会社におどらされている軍部もあわれといえばあわれだ。結局、一番後ろにいるのはアメリカなど大国の利権がからんでいるのだなと思った」(男子)

「石油会社の横暴によってオゴニの罪のない人々が家を焼かれ財産も奪われてしまった。軍部は自国の人々ではなく、石油会社のために動いていた。石油を大量に輸入する日本人として考えなければならないと思った」(男子)

「石油のためにナイジェリア政府が少数民族に対して行っている非人道的な行為は決して許されるものではないが、忘れてはいけないのはその石油を大量消費しているのは私たち日本をはじめとする先進国の人間だということだ」(男子)

「ナイジェリアでこんなに悲惨な事が起こっていたことを初めて知った。シェル・インターナショナルというイギリスの石油会社が、ナイジェリアのオゴニ族の土地にパイプラインを強引に引いたために畑に作物が育たなくなり、それに反対したサロウィワや村人たちの闘いの記録であった。政府の陰謀によって、反対していたオゴニ族の村が襲撃され、家を燃やされ、たくさんの人々が虐殺され、リーダーであったサロウィワも無実の罪を着せられて殺されてしまった。許せないと思う。ただ、その石油の恩恵を受けている自分のことを考えると、複雑な気持ちになった。」(男子)

「石油を得るために、これほどの犠牲が出ていることに驚きました。私たちが暮らすために、どれほどの人たちの犠牲の上に成り立っているのかと思うとゾッとします。ビデオを見て石油がなくなってしまえばいいのにと思いましたが、日々の生活の中でこれほど石油にたよっているので、石油がなくては困るという現実にむなしくなりました。石油の埋蔵量も底が見えてきているので、石油に代わるエネルギー源が必要だと思いました」(女子)

「今日見た映像を多くの人に見てもらう必要があると感じた」(男子)

「原油のパイプラインから石油がもれて土壌を汚染している映像が印象的でした。[深さ]5mにもわたって汚染された土壌は数千年作物が育たないというコメントも心に残りました。私たちも石油にたよって生活しているので、まったく関係のない話ではないので、複雑な気持ちになりました」(女子)

「ナイジェリアの国民は我々石油を使っている者のせいで苦しんでいる。石油がなかったらどんなに安心してすごせていったのだろうか。軍政はやはり危険である。各国はナイジェリアから石油を買わないよう制裁を加えていくべきで、国民を救済すべきである」(男子)

 

●先進国の資源浪費 先進国の病理(資源を浪費する、利権のためには軍事力も行使する、利権のためには海外の民主政権を打倒したり、海外の独裁政権とも手を結ぶ、国内政治も金持ち優先で貧富の格差が大きくなるし、金持ちあるいは金持ちの友人でないと大統領になれない、その企業が「先進国では許されない」ような人権侵害や環境破壊を発展途上国では行う、人権問題その他の様々なダブル・スタンダード――親米国家の人権侵害を黙認するが、反米国家の人権侵害を非難するとか――など)の「理念型」となるのが、世界システムの覇権国である米国である。世界人口の5%(66億人のなかの3億人)でありながら、世界でのシェアは、広告費65%、戦略核兵器53%、違法麻薬の消費50%、軍事費46%、銃保有数33%、紙消費29%、GDP28%、自動車保有台数27%、石油消費25%、電力消費25%、牛肉消費24%、原子力発電所の数24%、炭酸ガス排出23%、喫煙関連疾患9%になる。日本の人口は世界の2%であるが、これらの項目の多くで日本のシェアは世界の6〜12%程度である(広告費の12%、自動車台数の8%、電力消費の7%、原発の12%など)。欧州や日本も米国との共通点が少なくない。米国ほどのクルマ社会ではない、米国ほどの銃社会ではない、米国ほどには軍事依存でない(しばしば米国の戦争を支援するが)などの違いがあるにすぎない。また、「1国1票」の国連総会に対して「1ドル1票」と言われる世界銀行は先進国(欧米と日本)の意向が強く働く。

●日本もナイジェリアから原油を輸入している(後述)。ただし輸入量は多くないので日本の責任は欧米の責任より相対的に大きい。他方、インドネシアの化石燃料をめぐる人権侵害では、日本の責任が欧米よりずっと大きい。すなわち、アチェ州の天然ガス、石油輸入とスハルト政権・軍の問題であり、民主化(スハルト政権崩壊)後も完全に解決したとはいえない。『アチェの声 : 戦争・日常・津波』佐伯奈津子(コモンズ、2005年)を参照。

●そういえば、いま話題の石油ピーク学説(世界の石油生産がまもなくあるいはすでにピークを迎え、減少に移る)の提唱者も米国シェル石油の地球物理学者キング・ハバートであった。ハバートは1956年に米国の石油ピークが1970年代に来ると予測して嘲笑されたがその通りになった。20世紀初頭は米国が世界最大の産油国であったが、米国の石油海外依存度は1970年代以降上昇を続けている。世界の石油ピークは今世紀初頭と予測する人も多い。石井吉徳東大名誉教授の講演を参照。

http://www.bund.org/opinion/20060115-1.htm

『石油ピークが来た 崩壊を回避する「日本のプランB」』石井吉徳(日刊工業新聞社、2007年)

●石油文明のエネルギー浪費構造をそのままにして石油に代わるような代替エネルギーはない。ポスト石油文明には、浪費の克服が不可欠である。

 

    ナイジェリアの政府

 

「私たちの住む日本では民族の違いがほぼなく、民族間紛争が身近なものでない。アフリカでは無差別に軍事抑圧が行われていて、環境問題を解決していこうとする上では、そのような政治状況も改善していく必要があるように感じた。」(男子)

「ナイジェリアの軍事勢力による独裁政権はあまりにもひどすぎると思います。シェルという大企業が国の財政をにぎっているとしても、国民の生活をおびやかすようなことをしていいのでしょうか? ケン・サロウィワさんが不当に処罰されたことも納得いきません。」(女子)

「軍事独裁政権ときくと戦争時とか数十年前のことのように思ってしまうが、そうではないのだと思った。こうやって見ると、日本はまだ平和?なのかなと思いました」(女子)

「政府が石油のために軍を使って人を殺しているとは信じられない映像だった。石油によって汚れた土壌が元に戻るにはどのくらい時間がかかるのですか?」(男子)

「シコ・メンデスに関しては何かの授業で耳にしたのですが、ケン・サロウィワという人物は初めて知りました。8090年代という結構最近に国による弾圧?という行為があったことにショックを受けました」(女子)

「ナイジェリアの軍の傍若無人な振る舞いに憤りを感じた。環境破壊、人権弾圧は許せないと思った」(男子)

「石油のパイプラインが原因となる農地の消滅、住民の健康被害が発生した時点でも大きな問題であったのに、軍部によるオゴニランド襲撃やケン・サロウィワら8名が処刑されるまでに発展してしまうとは、とても信じ難い問題だ。自分たちの家、村、畑、命を失ったオゴニの人々の悲痛な姿は忘れられない」(女子)

「ケン・サロウィワさんとオゴニ族のことを今日初めて知りました。ナイジェリアの人々の不屈の精神に少しだけ希望を感じました。普段は忘れがちですが、民主主義というのは少なく、軍が大きな力を持つ国家は多くあるのだと思いました。世界にはどのくらいの軍事国家があるのでしょうか」(女子)

「今回もすごい内容でした。軍部の人々は、オゴニ族のことを〝連中〟と呼んでおり、一人一人の人間として取り合っていませんでした。こんな大量殺人が許されている事がおそろしいです。一番最後に、ナイジェリア政府に対して各国からの非難が集中したとありますが、いろんな国が彼らのために動いてほしいです。政府の取り組みを変えない限り、オゴニ族や多くの人々の生活は安定しません。当たり前のように人を殺す行為、彼らの考えている正義とは何なのでしょうか。自分たちの目的を達成するためなら、邪魔なものは全て排除する。映像を見ていて、とてもおそろしかったです。」(女子)

「世の中では本当に色々なことが起きていると実感しました。特に、軍事政権の不安定さをまざまざと見せつけられました。戦争がなくならなければ、本当の意味での環境問題は解決しません。ということは、軍事政権が存在する限りこの問題は永遠に終わらないのでしょうか。ただ、民主主義国家が環境問題を解決するとは言い切れませんが」(男子)

「石油会社の石油採掘の為に長い間健康面でも生活面でも被害をうけたオゴニ族の人々が石油会社に抗議を行っただけで、オゴニ族の人々は軍によって虐殺された。オゴニ族の人々の命よりも国の産業を支える石油を大切にする軍事政権は許せないと思った。ケン・サロウィワさんはすごいと思う」(女子)

「一方的な虐殺の様子などを見ると、ほんとにむごいものだと思います。欲望というものを抑える術を知らないからあのようなことがおこるのだと思います。人の争いがなくなるのはいつになるのでしょう?」(男子)

「ナイジェリア政府や軍の行動はひどいと思った。オゴニ族の人々の悲惨な映像が目に焼き付いて離れない。90年代に、こんな出来事が起こっていたなんて知らなかった。子供たちがすごく悲しい顔をしていた。ケン・サロウィワが死刑にされ、他の国から非難をあびたことによって、ナイジェリア政府は何か変わったのだろうか。その子供たちは今、どのように暮らしているのか、気になった」(女子)

「人の命(人権)と石油と一体どちらが大切なのか。石油は何の為に使われるべきなのか。驚くことが多かった」(男子)

「戸田先生は、ナイジェリアは一応民主化されたとおっしゃいましたが、いまだに軍の暴挙は行われているのですか」(男子)

「オゴニの土地の例のような理不尽な事件が、ほとんどの国で人権が確立された現代に起こっていることに非常に驚きました。他にもこのような事例があるのか、そしてナイジェリアの人権制度はどのようになっているのか、気になりました。」(女子)

「ビデオで見たことは、そんな大昔に起こった出来事ではないのに、私はその民族のことさえ知らなかったので、もっと広く社会を見て、知るべきだなと思いました」(女子)

「石油を掘るために少数民族を追い込む政府には非常に怒りを覚えた。見ていて心が痛んだ」(男子)

「ナイジェリアのオゴニランドでこんな悲しいことが起きていたということを今日のビデオを見て初めて知った。治安維持という名目で送られた軍は、実際には石油を確保するために、運転再開を求めオゴニを理不尽に弾圧していた。同じ人間に対してあんなひどいことが出来る意味がわからない」(男子)

「今日のビデオは非常に痛々しくむごいものだった。ナイジェリアのオゴニランドには、本当に正義など存在しない。なぜオゴニの罪もない人々が殺されなければいけないのか、なぜ家や財産、大切な家族を失わなければならないのか、そしてなぜケン・サロウィワが犯罪者として殺されたのか、憤りを感じずにはいられない。オゴニに派遣された軍部ははじめから治安維持など目的ではなく、石油会社の運転のためだけに、オゴニを弾圧した。理不尽で許せない」(男子)

「石油ビジネスのために、政府まで一緒になってオゴニの村や町が壊滅状態にされていた。オゴニ族の人々は何もしていないのに、この仕打ちはとてもひどいと思うし、こんなことをしている政府が許せない。そんなにお金が大切なのだろうか? 人の命がこんなにも軽々しく扱われていることが信じられない。ナイジェリア政府を本当にどうにかしてほしいと感じた。人間じゃないと思う」(男子)

「事件の裏には国家の思惑があった」というのがビデオの中にあって驚いた。ちゃんとした事実を知る権利が国民にはあるのに、それを取り上げ、更に欺こうとしたことが信じられませんでした。また環境破壊を止めようと、歌い踊る人たちが持っている木を上にあげているのを見てこの様な緑がまたこの地に戻るように願っている人々の気持ちが伝わってきました。またその緑がきれいだったので私もそうなって欲しいと思いました」(女子)

「自分の利益のために人を殺すことがどんなにみにくいものかはすごく感じました」(男子)

「畑の中に勝手にパイプラインを引かれたり、もれた石油が放置されているという状況だけでもひどいと思うのに、オゴニ族生存運動の弾圧はもっとひどくて驚きました。家を破壊し、人々を傷つけ殺す。これがナイジェリア政府や軍部から行われていたというのはおそろしいことだと思いました」(女子)

「石油のためにオゴニの土地を奪い、村人を殺すことに関して、国家は権力を第一に考え、国民の人権、命などそのためなら仕方ないというように考えられていた。これは絶対に許してはならない「テロ」であると感じた」(男子)

「民族の環境運動を政府が恐れているのなら、なぜ政府は中途半端に村を焼いたりするのですか? 全滅させれば運動はなくなるのに中途半端にやれば運動が激しくなるだけだと思います」(男子)

「ケン・サロウィワに対し、軍がパスポートを取り上げて国際会議に出席させないようにしたり、何の理由もなく捕らえたりしたのが、それほど前のことではないのだということにショックを受けました。またオゴニの村への襲撃は敵対する民族によるものだと軍が嘘をつき、実際は軍部がこの襲撃を計画して家々を焼き、人々を殺していたなんて、人として最低なことばかりしていると思いました」(女子)

「とりあえず腹は立つが、もう腹を立てても仕方ないことなのかもしれないと思った。第三者だから考えることなのだが、それならば頭使って何がしかの働きをするならしなければならない。しないなら正確にその事実を知らねばならない」(男子)

「ナイジェリアの軍隊はそんなに残虐な人殺しがせったい許せないと思います」(男子)

「ナイジェリアでは石油のために当地で生活している人々の人権を無視し、虐殺などの方法を使って、現住民を追い出そうとしている。ナイジェリア政府は殺人を殺人として認知しようとしない」(男子)

「先住民の生存環境は資本主義国家に一歩ずつ破壊されている。先住民も人間として人権をあげるのは当たり前のことと思う」(女子)

「今回の講義でビデオを通じてオゴニ族の人々の苦しい生活がわかりました。ナイジェリアの政府は石油のため、人の命を奪ったその事件を通じて、人間の命はほんとに弱いと感じます。地球の環境を守るため、人々の命を尊重するため、和平を守るべきだと思います」(女子)

「ナイジェリア政府は環境運動家8人に死刑を宣告して、とても非人道的だと思う」(男子)

「今日の授業で観たビデオはあたかも政府の陰謀であるかのように報じていた。陰謀というのはあまりにも不確実な気がして、確たる証拠がなかったら陰謀だと決めつけるのは、いかがなものかと思う。人権を無視したことは重大な犯罪ではあるが、それをすぐに陰謀であるというのは、おかしいのではないだろうか。9・11事件やダイアナさんの事故死などに関しても陰謀説があるが、どうもうさんくさく感じてしまう。もし陰謀であるなら、確たる証拠が必要ではないか」(女子)

「石油をとるためにその土地の人々の生活がおびやかされているのは、なんともいえません。本末転倒だと思うし、それこそ物の奴隷になってしまっていると思います」(女子)

「映像は10年以上前のものだが、いまだにナイジェリアの軍事政権は変わっていないだろうと思う。アフリカ大陸でナイジェリアをはじめ、軍事政権の国がほとんどであり、進化するのにかなり時間がかかると思う」(男子)

「ナイジェリア政府はすごくこわい。日本に生まれて幸せ者だと思った。思考も自由に考える事ができる。ナイジェリアではそれどころじゃないのがおそろしいなと思った。記者に会見していたが、新聞メディアはナイジェリア政府の事をどのように書くか気になった」(女子)

「今日のビデオではナイジェリアの少数民族の生活している地域を軍隊が攻撃して追い出していたりすることを知り、日本は安全でよかったと思いました」(男子)

「武器も何ももっていない弱い立場にある住民たちを射撃したり、家を破壊したりすることがあまりにもひどすぎると思う。何も悪くない人を逮捕し、暴力をふるってやりたい放題にする軍人たちが世界にはまだ多く存在しているのかと思うと恐ろしくなる。戦争や紛争など人と人との戦いがなくならないのはどうしてなのだろう。今日本は平和だけれど、いつか他国に侵略されたり、今日のビデオのような残虐なことが起こったとき、日本の政府や自衛隊は国民を守ってくれるのか不安に思う。早く世界からこのようなことがなくなってほしい」(女子)

「軍事独裁政権のように国民に主権がない国の国民に対する行為を恐ろしく思った。その土地の住民には何の利益も出ないものに苦しむ生活があることを我々はもっと知らなくてはならない。」(女子)

「今日は政府が自らの利益のために人を殺しているという話を聞いて、ひどく悲しいことであると思った。石油の開発により人は幸せにならなければならないのに、逆に不幸になっては意味がない」(男子)

 

●軍事政権 アフリカの軍事政権ではザイール(コンゴ)のモブツ将軍が有名であろう。旧宗主国ベルギーなどの支援もあってパトリス・ルムンバの民主政権を倒して権力を握った。スハルトと並ぶ長い軍事政権であった。ラテンアメリカの軍事政権ではチリのピノチェト将軍が有名である。米国の援助もあってアジェンデ民主政権を倒して権力を握った。アジアではインドネシアのスハルトが有名である。米国の援助もあってスカルノ民主政権を倒して権力を握った。フィリピンのマルコスや韓国のパク・チョンヒは、スハルトとともに日本企業との癒着が有名だった。アルゼンチン、ブラジルなどにも軍事政権があった。欧州の軍事独裁政権ではスペインのフランコ将軍が典型。フランコは政治的知恵があり、スペイン内戦ではナチスドイツの軍事援助を受けたのに、第二次大戦ではドイツの敗北を見越して中立を守り、戦後も長く政権を維持した(1975年死去、享年83)。フランコの犠牲になった市民は20万人に及ぶという(20071216日NHKニュース)。その後のスペインの民主化は「十分」か? アスナール前首相(保守)は民意を無視してブッシュのイラク戦争に派兵。サパテーロ首相(左派)は民意を尊重してイラク撤兵を決めた。2007年現在もっとも代表的な軍事政権はもちろんミャンマー(ビルマ)である。なお、「先軍政治」の北朝鮮は、いわゆる軍事政権ではない(キム・ジョンイルは職業軍人出身ではない)。日本は東条政権時代に軍事政権であった。ナイジェリアの軍事政権時代末期は、今回の受講生のみなさんの小学生時代にあたる。

 

●ナイジェリアの歴史と近況については、ウィキペディア日本語版の下記の記述はとりあえず参考になる。

 

17世紀 - 19世紀を通じて、ヨーロッパの貿易商人たちが、アメリカ大陸へ送る奴隷の増加に伴い海岸に多くの港を建設し、彼らはナイジェリアの海岸部を「奴隷海岸」と呼んだ。19世紀にはイギリス軍が奴隷売買を禁止し、商品貿易に取ってかわられた。1886年にイギリス政府はジョージ・トーブマン・ゴールディー卿らによる貿易会社を「王立ニジェール会社」とし諸特権を与え、ナイジェリア一帯の支配を開始した。19世紀末にベニン王国は周囲のハウサ、ヨルバの王国もろともイギリスに滅ぼされて、ナイジェリアは植民地化された。1903年にはフラニ帝国も滅亡し、イギリスとフランスに分割された。1901年ニジェール会社は北ナイジェリアと南ナイジェリアの二つの保護領に再編成され、1914年一つの保護領に統合された。

留学生たちを中心に第二次世界大戦前から独立への動きはあったが、第2次大戦後民族主義運動が高まり、1960年、それぞれが広範な自治権を有する3地域の連邦制国家として、完全独立を果たす。このときは、イギリス女王を国家元首として戴く君主国(イギリス連邦加盟国)であったが、1963年に連邦共和国憲法を制定し、大統領制に移行した。それと同時に、1地域を2分割し、全4地域になる。

1966年、軍部によるクーデターが勃発、ゴウォン軍事政権樹立。連邦政府への中央集権化を図るため、地方を12州に再編。1967年、東部地域の有力民族であるイボ族がビアフラ共和国を建国し独立を宣言したことを受け内戦(ビアフラ戦争)になるが、1970年、イボ族の敗北で終結。

1975年、軍の民政移行派(現大統領オルシェグン・オバサンジョ、ムハメド将軍らを含む)によるクーデターが成功し、1976年ムハメド将軍は暗殺され、1977年、オバサンジョは最高軍事評議会議長に就任、新憲法を制定、1979年、大統領選挙でシェフ・シャガリが当選し、文民大統領が誕生した。しかし、多くの国民は民政化後かえって汚職や経済が悪化したと感じた。1983年の次回選挙でオバフェミ・アウォロウォが勝ったにもかかわらず、ムハンマド・ブハリ将軍ら軍政派によるクーデターで再び軍政に戻る。彼は経済再生を約束したが、強圧的な体制を敷きかえって経済は悪化した。1985年再度クーデターが起きイブラヒム・ババンギダ将軍が実権を掌握。彼は最初人権を重視すると約束したが次第に圧制に移行した。また為替自由化などの経済改革はナイジェリアの通貨暴落を招き、何度もクーデター未遂を引き起こした。1990年の新憲法で1992年の大統領選挙が約束され、疑問視されつつも実現したが、ババンギダは不正があったと主張しやり直させた。19936月の再選挙で実業家モシュード・アビオラが勝利しまたもババンギダは不正を主張したが、8月引退し一旦文民出身の側近に政権を任せた後、その3か月後の199311月、1980年代の2回のクーデターにもかかわったとみられるサニ・アバチャ将軍が実権を掌握した。

サニ・アバチャは1998年の民政移管を約束したが、その一方で政党や集会、出版を弾圧し、多くの政治家や民主運動家や政敵を牢獄に送り、ナイジェリアに圧政を敷き新憲法制定を延ばし続けた。彼はアフリカ随一の地域大国らしく振舞うべく、リベリアの長い内戦を終わらせ民政移管するプロセスに助力し、軍によるクーデターが起こった際はただちにリベリアに軍を派遣し文民政権を守った。これによってアバチャにナイジェリアの民政移管を期待したものもいたが、1998年やっと約束どおり告示された大統領選挙では候補者はアバチャ一人だけであった。しかし選挙直前にアバチャは心臓麻痺で死去した。後を継いだアブドゥルサラミ・アブバカールの政権のもと、1999年に新憲法が制定され、民政へ移行。かつてのクーデター軍人オルシェグン・オバサンジョが、初の民主的選挙で、大統領に当選した。2003年の選挙でも再選した。しかし彼は民主派の希望でもあった司法長官ボラ・イゲが2001年に暗殺された件にかかわったといわれるほか、ナイジェリアの汚職と腐敗が彼の時代になって最悪になったといわれ、国民の感情は好悪半ばしている。オバサンジョは腐敗政治家を次々逮捕しているが依然政府の腐敗は深刻で、多くの頭脳流出を招いている。2006年、オバサンジョ大統領の3選を可能にする憲法改正が否決され、20072月、アブバカル副大統領が大統領選挙の候補者名から除外され、4月、アブバカルの立候補を最高裁が容認した。2007423日、選挙管理委員会は大統領選挙で、国民民主党のウマル・ヤラドゥアが当選したと発表したが、国際選挙監視団は不正投票があったとして有効性を疑問視している。2007814日、ナイジェリアの中央銀行は2008年の8月から100ナイラを1ナイラとするデノミを実施する事を発表した。」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%82%A2

 

今回使用した1995年の英国の映像(日本語版NHK)のなかでは、オゴニ族を抑圧した軍事独裁者として、ババンギダとアバチャの名が出てくる。

 

●外務省のウェブサイトの「ナイジェリア連邦共和国」によると、ナイジェリアは

 

「<アフリカ随一の大国>.

面積:923,773平方キロメートル(日本の約2.5倍)

人口:1億4,000万人(2007年、ナイジェリア政府公表国勢調査暫定結果)(サブ・サハラ・アフリカ全体の約20%と推定)

首都:ブジャ(199112月ラゴスより遷都)

主要民族:ハウサ人、ヨルバ人、イボ人等(民族数は250以上と推定)

言語:英語(公用語)、各民族語

宗教:イスラム教-北部中心、キリスト教-南東部中心、伝統宗教-全域

略史:

196010 独立

196310 共和制移行

19661993 軍事クーデター(7回)、ビアフラ内戦(19671970年)、第二共和政(19791983年)

199311 アバチャ軍事政権成立

19986 アバチャ元首急死、アブバカール軍事政権成立

19995 オバサンジョ大統領就任

20035 オバサンジョ大統領再任

20075 ヤラドゥア大統領就任

[日本との]経済関係:

1)対日貿易(2006年)(JETRO資料)

(イ)貿易額

日本の輸出 56,400万ドル

日本の輸入 81,100万ドル

(ロ)主要品目

日本の輸出 鉄鋼、乗用車等

日本の輸入 原油、液化天然ガス等

2)我が国からの進出企業(200610月現在)

 16社 (商社、製造、プラント等)」

とのことである。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nigeria/data.html

 

 同サイトには、日本外務省の視点から見たナイジェリアの「民主化の進展」についての記述もある。

 セネガルがアフリカ仏語圏を代表する国であるとすれば、ナイジェリアはアフリカ英語圏を代表する地域大国である。サハラ以南アフリカで唯一のOPEC(石油輸出国機構)加盟国であり、人口も日本より多い。ノーベル賞作家を生んだ文学大国でもある。サッカーやボクシングでも知られる。イブラヒム・アッボーラ・ガンバリ国連事務次長もナイジェリア出身の国際政治学者(1944年生まれ。米国のコロンビア大学で博士号)

 

●「ナイジェリア 人権」でGoogle検索すると、ケン・サロウィワ氏らの不当処刑に対する日本外務省の抗議文がすぐ出てくる。短いので全文を以下に転載する。

外務報道官談話

ナイジェリアにおける人権活動家等の処刑について

 

平成7年1113日 

 

1

わが国は、ナイジェリア政府がケン・サロウィワ氏ら9人の人権活動家に対し、適正な法手続に疑念を残したまま死刑判決を下し、国際社会のたび重なる訴えにもかかわらず、急ぎ同判決を確定し、1110日に刑を執行したことは、人道的観点から極めて非民主的行動であると考えており、こうした事態に対し遺憾の意を表明する。

2

わが国は、ナイジェリアにおける人権の保障および民主化の早急な確立をこの機会に改めて期待する。

(参考資料)

 1.経緯

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ケン・サロウィワ等への死刑判決
 特別軍事法廷は1031日、オゴニ州民生存運動(the Movement for the Survival of the Ogoni People/MOSOP)のリーダーであるサロウィン等9名に対し、死刑判決を下した。昨年5月に生じたオゴニ地域(石油産出地域)の有力者4名の殺人事件に関与したというのがその理由。右4名が属していた有力者会議はシェル、シェブロン、石油・資源開発委員会から賄賂を受け取り、オゴニ地区内の土地を同社等に売り渡したと言われていた。被告側は本殺人事件はMOSOPの運動を鎮静化させるための陰謀であり冤罪であるとしていた。

()

この死刑判決に対し、英、米、独、カナダ、スイス、コモンウエルスが右を避難する声明を発出。

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ケン・サロウィワ等への死刑判決が確定(11月8日)
 8日、ナイジェリア軍事政権である暫定統治評議会は、サロウィワらに特別軍事法廷が言い渡した死刑判決を認める決定を行い、同人らの絞首刑が確定。

()

ケン・サロウィワ等へ死刑判決(1110日)

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この死刑執行に対する各国の抗議。

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英、米、仏、オーストラリア、オランダ、スイス、南ア各国政府は「ナ」駐在大使の召喚を決定。

()

各国の声明

 

  国連

 ガリ事務総長は、10日「驚きと衝撃を受けている。国際社会の多くの努力や要請を無視して行われたことは遺憾。「ナ」政府は、国際的責務に従うとともに国内の少数派弱者の権利を尊重するよう促す」との談話を報道官を通じて発表。

  米(在「ナ」大からの現地報道)

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大使の協議のための召喚。

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駐米「ナ」大使を招致し抗議の意を伝達。

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「ナ」政府に対する軍事物資売却、補修の禁止。

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高級将校、官吏に対する入国査証の発給停止措置の延長。

()

オルブライト米国連大使に対し「ナ」問題に関する国連緊急会議開催の招請、「ナ」に対する石油禁輸措置、「ナ」人対外資産の凍結決議を検討することを命ずる。

  

 メージャー英首相は、今回の処刑を「合法的殺人」で、民主主義と人権に関する英連邦のハラレ宣言(91年採択)を無視する行為であると避難し、「民主的な政府に戻らない限り、英連邦にとどまるべきでない」と除名を求めた。

 2.人物背景 ケン・サロウィワ(Ken Saro-Wiwa

 作家、劇作家、環境保護主義者(保護論者)、オゴニ族のリーダー、教師、州政府大臣、雑貨商、商人、不動産開発業者、出版者、TVプロデューサー。国民を政治的自由の中に取り込むためにできるだけ多くの州を設けるべきとの持論の持ち主で、後にオゴニ州(人口50万人)自治を宣言し、シェル石油からのバック・レント及び補償として数十億ドルを要求した。これに対し政府は弾圧を加えると共に、近隣諸州のエスニック・グループに対しオゴニを攻撃するよう使そうした。かかる圧力の中で、オゴニ運動は妥協を図ろうとする穏健派とより闘争的な「サ」の支持者派とに分裂していた。

 

外務報道官談話 / 平成7年 / INDEX

出典http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/07/dfg1113a.html

 

●また、近年の人権侵害としては、アムネスティ・インターナショナル・ジャパンのサイトに2005年の事例の指摘があり、比較的短いので以下に全文を転載する。

 

ナイジェリア : 原油産地ニジェール・デルタから人権侵害の新たな証拠

投稿日時: 2005-11-3 18:40:00 (5396 ヒット) 

「まるで天国と地獄のようだ。彼らは全てを持っている。我々は何も持っていない。もし我々が抗議しようものなら、彼らは兵士を送ってくる。」

―――ウグボロド族リーダー、Eghare W.O. Ojhogar

「私は、両手を後ろに縛られた他のリーダーたちと共に海岸にひざまずけと命じられた。そして、兵士らは、馬鞭で私たちを激しく打ちつけ、砂を食べろと言った。」

―――オディオマ王(Amanyanabo (King) of Odioma)、Cadbury George Omieh, Igno XXI

作家であり、また人権擁護活動家であったケン・サロ・ウィワと8人の活動家仲間らが処刑されてから10年が過ぎた。しかし、新たな証拠は、ナイジェリアの原油産出地であるニジェール・デルタに住む人びとが、いまだに治安部隊の手による死と破壊に直面していることを明らかにしている。

アムネスティ・インターナショナルが本日付で発表した報告書は、いかに外国石油会社の活動に抗議する、または原油生産を妨害したと疑われる貧困に苦しむ村々が、集団的懲罰を受ける危険に直面しているかを浮き彫りにした。

「殺害と虐待、そして強かんの責任者たちがいまだに裁きを逃れていることは、ケン・サロ・ウィワと彼の仲間たちに対する侮辱である。彼らの経済的・社会的権利を求める運動は、好景気の石油収入に関わらずニジェール・デルタ地域の住民の70%が未だに極度の貧困下で生活している事実に強い関連性をもっている」と、アムネスティ・アフリカプログラム部長コラウォル・オラニヤンは述べた。

アムネスティのニジェール・デルタ地域に関する最近の調査を基にした報告書、「権利と資源への主張-ナイジェリアにおける不正義、石油、そして暴力」は、今年、ニジェール・デルタ沿岸に位置するエスクラボス石油基地とオディオマ村で起きた人権侵害について特に焦点をあてている。

24日、ナイジェリア政府特別部隊は、ウグボロド族の居住地付近から、シェブロン・ナイジェリアが所有するエスクラボス石油基地にいた抗議者に向かって発砲した。一人が撃たれ、その後死亡した。また30人の抗議者が負傷し、そのうちの数名は銃撃やその他の武器により重傷を負った。負傷者をボートで病院へ搬送することに数時間がかかった。政府とシェブロン・ナイジェリアのどちらも、十分な医療、または負傷者の搬送を支援せず、またこの事件に関する徹底して独立した調査を行わずにいる。

219日、政府特別部隊がオディオマのイジャウ族を襲撃した際に、少なくとも17人が殺害され、女性2人が強かんされたとされている。襲撃の表向き理由は武装した自警団員を拘束することであったが、容疑者は捕まらず、また村の約80%の家屋が破壊された。事件の前月、シェル・ナイジェリアはこの地域の石油探索計画を撤回したが、これはオディオマの青年らが事業の中止を要求し、シェル・ナイジェリア石油会社がこの土地の所有権問題を認識したことが報道された後のことであった。襲撃に関する審問は公にはならず、告訴された者は一人もいないまま、オディオマでは荒廃した状況が続いている。

アムネスティはナイジェリア政府に対し、治安部隊が市民の殺害、傷害、強かん、また市民の財産の破壊に関与したという容疑について、徹底かつ独立した調査を行うことを要求する。調査の結果は一般に公表し、人権侵害の責任者すべてが裁かれなければならない。

アムネスティはまた、シェブロン委員会に対して、24日にエスクラボス石油基地で起きた事件でのシェブロン社の関与について、独立かつ公正な調査を行うこと、そして、シェル石油会社が、シェル・ナイジェリア請負会社とオディオマの犯罪集団との間で交わされている警備契約の疑惑について調査を行うことを要求する。

報告書Ten years on: injustice and violence haunt the oil Delta,(英)は下記でご覧になれます。http://web.amnesty.org/library/index/engafr440222005

アムネスティ発表国際ニュース

2005113

AI Index: AFR 44/025/2005

http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=69

 

    企業シェル石油の責任

 

「世界的な大企業であるシェル石油がナイジェリアで環境破壊を行ったり、住民を無視した開発を行っていることには驚いた。企業の倫理観が問われる問題だと思う」(男子)

「貧しい村にいきなり押しかけて荒らすだけ荒らし、困惑しないはずがない。農民たちを無差別に傷つけて環境問題だけをそこに残していく。本当に許せないことだと思う。シェルなどという大企業だからこそ、このような無責任な行動を起こしたというのを知り、衝撃を受けた」(女子)

「ビデオを見るたびに思うことですが、結局は力の強い者たちの強引な計画によって、弱い者たちを言いなりにしたり、殺したり、いつの時代もどの場所でもこんなことが起こっていると思うと憤りを感じます」(女子)

「石油を産出するということは、環境にも悪く、またパイプラインをひいていて、そのパイプライン周りの土地や村にも影響が出ているのに解決せず、無視して石油の産出を続けているのは、人間としてありえないことだと思った」(男子)

「ナイジェリアの軍事政府がオゴニ族の人たちより自分たちの金につながる石油の方をとった行為などや、武力により善意の指導者を殺害した事実は消えることのないとても悲しむべき事、変えなければならない現実だと思う。また、シェルは何も関与していないと言っていたが、事実は疑わしいと感じた。うわべのお金などの利益のみを求め、石油に汚染された農地を生み出す前に、石油会社がしっかり保障など何なりすれば、このような事は起こらなかっただろうと思う」(女子)

「石油会社が先住民の農地に勝手にふみこんで、それに反抗しようとする地元の人々を傷つけていたという現実を初めて知りました。それが私の知っている石油会社だった気がするのですが……日本にもある〝シェル〟で合っていますか? このような大企業がこのような残忍な、人権を無視した攻撃を行い、それで利益を得ているということが信じられません」(女子)

「環境問題はあったものの、それが汚染や荒廃につながったことは今までにない」という汚染者側の意見には矛盾を感じました。環境問題が発生したのなら、何らかの汚染や荒廃が起きるのは免れないのではと思うし、前者をみとめ後者をみとめないこともおかしいと思います。人々の反抗を射殺、腕切断といった武力でおさえつけるといったことがいつの時代にも起きていることを悲しく思いました。人々の抗議運動に耳を貸さず、武力でおさえ続ける企業がいつか村から引き上げ、あるいは汚染対策に目覚める日はくるのでしょうか。しかし石油産業はナイジェリアを支える大切なものでもあり、簡単には解決できない問題だということを感じました。また仮に汚染対策を開始しても汚染しつくされた多くの畑を元に戻すことが可能かどうかも疑問で、軍事政権の陰謀がどれほど卑劣極まりないか実感させられました」(女子)

「世界で多くの大企業の横暴な対応が目立つような気がします。日本も見えないところであるのかもしれませんが……」(男子)

 

●ナイジェリアの石油問題にとどまらず、シェルの不祥事については、前掲の『世界ブランド企業黒書 : 人と地球を食い物にする多国籍企業』を参照。また、私の見聞では、1980年頃、日本シェルの少数派労働組合に対する経営側の暴行事件(数人が骨折)について、同組合の白石忠夫(筆名宮嶋信夫)から聞いた。

 

    国際社会の対応

 

「オゴニ族は何の罪もないのに争いに巻き込まれて、石油会社やアメリカやイギリスの政府は何を考えているのだろうか。あれだけ表では戦争のない平和な世界を主張しておきながら目に見えないところで多くの罪のない人々の命を奪っている。そういった事を止めるために国連があるのではないのか。ビデオの中で国連や国際機関の活動についてあまりなかったので疑問に思った。アメリカは一般市民も戦争に賛成する人が多いのだろうか。それともブッシュを中心とする政府の圧力が大きいからなのだろうか」(女子)

「開発によって人の暮らしが豊かになる一方で、被害を受けている人がいる。このことは昔から知っていたことでしたが、今回の講義のように深く学んでいませんでしたし、知りもしていませんでした。人の暮らしを無視し、武力をもって開発を進めていくのは不条理もいいとこだと思います。先進国が発展途上国に対してするべきことは何なのか、本当に考え直さないといけないと考えます。また、その事についてより深く学びたいと思いました。」(男子)

「軍部が牛耳る政府というのがどれほどひどいのかを知った。また、最後にアメリカをはじめさまざまな国が非難したとありましたが、非難した国も人権をちゃんと守れているのかを疑問に思いました。」(男子)

「このような恐ろしい事が私たちの知らない間に行われているとは思わなかった。この事実を国際的な場で公にすべきだと思う。しかし、先進国企業の利潤が絡んでいる以上、黙殺されると思います。こんな時には、国連軍による軍事介入が行われない事に憤りを感じます。ナイジェリアの経済が石油に頼る状態が全ての根源だと思う。この様な国へ支援を行う事が、先進国の一つの責務だと思います。今でもこんな状態ではない事を強く願います」(女子)

「シェルの会社があるイギリスやオランダ、そして国連などはナイジェリアの軍事政権に対して何もしていないのでしょうか。それとアフリカには軍事政権が多いように思いますが、何か理由があるのでしょうか。」(男子)

「世界にはまだまだこういったことが起きているのかと思うと将来が不安になった。私は他国に関してあまり干渉すべきではないと考えていたが、国際的に圧力をかける団体も必要であると思った。強力な力には、ある程度の力が必要なので自衛隊は絶対に必要だと思

った」(男子)

 

●国家犯罪と国際社会の制裁

比較的近接して発生した3件の国家犯罪(この比較を示唆したのは、ハワード・ジン教授)と国際社会の対応を比べてみる。この3例ではたまたま(?)罪の大きさと罰の大きさが反比例している。大国、とりわけ超大国の犯罪に対して国際社会は無力である。

 

表 3つの国家犯罪

 

 

罪の相対的な大きさ(殺された人数)

国際社会による制裁の相対的な大きさ

天安門事件(1989年6月)中国政府の自国民への蛮行

中(貿易制裁その他)

パナマ侵攻(198912月)米国・ブッシュ父政権

小(国連の非難決議のみ)

クウェート侵攻(1990年8月)イラク・フセイン政権

大(国連の経済制裁による子供50万人の死亡など)

注1 3つのなかで知名度の低いパナマ侵攻の被害(3000人以上のパナマ非戦闘員が殺された。多くは貧困層)については、次の映像を参照

『テロリストは誰? 第三世界に対する戦争 僕がアメリカの外交政策について学んだこと』グローバルピースキャンペーン(きくちゆみ)、2004年、120

フランク・ドリル編、What I have Learned about U.S. Foreign PolicyThe War against the Third WorldFrank Dorrel

キーワード:CIAの秘密工作、イラン・コントラ事件、パナマ侵攻、スクール・オブ・アメリカズ(暗殺者学校)、経済制裁、東チモール、ラムゼー・クラークと民衆法廷

 

注2 イラク経済制裁の影響については、前掲の映像『テロリストは誰?』および『世界の新しい支配者たち : 欺瞞と暴力の現場から』ジョン・ピルジャー、井上礼子訳(岩波書店、2004年)を参照。

 


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