映像資料の感想(環境社会学Ⅱ)

2008年1月25日 2008年1月31日改訂

●民衆法廷(2008年1月25日)

『ブッシュを裁こうPart2 ブッシュ有罪』アフガニスタン国際戦犯民衆法廷実行委員会制作,2004年,ビデオプレス,マブイ・シネコープ(大阪)発売。VHSビデオ。35

キーワード:民衆法廷、同時多発テロ、アフガニスタン侵攻、誤爆、空爆の思想、戦争犯罪、平和に対する罪(侵略の罪)、人道に対する罪、東京裁判、ニュールンベルク裁判、劣化ウラン弾、クラスター爆弾

 

配布資料 イラク国際戦犯民衆法廷(ICTI)ウェブサイトのトップページ、西日本新聞2008年1月20日トップ記事(温暖化対策 日本、先進国で最低 世銀評価 石炭発電増える)

 

民衆法廷

戦争犯罪などの国家犯罪(とりわけ超大国の犯罪)について、既存の権力法廷(国家法廷、国連法廷)が放置するときに、犯罪事実に既存の国際法や国内法(侵略の罪、人道に対する罪、戦争犯罪、ジェノサイド禁止条約、拷問禁止条約など)を適用するとどのような結論になるかを、法律家(弁護士、法学者など)や科学者(専門家証人)、市民が裁判形式で討議する平和運動・人権運動の一形態。既存の権力法廷の関係者がボタンティア参加することもある。被告の政府高官はふつう欠席するので、アミカス・キュリエが被告を代弁する。ラッセル法廷(ベトナム戦争)、クラーク法廷(湾岸戦争)、女性国際戦犯法廷、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷、イラク国際戦犯民衆法廷、原爆投下を裁く国際民衆法廷などがある。民衆法廷にはもちろん強制力はないが、権力法廷も強制力があるとは限らない。たとえば国際司法裁判所で米国政府はニカラグア政府に敗訴したが(1986年)、判決に従わなかった。

 

なお私(戸田)も民衆法廷運動の当事者である(世界イラク戦犯民衆法廷広島公聴会の共同代表)。前田『民衆法廷入門』173頁参照。イラク戦争については、イラク国際戦犯民衆法廷(ICTI)と世界イラク戦犯民衆法廷(WTI)の2つの民衆法廷が同時に進行した。ICTIについては下記ブックレット、WTIについては下記洋書を参照。権力法廷では、しばしば政治の論理(同じようなことをしても、勝った国の行為、大国の行為は犯罪でない)が法の論理(どの行為主体であろうと犯罪に該当することをやれば犯罪である)を圧倒してしまう。民衆法廷は、事実にもとづいて法の論理を追求する「思考実験」でもある。

 

イラク戦争報道の影にかくれてみんな忘れているが、アフガニスタン戦争(2001年開始)はまだ続いている。2007年の米軍死者は117人で開戦以来最悪(イラク戦争の死者より少ないが)。民間人の誤爆死は2007年4月から8月までの5カ月だけで1000人以上(2006年全体の2倍以上)である。『週刊金曜日』2008年1月18日号4頁。タリバンが勢力を盛り返してきたので、カルザイ親米政権は依然として不安定である。

 

文献

『アフガンの戦争犯罪』ICTA実行委員会編(耕文社2004年)

『アフガニスタン女性の闘い』ICTA編(耕文社2003年)

『ブッシュの戦争犯罪を裁く Part1』ICTA実行委員会(現代人文社、2002年)ブックレット

『ブッシュの戦争犯罪を裁く Part2』ICTA実行委員会(現代人文社、2003年)

『ブッシュの戦争犯罪を裁く Part3』ICTI準備会(現代人文社、2003年)

『ブッシュの戦争犯罪を裁く Part4』ICTI実行委員会(現代人文社、2004年)

『民衆法廷入門 : 平和を求める民衆の法創造』前田朗(耕文社2007年)

『民衆法廷の思想』前田朗(現代人文社、2003年)

The World Tribunal on Iraq: Making the Case Against WarMuge Gursoy Sokmen (編集), Arundhati Roy (序論), Richard Falk (序論)Olive Branch Press2008

 戸田清「原爆投下を裁く国際民衆法廷・広島」『長崎平和研究』225664頁、200610月、長崎平和研究所

 

米国の戦争や戦争犯罪、その他の国家犯罪や社会の病理については、下記が参考になる。

アメリカ・インディアン悲史藤永茂(朝日新聞社、1974年)

『アメリカの化学戦争犯罪 : ベトナム戦争枯れ葉剤被害者の証言』北村元(梨の木舎、2005年)

『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム、益岡賢訳(作品社、2003年)著者は元国務省キャリア

『アメリカ帝国の悲劇』チャルマーズ・ジョンソン、村上和久訳(文藝春秋、2004年)

『イラク 占領と核汚染』森住卓(高文研2005年)

『陰謀国家アメリカの石油戦争』スティーブン・ペレティエ、荒井雅子訳(ビジネス社、2006年。)著者は元CIAイラク担当分析官

『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス、古草秀子訳(東洋経済新報社、2007年)

隠されたヒバクシャ : 検証=裁きなきビキニ水爆被災前田哲男監修、グローバルヒバクシャ研究会編(凱風社、2005年)

金で買えるアメリカ民主主義グレッグ・パラスト、貝塚泉,永峯涼訳(角川文庫、2004年)ブッシュの選挙泥棒

『グローバリゼーションと戦争 宇宙と核の覇権めざすアメリカ』藤岡惇(大月書店、2004年)

『軍産複合体のアメリカ』宮田律(青灯社2006年)

『世界の新しい支配者たち : 欺瞞と暴力の現場から』ジョン・ピルジャー、井上礼子訳(岩波書店、2004年)

『戦火の爪あとに生きる 劣化ウラン弾とイラクの子どもたち』佐藤真紀(童話館出版、2006年)

『戦場の枯葉剤』中村梧郎(岩波書店、1995年)

『戦争中毒: アメリカが軍国主義を脱け出せない本当の理由』ジョエル・アンドレアス、きくちゆみ監訳(合同出版、2002年)

『戦争って、環境問題と関係ないと思ってた』田中優(岩波ブックレット2006

『戦争はいかに地球を破壊するか-最新兵器と生命の惑星』ロザリー・バーテル、振津かつみほか訳(緑風出版2005年)

『戦略爆撃の思想 : ゲルニカ、重慶、広島』新訂版 前田哲男(凱風社、2006年)

『だからアメリカは嫌われる』マーク・ハーツガード、忠平美幸訳(草思社、2002年)

『血と油-アメリカの石油獲得戦争』マイケル・クレア、柴田裕之訳(NHK出版2004年)

超帝国主義国家アメリカの内幕』マイケル・ハドソン、広津倫子訳(徳間書店、2002年)

『帝国と核兵器』ジョセフ・ガーソン、原水爆禁止日本協議会訳(新日本出版社、2007年)

『テロリズムと戦争』ハワード・ジン、田中利幸訳(大月書店、2003年)

なぜアメリカはこんなに戦争をするのかダグラス・ラミス(晶文社、2003年)著者は元海兵隊将校

『「日米同盟」と戦争のにおい 米軍再編のほんとうのねらい』新原昭治(学習の友社、2007年)

『日本は略奪国家アメリカを棄てよ グローバリゼーションも共同幻想も必要ない』ビル・トッテン(ビジネス社、2007年)著者は元米国人、日本に帰化

覇権か、生存か : アメリカの世界戦略と人類の未来ノーム・チョムスキー、鈴木主税訳(集英社新書、2004年)

『反米大陸 中南米がアメリカにつきつけるNO!』伊藤千尋(集英社新書、2007年)★

『ヒロシマ記者が歩く戦争格差社会アメリカ』田城明(岩波書店、2007年)

『ファルージャ2004年4月』ラフール・マハジャンほか、益岡賢ほか訳(現代企画室、2004年)

『ブッシュの戦争株式会社』ウィリアム・ハートゥング、杉浦茂樹ほか訳(阪急コミュニケーションズ、2004年)

『民営化される戦争』本山美彦(ナカニシヤ出版、2004年)

民衆のアメリカ史 : 1492年から現代まで』上下、ハワード・ジン、猿谷要監修、油井大三郎ほか訳(明石書店、2005年)

『ラムゼー・クラークの湾岸戦争 : いま戦争はこうして作られる』ラムゼー・クラーク、中平信也訳(地湧社、1994年)

『ルポ貧困大国アメリカ』堤美果(岩波新書、2008年)

 

映像

『ブッシュを裁こう』アフガニスタン国際戦犯民衆法廷実行委員会制作,2003年,ビデオプレス,マブイ・シネコープ(大阪)発売。VHSビデオ。35

キーワード:民衆法廷、同時多発テロ、アフガニスタン侵攻、誤爆、空爆の思想

 

ウェブサイト

アフガニスタン国際戦犯民衆法廷(ICTA)http://afghan-tribunal.3005.net/

イラク国際戦犯民衆法廷(ICTI) http://www.icti-e.com/

イラク世界民衆法廷(WTI)広島公聴会 http://www.h3.dion.ne.jp/~nowar/wti/

原爆投下を裁く国際民衆法廷・広島 http://www.k3.dion.ne.jp/~a-bomb/index.htm

女性国際戦犯法廷 

http://www1.jca.apc.org/vaww-net-japan/womens_tribunal_2000/

 

受講生の感想

「民衆法廷という平和活動の一手段が果たしてどれだけの効果を生むのか気になりました。この判決文を持っていっても、被告側には殆ど効果はないのでしょう。しかし私たち民衆には大きな効果をもたらすことができると思います。法廷、ということで一般の人にはわかりづらいところがあり参加もしにくいと思いますが、このビデオのように簡潔にまとめたものを広めることが大事だと思います。しかし、民衆法廷で扱う問題に関しては厳選し、注意すべきだと思います。確か昨年度の授業[環境国際関係論]を受けたときに民衆法廷で慰安婦問題を取り扱っていたので、このように実際の証拠がないのに問題だけが独り歩きして大きくなってしまったものを取り扱えるのは自由なのでしょうが、問題があると思います。」(女子)

戸田コメント 民衆法廷に即効性はないが、ベトナム反戦運動がなければベトナム戦争はもっと長引いていたと思われるし、ラッセル法廷は反戦運動の重要な要素のひとつだった。ラッセル法廷の影響力を恐れたからこそ、米国政府(ジョンソン)とフランス政府(ドゴール)がいやがらせをして、スウェーデンで開催されることになった。確かに右翼団体からの誹謗中傷が最も激しいのは女性国際戦犯法廷である。自民党の安倍晋三らがNHK番組に圧力をかけた疑い(朝日新聞本田雅和記者のスクープ。いわゆるNHK裁判に発展)もあり、裁判にもなった。「慰安婦問題」について「実際の証拠がない」のかどうかについては、意見が分かれている。証拠があるという解釈が国際的には多数派である。皮肉なことに、女性国際戦犯法廷にはユーゴ戦犯法廷の関係者が協力した(単なる協力どころか裁判長にまでなった)ことが注目される。旧ユーゴスラビア国際刑事法廷(ICTY)の元裁判長が女性国際戦犯法廷の裁判長になり、女性国際戦犯法廷の主任検事のひとりはICTYの現職法律顧問であった。民衆法廷のなかで権力法廷の「支援」を受けたのはこの法廷だけであるから、「厳選」して慰安婦問題を取り上げたことは「正しかった」と言える。前田『民衆法廷入門』32頁参照。なお前田氏も右翼団体からいつも誹謗中傷されている。前田氏(東京造形大学教授)は朝鮮大学校非常勤講師を兼任しているが、決して「金正日の御用学者」ではない。民衆法廷運動は原爆投下(日本の被害)をとりあげているのであるから、慰安婦(日本の加害)もとりあげなければならない。なお、原爆投下には日本政府の共犯性(降服の先送りによる「招爆責任」)もある。

「民衆法廷と聞いても、それが何楽の国際的な活動に結びつかなければただの茶番になってしまうと思うので、より活発な活動を期待したい。具体的にはアメリカの裁判所に訴えるとか、制裁を加えるよう国連に働きかけをするとか、そういった活動を行っていけばよいのではないか」(男子)

戸田コメント もちろん米国の法廷への提訴や国連への働きかけも被害者や活動家によって行われている。超大国に制裁を行うことは政治的に困難である(常任理事国には拒否権がある)。

「国際的にも民間レベルでも、ブッシュ政権に対しての批判が強くなっているのは当然のことだと思う。明確な根拠もなく戦争をしたり、人道的に問題のある行為に対して黙認するという政権のあり方を正面から批判できているのが、とても素晴らしいと思う」(男子)

「ブッシュの戦争犯罪がうやむやになった現代の世界に憤りを感じる」(男子)

「ブッシュ大統領によるイラク戦争は私も度を超えていると思います。劣化ウラン弾の被害をこの授業やニュースで聞いて知っていたので、長崎出身者としてはもう二度と広島。長崎のような悲劇を生みだしてほしくないです。今回のビデオで、民衆法廷は面白そうだなと思いました」(女子)

「ブッシュを含めアメリカは間違ったことをしていると思います。しかし、アメリカを、ブッシュをとめられない周囲にも問題があると思います。だから会の最後の言葉には納得しました。民衆法廷という言葉を初めて聞きました」(女子)

「民衆法廷というものがあることを知らなかったが、私としては、アミカス・キュリエという被告の助言者がいるとしても、実際には被告本人には何も影響を与えないのではないかと思った。有罪にすることで民衆法廷に参加した人たちは満足できるのかもしれないが、それ以外に意義があるのか気になった」(女子)

戸田コメント 市民運動は多様な手法で行われたほうが効果的である。民衆法廷は他の手法と相乗効果を発揮する。民衆法廷にもちろん即効性はないが、積み重ねていくことで国際世論に影響を与えうる。ラッセル法廷に対して米国政府やフランス政府がいやがらせをしたのは(両国が開催を禁止したので、スウェーデンで開催された)、国際世論への長期的な影響を懸念したこともあるだろう。アミカス・キュリエは「被告の助言者」ではなく、「法廷の助言者」である。被告が欠席するので、その言い分を想像して代弁することが、役割のひとつである。

「戦争とはいえ、これから先を担う子供に悪影響を及ぼす劣化ウラン弾を使用したアメリカが罰されても仕方がない。このような事態になってしまうことは戦争というものの性質上避けられない事態かもしれない。だからこそ戦争というもの自体を起こしてはいけないのだと思う。たとえどんな理由があったとしても戦争という行為を正当化してはいけない。」(男子)

戸田コメント 民衆法廷に強制力はないので、アメリカが「罰される」ことはない。

「ブッシュ政権のしたことを考えると、ブッシュが数多くのことで有罪になるのは納得できる。これを日本だけでなく、世界中の人々が行ったことは、人々の意識の高さを示しており、よいことだと思った」(男子)

「今回の社会学の講義は、アメリカが行ったアフガニスタン侵攻を裁判のような形式で議論するという、面白いビデオを見た。最終的にアメリカ(ブッシュ大統領)は有罪になったが、議論を聞いていると、それは当然のことであると自分は感じた。この議論の結果を他の国々にも知らせるべきだという意見が最後の方にあったが、自分のそうした方が良いと思う」(男子)

戸田コメント もちろんICTA実行委員会は世界各地の政府や市民に知らせる努力をしている。

「イラク戦争の被害者がこんなに多いとは思いませんでした。特に子どもたちが劣化ウランで苦しんでいる映像はとてもショッキングでした。このビデオをブッシュ大統領はじめアメリカ国民に見て欲しいです。本当にブッシュ大統領を有罪にして欲しいです。このような裁判を起こし日本から問題を発信することは素晴らしいことだと思います。」(女子)

戸田コメント ICTA実行委員会は日本の市民の呼びかけでつくられたが、国際連帯活動(共同代表も日本人とアフガニスタン人)である。映像や本に出てくるのはイラクの劣化ウラン被害者だが、アフガニスタンも潜伏期を経過してきたので(2001年からもう7年)そろそろ劣化ウラン被害者(白血病など)が出てくるだろう。広島長崎原爆投下を裁く民衆法廷では、ローズヴェルト大統領とトルーマン大統領が「死後有罪」になった。

「アフガニスタン民衆法廷の判決を見て、ブッシュ大統領が有罪だとされた時はよかったあと思ったが、同時に現実を知ってとても悲しかった。アフガニスタンでの被害は想像を絶するものであり、罪のない多くの人を傷つけ苦しめた戦争は決して正しいものではない。私は今まで9・11事件について表面の部分しか見ていなかった。テロが悪いから、それに対してアメリカが怒るのも無理はないと考えていた。しかし、それが多くの罪のない人々の命を奪う悲しい戦争につながってしまった事実を知ると、やはりアメリカ政府はおかしいと感じた。また、日本の軍事組織や政府もおかしいと感じた。メディアの流す情報だけを全て信じず、その裏の真実を知っていこうと思った」(女子)

「強制力をもたない国連裁判は、意味はあるのだろうか。強制力をもたせたほうがいいのではないか?」(男子)

戸田コメント 国際司法裁判所(ICJ)が米国政府やイスラエル政府に対して強制力を持たないのは残念であるが、国際社会の現状では困難である。旧ユーゴ戦犯法廷やルワンダ戦犯法廷の強制力は小国の崩壊した政権の指導者に対してである。ICJが強制力を持つことは「米国の国益に反する」のであるが、そういう理屈はおかしいという国際世論が高まることが重要である。ICJでは次の3件が有名

1986年 米国敗訴(ニカラグアへの国家テロ)

1996年 核兵器は一般的に違法(勧告、日本判事は支持せず)

2004年 イスラエル敗訴(パレスチナの分離壁)

ウィキペディアの「国際司法裁判所」項目では、ICJの拘束力問題について次のように記述されている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%8F%B8%E6%B3%95%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80

 

判決が出た後の履行の問題

もっとも判決に従わない当事国に対しては、一方の当事国が安全保障理事会に提訴することができる。その場合には、安全保障理事会が勧告・その他をとるべき措置を決定することができる(国際連合憲章942項)。これが、強制力を担保する唯一の手段である。

国内裁判所においては、国家が強制執行するなど、国家権力によって履行を直接強制する手段がある。しかし、統一された権力機構がないために直接に履行を強制する執行機関がない。したがって、執行力を持たないのが国際司法裁判所の判決であり、判決は尊重されてよく履行されてはいるものの、しばしば、判決が無視される事態が発生して裁判所の権威を傷つけている。(ニカラグア事件のアメリカ、在イランアメリカ大使館占拠事件のイランなど)

特に、拒否権を行使することができる常任理事国や常任理事国の密接な同盟国に対しては安全保障理事会の勧告すらなされないので、実質的に判決の強制力はないといえる。

現状においては、各国が裁判所の権威と意見を尊重して理性的に自ら履行することが望まれる。

以上ウィキペディアからの引用。国際連盟時代の常設国際司法裁判所も同様の問題をかかえていた。世界政府がないので仕方ない面がある。

 

「ブッシュ大統領及びアメリカ政府がアフガニスタンやイラクに対して行った侵略行為は有罪になって当然であると思った。民衆法廷なので実際に法的な拘束力には欠けると思うが、VTRにもあったように真の意味での反戦運動であると思う。この声が世界各国からあがることを期待したい」(男子)

「私も戦争犯罪の罪で有罪であると思う。しかしあの有罪の発表の様子、観客の拍手がストレートに心の中に入ってこなかった。被害関係者が自分の被害が認められ、笑顔で喜ぶというのはわかるが、何だか“勝った!”という感じがして、“心の底から素直に納得”というのができなかった」(女子)

「検察側の結びに矛盾がある(日本人である話者が「私たちが裁くしかない」というようなことを言うことなど)。見ていて一応対等の立場で裁こうとしてはいるものの、現実には一方的なものであり、(法の下の)公正、公平であるべき法廷として如何なものかと感じるところも多々あり、また明確な拘束力が(ジョージ・ブッシュという一個人に対して)あるのか? 告訴されるべきは米国という国家ではないのか? という点でいわゆる「アンチ団体」の一方的なパフォーマンスに過ぎないとしか言えないのではないかと感じた。ただ米国のブッシュの“マッチポンプ”で独善的な体質には閉口を通り越して、あきれて開口してしまうのは確かですが」(男子)

戸田コメント 検事側の猿田弁護士の「私たち」は「私たち日本人」ではなく「私たち市民」の意味なので、別に矛盾はない。国際司法裁判所(ICJ)では国家が被告となるが、国際刑事裁判所(ICC)では個人が被告となる。英国はICC条約を批准しているのでアフガニスタン戦争、イラク戦争についてブレアを被告にすることはできるが、米国はICC条約を批准していないので、ブッシュを被告にすることはできない。日本もICC条約を批准していないので小泉を被告(共犯、幇助犯)にすることはできない。主要先進国でICCを批准していないのは日米のみであるので恥ずかしい(グローバルスタンダードに遅れていると宣伝することになるので「自虐的」である)。特にICC条約発効以降は、戦犯民衆法廷は個人を被告にしている。被告が欠席するのである程度一方的になるのはやむをえない。そもそもブッシュ政権が一方的に戦争を始めたのであるが。

「私もブッシュの戦争に反対です。ブッシュの行いを9・11事件に対する当然の行為だと言っていますが、捕虜に対する行い(戦争犯罪)や民間人施設に対する行い(戦争犯罪)に対して、きちんと答えてもらわなくては、納得することはできません。ビデオでは有罪となりましたが、このことはちゃんと米国のブッシュに届いているのでしょうか。米国に届かなければ何の変化も起こらないと思った」(女子)

戸田コメント もちろん民衆法廷の判決、勧告は米国大使館、米国政府に送付された。送付された文書をブッシュ自身が読むかどうかは別の問題。担当の官僚は「アラさがし」や「対応策」目的で当然熟読するだろう。

「イラク戦争を強行したブッシュ大統領に対して多くの人が不満や怒りを覚えている。このような運動を行い、この運動を多くの人に知ってもらい、その多くの人が声をあげないと、ブッシュ大統領を正式に罰することは難しいだろう。権力というものは私たちが考えているものより、ずっと強大であると思う」(男子)

「人が団結したら力が大きくなる事が見えた。ブッシュ大統領は、嫌われている人が何人いるのだろう、日本はどうしたら良いのだろうか。民衆法廷の意見の中に「アメリカとイラクが互いに協力しあう、妥協しあうと良い」みたいな感じで言っている人がいたが、あまりに理想すぎだと感じた。女の人も「私たちが裁いて――しようではありませんか」と自慢げなのが、しゃくにさわりました。でもアメリカやイラクの事実を知ることは大事だと思います」(女子)

戸田コメント 猿田弁護士が「自慢げ」とのことだが、弁護士は自信なさそうにしゃべると裁判官や相手側にばかにされるので、自信ありそうにしゃべる習慣がついているのだと思う。

「今回の映像で見た「アフガニスタン国際戦犯民衆法廷」では、ブッシュ大統領の有罪判決が下された。このような法廷は、世界的に見ればそれほど影響力の大きいものではないと思うが、その小さな力は必ず大きな力になって世界を動かす原動力へと変わると思う。私はこれまで、このような民衆法廷の存在を知らなかったので、今後はもっと世の中の動きに注目して、自分なりに考え動き出していきたいと思った」(女子)

戸田コメント 核兵器廃絶高校生署名の人が言っているように市民運動は「微力であるが無力ではない」。微力が積み重なると大きな力になると思う。マスコミが民衆法廷をあまり報道しないので、多くの人が知らないのは当然である。NHKスペシャルで女性戦犯国際法廷をとりあげたときは、右翼団体や自民党からのいやがらせがすさまじかった。

「劣化ウランは健康に深刻な被害をもたらすということを改めて感じた。またアメリカのアフガニスタン攻撃は結局天然ガスをパイプラインで運べるようにするのが目的だったのかと思った。この攻撃は何も良いことをもたらさなかったことは、とても心が痛かった」(男子)

「ブッシュを裁く裁判が行われていたことは全然知らなかった。このような戦争反対の動きは世界で行われているのに戦争がなくならないことや、一部の人間が戦争をやめようとしないことは、本当に不思議です」(男子)

戸田コメント 民衆法廷は権力法廷(通常の法廷)と違って拘束力がないので、やはり微力である。戦争したい人たちは権力と富を持っている。

「配られたプリント(西日本新聞記事)にあった「日本は先進国の中で温暖化対策が最低だ」というのに興味をもった。他の講義でドイツは年々COの排出量は下がる一方だが、日本は上がる一方である。日本は口ばかりで対策は全くとっていない。本当に先進国なのか疑わしくなる」(男子)

「ビデオでブッシュ有罪となっていますが、これには何の強制力もないんですよね?」(男子)

戸田コメント 民衆法廷なのでもちろん強制力はない。でも権力法廷でも強制力があるとは限らない。国際司法裁判所(ICJ)もほとんど強制力はない(1986年米国敗訴、2004年イスラエル敗訴)。

「今回のビデオではアメリカのブッシュ大統領は戦争犯罪で有罪だと納得できた」(男子)

戸田コメント 原爆投下についての民衆法廷では、ローズヴェルト大統領とトルーマン大統領が戦争犯罪と人道に対する罪で死後有罪となった。上記拙稿参照。

「ブッシュ大統領を有罪にすることに対して賛成です。テロリスト対策を名目にして、何の関係もない人を殺しすぎたと思います。それに、この攻撃の目的は石油の確保のためだということを聞きました。それぞれの国で権力の違いがあることが、問題解決を遅らせているのではないかと思います。完全なる平等社会ができればいいなと思います」(男子)

戸田コメント 民衆法廷運動ももちろん平等社会をめざす市民運動の一環である。

「ブッシュ大統領は当然戦争犯罪を犯したと思うが、これだけそう思う人がいながら、各国の国会等で日本の従軍慰安婦のように非難決議があまりされないことが不思議である。」(男子)

戸田コメント ブッシュを犯罪者と呼ぶ国家指導者は、ベネズエラのチャベス大統領など少数である。伊藤千尋『反米大陸』(集英社新書2007年)など参照。

「市民が根強く戦争反対運動を続けていくことで少しは平和な方向に向かっていくのではないかと思う」(男子)

「正義は文化と同様、決まり切った形がない。さらに、私欲と正義がからんでくる場合もあるのがやっかいだ。人と人との関わりの根源には、同情などが存在するが。想像力が及ばないこと、結局は自分が大丈夫なら良いという考えが、問題をつくっていると思う」(男子)

「判事によって客観的観点から見た判断がくだされたことはとてもいいことだと思う。今回の判決によってブッシュ大統領に罪があることがわかったが、それによってブッシュ大統領を裁けないことは残念でした」(男子)

「ブッシュがいないところで裁判が行われていた。ここで話されたことはちゃんとブッシュに伝わっているんだろうか。戦争はどんな理由をつけてもだめなことだ。人が死ぬんだから。どんな理由でも正当化されない」(男子)

戸田コメント 英文の判決はもちろん米国政府に送られているが、ブッシュ自身はたぶん読まないだろう。

「戦争の一番ひどいところは全く関係のない人間にまで被害が及ぶことだと、今回映像を見て思いました。特に劣化ウラン弾の影響を受けた子供たちはこの先どうやって生きていくのだろうと思いました。また、アフガニスタンで女性は顔を隠さなければなぐられると聞いて、怒りを覚えました。なぜ何もしていないのになぐられなければならないのでしょうか。アメリカは直接女性をなぐっていませんが、アメリカのイラク戦争によってこのような事態が起こっているのであればやはり責任があると思います。映像で小さな子供が「大人のケンカの方がこわい」と言っていましたが、まさにその通りだと思います。子供は相手とケンカしますが、大人のケンカは国と国だったりするからです。そうすると全くうらみもないのにケンカ相手に暴力をふるうのだから、これはとても怖いことだと思います。今回、映像を見たあの子が大きくなったとき、その気持ちを忘れずにいてほしいし、私もずっと反戦の気持ちを持ち続けようと思いました」(女子)

戸田コメント アフガニスタンでもイラクでも米軍の侵攻によって治安が悪化したので、女性にとっての身の危険も増大した。特殊な公務員である兵士は戦争において業務命令により恨んでいない相手を殺さなければならないのは辛いことである。敵国の人間への恨みを人為的にかきたてることは兵士の訓練の重要なポイントとなる。戦争から帰還した兵士はしばらく暴力的であり続ける(沖縄などでレイプ事件を起こしやすいなど)。南京虐殺がひどかったのは、それまでの数週間の戦闘で「中国軍の抵抗が予想外に激しく」多くの日本兵が戦死したことも一因である。

「やっぱり悪いことを行った人・国は裁かれなければならないものだと考えた。世の中(人の世)は弱肉強食ではないと思うので、強いことを正義とせずに正しいことを正義としてほしい」(男子)

「ブッシュ大統領のことを“被告人ブッシュ”と呼んでいたのには少し驚いた。有罪になり、たくさんの人々が戦争の痛みについてより理解できたことはすごくよかったと思う。戦争はしてはいけないという当たり前のことがやっとアメリカにも浸透してきたので、そのうちにもなくなると思うとうれしい。何よりも罪もないのに被害をうけた子供たちにちゃんとした賠償えおしてほしいと思う」(女子)

「ブッシュのやったことが全て間違っていると判断することは私にはできないが、今回映像で見たような一面があることは知っておかなければならないと思う」(男子)

「前半、イラク戦争といったアメリカの行為についての裁判がありましたが、肝心の被告がいないことが気になりました。たとえ、被害報告を大統領へつきつけても、心までは伝わらない気がします。アメリカは軍事力で解決しようというのが主義なので、本当の意味での平和は遠いと思いました」(女子)

戸田コメント 映像でとりあげていたのはイラクではなくアフガニスタン(劣化ウランについては一部イラク)。権力法廷と違って民衆法廷では無断欠席しても罰則がないので、被告はたぶん100%欠席する。

「コンテナに収容され虐殺」と言っていたのが一体どのようなものなのか想像ができなかったのですが、最後の方に写真が出て、予想よりも小さなコンテナに人が詰め込まれているのを見て衝撃でした。アミカス・キュリエは最初「全世界が容認していた」「裁く資格はあるのか」と言っていました。私は開き直ったなあと思ったんですが、よくよく考えれば一理あるなと思いました。戦争をしたのが悪いのはもちろんですが、戦争を始める際に国民や全世界の人が断固として反対をしていればこんな悲しいことにはならなかったと思います。もしこれから世界のどこかで戦争が起きようとするなら「遠い国の事だから関係ない」というような考えをもたずに、しっかり反対しようと思いました。ブッシュは有罪となりましたが、「劣化ウラン兵器等の全面使用禁止」についてはどうなったのでしょうか? 私としては一刻も早く使用禁止にして悲しみが芽生えないようにしてほしいです」(女子)

戸田コメント 民衆法廷なのでブッシュ有罪に拘束力はもちろんない。大事なのは既存の国際法にブッシュが違反していることをできるだけ多くの人が理解することである。劣化ウランの禁止を求める運動は民衆法廷以外にもたくさんあるが、実現していない。対人地雷禁止条約(1997年)には市民運動の貢献が大きかった。イラク戦争は戦争前に反戦運動が始まったのは前代未聞であるし、反戦デモへの参加者も世界で数千万に及んだが、それでも力が及ばなかった。しかし不正な戦争であることへの理解は広がった。

「スライドに映ったウランの被害を受けた子供たちを見て心が痛んだ。ブッシュは有罪になって当然であったと思う。どれだけお金を払ったって償うことはできないけれど、ちゃんと反省をしてできる限りのことはすべきだと思う」(男子)

「イラクの被害の実態、奇形児の姿をまのあたりにして、心が痛くなった。戦争犯罪を追及すべきだと感じた」(男子)

「民衆法廷の存在は初めて知りました。広い年代の人々がアフガニスタンで現在起こっていることについて知る、とても良いきっかけになっていると思った。「劣化ウラン兵器は戦後も人を殺し続ける」との訴えは心に残った。アフガニスタンに平和はいつ訪れるのだろうか」(女子)

戸田コメント 「戦後も人を殺し続ける」点で劣化ウラン兵器(放射能兵器)は核兵器と似ている。

「裁判がどういうものかよく知らないのですが、様々な立場の人々の心情が語られ、わかりやすかったです。やはりショックだったのは、被害を受けた子供たちの映像です。民間人、そして最も弱い子供たちが傷つく戦争はいちばんよくない暴力の形だと思いました」(女子)

戸田コメント 権力法廷はしばしば難解だが、民衆法廷は平和教育の場でもあるので、わかりやすくするための工夫はいろいろなされている。

「9・11事件はずいぶん前の話ですが、残された問題はたくさんありました。検事団も述べていたようにブッシュ大統領ひとりだけの責任ではなく、日本政府、国民である私たちにもおおいに責任はあります。しかし、戦争はいい結果をもたらさないことは事実です。苦しむのはいつも国民です。戦争が終わったから解決するのではなく、更に別の問題が生じます。戦争を早期終結するには仕方がない事として、長崎にも原爆が落とされました。一番の問題は正義とは何なのか。正義を貫き通すためなら戦争も仕方がないことなのか。動物とは違い、折角考える能力を持ち、他人について考えることができる力を持っているのだから、別の平和的考えを持ってほしい。自分が被害者となったとき、正義のためならとその犠牲を仕方なく思えるのか」(女子)

戸田コメント 原爆は「仕方がない」ことではなかった。1945年2月に近衛元首相が降伏を進言したときに昭和天皇が決断していれば、東京大空襲も広島・長崎もなかった。降伏を遅らせた日本政府と天皇の責任(招爆責任)は重大である。なお原爆投下によって、1945年秋に予定されていた九州上陸作戦や関東上陸作戦が不要になったので米兵50万人(あるいは100万人)が死なずにすんだというのが米国政府の公式見解であるが、「50万人」は過大(水増し)であって、米軍の推計は「4万人」である。

「私は、戦争によって罪のない市民を殺したアメリカ政府、そしてブッシュ大統領が許せない。なぜ、戦争で解決しようとするのだろうか。また、戦争をなくそうと活動している団体が日本に存在することが嬉しかった」(男子)

「9・11がアメリカの挑発によって引き起こされ、それを好機としてアフガンに侵攻を進めたという意見がありましたが、あの9・11の犠牲が利用されたものであったとすれば許しがたい行為であると思います(9・11陰謀説が本当だとすれば最も許せない行為ですが)。いつか本当にブッシュが裁かれる日が来るのかとても気になります」(男子)

「ブッシュ一族とビンラディン一族は昔から仲が良かったらしいですね。お互いの利益のために9・11テロを作り上げたそうです。本当なのでしょうか。9・11をきっかけに軍事費が拡大して、ブッシュ父の持つ100余りの軍事関連企業はウハウハ――ていうのが真相なんですかねえ」(男子)

「民衆法廷によって、しっかりと考えてもらうきっかけとしては、とても良いと思いました。何の法的な拘束力もないため、あまり意味を感じることはできませんが、皆の意識を変えるきっかけとなることにおいて大きな意味があると思います」(女子)

戸田コメント 民衆法廷は拘束力がないからこそ大きな意味があるとも言える。もし拘束力があれば、「リンチだ」と言いがかりをつける人が出てくる(それにも一理ある)だろう。権力法廷でもICJ(国際司法裁判所)には拘束力がないが、誰もICJには意味がないとは言わない。ただしICJに拘束力を持たせる方向に進むべきだし、米国や日本はICC(国際刑事裁判所)を批准すべきだろう。ところで沖縄の平和団体・自然保護団体が日米の平和団体・環境団体の支援を受けて米国の権力法廷で米国政府に勝ったことは実に画期的である。「ジュゴンがペンタゴンに勝った」のである。サンフランシスコ連邦地裁で2008年1月24日に「沖縄ジュゴン対ゲイツ長官」で原告ジュゴンが勝訴した(提訴のときは「沖縄ジュゴン対ラムズフェルド長官」であったが、国防長官は更迭)。ジュゴンはしゃべれないので人間が代理人となる「自然の権利」訴訟。米国の法廷での自然の権利訴訟には珍しく、絶滅危惧種法(ESA)ではなく歴史保存法(NHPA)によるものであった(日本でもジュゴンは環境省の絶滅危惧種であるとともに文部科学省の天然記念物)。朝日新聞2008年1月27日の特集「原告ジュゴン 私を助けて」を参照。もちろん高裁、最高裁でペンタゴンが逆転勝訴する可能性は十分にある。平和運動は権力法廷での法廷闘争、民衆法廷による問題提起、出版物、映像資料、インターネット、署名、デモ、国際連携などあらゆる手段を用いている。ところで日本のふつうの裁判は常に拘束力があるのだろうか。2004年に水俣病関西訴訟の最高裁判決が出たが、環境省は昭和52年判断条件を見直そうとしない。他方、帝銀事件の平沢被告は最高裁で死刑が確定したのちも歴代法務大臣が死刑執行を決断できず、90歳を過ぎる高齢で獄死した。誤判、冤罪に間違いない(別の真犯人がいる)と思われるので、刑死(絞首刑)しなかったことは「不幸中の幸い」であった。このように裁判に拘束力がない場合にも、不当な場合と結果的に正当な場合があるので、世の中はややこしいものである。

「子供のケンカより大人のケンカの方がこわい」という少女の言葉が印象的でした」(女子)

「被告人がいない裁判というのが成り立つものなのかなと思いました。有罪判決が出て、インタビューに応えていた人たちは本当に嬉しそうだったので、そんなにブッシュを悪だと思っていたのだなと思いました」(女子)

戸田コメント 民衆法廷の被告人が欠席するのはやむをえない。米国政府、英国政府、日本政府などが、自分たちが正しいということに自信があるのなら、民衆法廷から逃げ回らずに出席して反論すべきだろう。自信がないに違いない。

「劣化ウラン弾の被害があれほどだとは知らなかった。ウラン238の半減期は45億年だということに驚いた。ブッシュ大統領が行ったことなど、ニュースだけでは偏った内容しかわからないことがわかった」(女子)

「ブッシュのような大統領を責めることもできるが、皆が皆、ブッシュを批判しているわけではない。もしそうなら初めからこのような戦争になることはなかった。裁くならブッシュだけでなくアメリカ政府すべてを裁くべきである」(男子)

戸田コメント 民衆法廷はニュールンベルク裁判、東京裁判、ICCなどを念頭においているので個人を被告としている。ところでブッシュ(子)政権になってから急に多くの人が「米国政府がおかしい」と言い出すのもおかしい。歴代大統領も似たようなことをやってきた。トルーマン(原爆投下)、アイゼンハワー(イランのモサデク民主政権を転覆、グアテマラのアルベンス民主政権を転覆)、ケネディとジョンソン(ベトナム枯葉作戦)、ニクソン(チリのアジェンデ民主政権を転覆)、レーガン(グレナダ侵攻、ニカラグアへの国家テロでICJ敗訴)、ブッシュ父(パナマ侵攻)などの戦争犯罪や国家犯罪に対して、一部の平和運動を除くとみんな黙認してきたではないか。確かにブッシュの愚行は歴代大統領に比べると「わかりやすい」が。

「自分がパートナーを爆撃などで亡くしたらと考えると、とてもやりきれない気持になった。長年にわたって人々を苦しめる劣化ウランを許してはいけない」(男子)

「映像ではブッシュのみが裁かれていましたが、あの戦争はブッシュの独断によるものなのでしょうか。米国政府などには他に関与している人はいないのでしょうか。また死刑制度の話がありましたが、死刑のメリット、デメリットは何だと考えますか?」(男子)

戸田コメント もちろんブッシュの独断ではない。ブッシュに被告を代表させている。原爆投下を裁く民衆法廷では被告は2人の大統領を含む15人で、政治家、官僚、軍人だけでなく科学者まで含まれていた(判事は日本、米国、コスタリカ)。やり方は様々である。私見によれば死刑にメリットはない(死刑にメリットがあると解釈することは個人の自由なので、私は干渉しない)。デメリットは誤判(冤罪)で無実の人が刑死する場合があること、刑務官の過酷な労働(公務員の業務としての殺人)など。死刑廃止がグローバルスタンダード(1989年死刑廃止条約)となっているのは当然であり、日米の死刑存置は恥さらしである。犯人の死刑を望む遺族が確かに多いが、死刑制度の廃止を求める遺族もいるので、感情は人によってさまざまである。もし私の家族が殺されても、死刑制度が間違いであると認識しているので、犯人の死刑を望むことはありえない。私は戦争、軍需産業、死刑制度、煙草、原発などにメリットはないと認識している。もちろん「メリットがない」と「悪の権化である」は同義ではない(私は「悪の権化」という概念は基本的に使わない)。

「民衆法廷についての映像を初めて見ました。世界中からいろいろな人が来ていて、すごかったです。強く印象に残りました。また、小さな子供まで参加していて驚きました。劣化ウラン弾による被害の写真を見て、すさまじさがよくわかりました。戦争は無関係な人を巻き込み、何の解決にもならないと思いました。温暖化政策について日本がワーストだったこと(西日本新聞記事)が残念でした」(女子)

「戦争が残したものを私たちが私たちの手によって解決しなければいけないと思う。先進国はそれを先立ってやらなければいけない存在だ」(男子)

「民間でこのような活動をしていたとは知らなかった。こういった活動は世界中に広めていって、世界に訴えていくことができたらいいと思った」(男子)

「9・11事件やアフガニスタン侵略など、ブッシュ大統領には多くの批判がある。たしかにアメリカのような世界を統率する力を持つ国は必要だと思うが、世論に敏感になる必要があると思う」(男子)

「アメリカのブッシュ大統領は9・11テロの報復としてアフガニスタンやイラクを攻撃してしまったが、その周辺地域のことももっと考えるべきだったと思います」(男子)

「劣化ウラン弾の健康に対する影響は計り知れないものだと思った。特に子どもへの影響が大きいということでアメリカの責任は重大だと思う。ビデオでブッシュの責任問題についての裁判を行っていたが、ブッシュに対してではなく、まずはアメリカを支援した日本政府の責任について追及してほしいと思った。戦争で被害を受けるのは民間人だし、日本は憲法9条を遵守してほしいと思う」(男子)

戸田コメント このビデオはICTA(アフガニスタン民衆法廷)についてだが、ICTI(イラク民衆法廷)ではブッシュ、ブレア、小泉が被告となっている。

「ブッシュは悪いやつだと一方的に思っていたが、今日のビデオを見て、そうでもないなと思った」(男子)

「日本はイラクに何かされたわけではないのに、アメリカのいいなりになってイラクを攻撃するのはおかしいと思います」(男子)

「このような民衆法廷があることを初めて知りました。本物の被告人であるブッシュ大統領はもちろん来ていなかったけれども、その立場に立った人(アミカス・キュリエ)もいて、このような場をもうけていること自体、すごい動きだと思いました。しかし、アミカス・キュリエの意見は抽象的(?)なのか、あいまいなところが多いように思えたこと、検事団には情報収集などの努力も見られたのに、被告側にはそれがあまりなかったことと、この民衆法廷の結果などがきちんと生かされているのか疑問に思いました。自己満足に終わらないこと、味方だけの意見で片方からの視点のみにならないことなど大事かなと思います」(女子)

戸田コメント 抽象的になるのは、具体的に米国政府を擁護することが困難である以上、仕方ないことだろう。民衆法廷の結果は政府や市民に広く伝えるよう努力している。

「簡単に解決することではないけれど、私たちでも考えていける問題だと思った」(女子)

「授業の最後のほうの劣化ウランの被害を受けている子供たちの写真(注 次の本の写真を提示『戦火の爪あとに生きる 劣化ウラン弾とイラクの子どもたち』佐藤真紀、童話館出版、2006年)を見て、このような兵器を使う戦争は早くなくなってほしいと思った」(男子)

「イラク戦争が始まったときから、これは何のための戦争だろうと思っていましたが、今回ビデオを見て、改めてそれを感じました。様々な人が自分の思う立場に立って発言をしていましたが、私にはあの戦争はアメリカが自国の利益のために行っているようにしか思えませんでした。ブッシュ大統領を擁護するような発言をしている人がいましたが、私にはその考えは全くわかりません。9・11事件の真相も怪しいし、アメリカが犠牲になったとは思えないからです。どう見ても何もしていないイラクの人々が犠牲になっているように思います。あれ程の被害を出す戦争を指示したブッシュ大統領はやはり有罪であるように思いました」(男子)

戸田コメント 映像は主にアフガニスタン戦争についてのもの。確かにアフガニスタン戦争のイラク戦争も「米国の国益のため」という側面は強い(石油資源の確保、天然ガスパイプラインの有利な経路の確保、軍需産業の利益、復興建設産業の利益、石油決済でユーロの台頭を抑えドル基軸通貨の維持など)。『血と油-アメリカの石油獲得戦争』マイケル・クレア、柴田裕之訳、NHK出版2004年などを参照)。そしてアフガニスタン、イラクの罪なき市民が多数死傷した。ブッシュ擁護の発言は、本当に擁護しているのではなく、アミカス・キュリエ(法廷助言者)の役割として、ブッシュの意見を代弁してみせているもの。ブッシュが欠席するのでそうした役割が必要になる。

「ブッシュも戦争責任があると思います。イラク戦争など、様々な戦争が早くなくなればいいと思いました。劣化ウランなどとても危険です」(女子)

「気持ち悪いです。ブッシュ政権も、それを支持した米国民も、それを止めなかった世界も。犯罪者はアメリカだけではないのではないですか? 第二次世界大戦が終わって、冷戦が終わって、そんなにたっていないのに、また戦争。この世界は過去から何も学ばないのですか」(女子)

戸田コメント ICTI(イラク民衆法廷)ではブッシュ、ブレア、小泉が被告となっている。米英日いずれも民主主義国であるから、それぞれの有権者も責任を問われていると言える。

「今までの話を聞いていると、ブッシュ政権の行為は明らかに犯罪のように思える。中央アジアのパイプライン欲しさにこの戦争を始めたのだとしたら本当に人間なのかと疑いたくなる。アメリカこそ、戦争の実体、兵器の残酷さを数字ではなく現実のものとして知るべきである」(男子)

戸田コメント 中央アジアから海に向かうパイプラインは、イランに有利な経路、ロシアに有利な経路、米国に有利な経路(というよりもロシアとイランに不利な経路)がある。アフガニスタンを通る経路は米国に有利である。史上最も残虐な兵器は依然として原爆である。原爆が犯罪でないのなら劣化ウラン弾もクラスター爆弾も犯罪でないことになる。東京裁判で原爆を裁くことは政治的に不可能であったが(米国はすでに超大国になっていた)、裁き残した禍根は大きい。だから、原爆を裁く民衆法廷で原爆投下が犯罪である(共同謀議と実行犯の有罪)ことを再確認した意味は大きい。

「アフガニスタン戦争においてブッシュ大統領は有罪か無罪かという内容の民衆法廷が行われていることを、今日初めて知った。ブッシュは「アメリカがテロリストに立ち向かっているのは正義のためだ」と主張しているが、アフガニスタンやイラクでは、劣化ウラン兵器によって子供たちが深刻な被害を受けたり、民間人の誤爆、被抑留者に対する虐待などが起きており、正義とは何かと疑問を持ちたくなる事実がある。日本はアメリカと同盟国であり、自衛隊派遣を行っている。しかしこれに異を唱える人々もたくさんいる。国民一人一人がどのように考え、何を選択するかが重要だと思った」(男子)

「劣化ウラン弾の威力は長崎、広島の放射能の1万倍だといわれていて、しかも成長期の子供たちの体をあんな風にしてしまうなんて、本当にひどいと思いました。アミカス・キュリエは、ブッシュの罪をこのような形で認めるわけにはいかないと言っていたけれど、たくさんの要因が絡んで起こった戦争であったとしても、亡くなった人やけがをした人々の命の重さを考えることをしないで、議論はできないと思った」(女子)

戸田コメント 威力が1万倍なのではない。威力(破壊力)は原爆の方がもちろん大きい。熱線と爆風が大きいから。琉大教授が言うのは、放射能汚染が原子数の単純計算で劣化ウランのほうが1万倍ということである(原爆がウランあるいはプルトニウム20kg、劣化ウラン兵器の使用量が200トンだとすれば割り算で1万倍)。劣化ウラン弾の熱線、爆風は原爆よりずっと小さく、通常兵器並みである。

「たとえブッシュが本気で自分を正義だと考えているとしても、民衆を苦しめ、非人道的行為を推進しているからには、そこに罪がないと考えるほうが難しいと思います。今回のような民衆法廷でブッシュの罪について言及するのはもちろん大切なのでしょうが、それがどのくらい効果があるのか、現状を考えてもあやしいと思います。やはり、アメリカの好き勝手が許されている国家の力関係をなんとか改善していくことが必要だと感じました」(男子)

戸田コメント 性急に大きな効果を求めるならブッシュと同じ。市民運動は微力を積み重ねて長期的に大きな効果を持つ。民衆法廷の効果を恐れているから米国政府とフランス政府は民衆法廷にいやがらせをした(米国憲法でもフランス憲法でも言論の自由が明記されているので、因縁をつけていやがらせするのは楽な仕事ではない)。何もしなければ微力ではなく無力である。権力法廷で闘うこと(前述のようにジュゴンがペンタゴンに勝った)と民衆法廷は相互補完的であり、どちらも不可欠である。

「米国側の人がビデオで「大切なのはブッシュ大統領を裁くことではなく、お互いが理解しあい、戦争やテロをなくすこと」と言っていました。確かにそうかもしれないけど、私は、ブッシュ大統領は戦争犯罪者として裁かれるべきであると思います」(女子)

戸田コメント アミカス・キュリエは「米国側の人」ではない。法廷助言者としてブッシュの見解を代弁してみせているのである。

「アフガニスタン国際戦犯民衆法廷で被告人ブッシュは侵略の罪、民間人への攻撃に対して有罪が与えられた。ただ被告側の意見、ブッシュはテロリストをなくすために戦っているという意見を聞いた時、私は一方的にブッシュが悪いと決めつけるのも間違いではないのかと感じた。この法廷で判決が述べられましたが、それはブッシュへと伝えられ何かしら影響を及ぼすことになったのですか?」(男子)

戸田コメント 米国政府にはもちろん伝えられた。ブッシュへの影響はたぶんないが、世論には多少とも影響があり、長期的には将来の(2009年1月以降の)米国政府にも影響するだろう。民衆法廷は一方的に決めつけないためにアミカス・キュリエの役割を設定している。

「判決で、ブッシュは3つの罪で有罪となりました。しかし、この結果がブッシュにどれほど影響があるのか、疑問です。現に、これまでも戦争反対と訴え続ける人々がいながらも巧みな言葉を用いて戦争を正当化してきたという現実があるからです」(女子)

戸田コメント ブッシュへの影響はほとんどないが、将来の米国政府に影響を与えると思う

「ブッシュ大統領がアフガニスタンにしたことは、とても許しがたいことだと思いました。ウランが人体にどれだけ影響を及ぼすかを彼は知っていると思うので、確信犯だと思いました。そして、日本もアメリカにくっついて支援しているのは原爆を唯一受けた国として、おかしいと思います。日本の役割として、アメリカの攻撃をやめさせることがあると思いました」(女子)

戸田コメント もちろんその通りであるが、自民党の見解は1957年の岸信介内閣以来「自衛のための核武装は合憲」というものであり、また米国政府を常に支持することが自民党の方針である。その自民党に多くの国民が投票している。しかし小選挙区制があるので、自民党は得票率の割に議席が多く、日米同盟に反対する社民党、共産党は得票率の割に議席が少ない。

「イラク戦争においてブッシュ大統領はビデオのように有罪であると思う。大量破壊兵器を保持しているという思い込みだけで多くの民間人を殺し、民間施設を破壊したことがどうして無罪になるだろうか。ブッシュ大統領は自分の非を認めていない」(男子)

戸田コメント ビデオはICTI(イラク法廷)ではなくICTA(アフガニスタン法廷)のものである。もちろんICTIでもブッシュは有罪になった。

「劣化ウランが人体に及ぼす悪影響はまさに恐怖であると思った。中でも子供への影響が大きく、アメリカ政府の責任は計り知れないものであると思う。また、アメリカを支援していた日本政府にも責任があると思う。日本はアメリカのやることは何でも支援するのだろうか? しっかりと今までの経験をふまえて、考えてほしいと思う」(男子)

「今回のビデオで初めてイラク国際戦犯民衆法廷(注 ビデオはアフガン法廷、配布プリントはイラク法廷なので混同した受講生がだいぶいたみたいだ)の存在を知った。内容的に充実しており、とても興味深いものだった。特にアメリカのブッシュ大統領被告を有罪とする検事団の主張が的を射ており、とても説得力のあるものだった。侵略の罪、戦争犯罪の罪など、まさにアメリカは非人道的な罪を犯しているのだ。罪のない民間人を巻き込んだ劣化ウラン弾、コンテナによる捕虜の移動など、とても許せるものではない。アミカス・キュリエも正義という言葉を何回も口にしたが、罪なき一般人の人生を踏みにじる行為のどこに正義があるのか。個人的に言えばアミカス・キュリエも一緒に裁いてほしい」

戸田コメント これはアミカス・キュリエへの誤解である。彼らはブッシュを擁護しているわけではなく、法廷に対してブッシュの意見を解説しているのである。しかし学生の責任ではない。アミカス・キュリエは初耳の人にとっては難解であり、60歳をすぎた平和運動、被爆者運動のベテランでさえ、はじめて映像を見たり民衆法廷を傍聴したりすると、「アミカス・キュリエがわからない」と言うのである。しかし、被告が間違いなく欠席する以上、アミカス・キュリエは不可欠である。

「ビデオを見て、このような戦争反対、世界平和に関する会議が行われていることは、とても良いことだと思う。アフガニスタンへの攻撃、劣化ウラン弾、9・11事件、などについて、多くの証言があり、実際にどれほどの被害が出ているのか、改めて知ることができた。会議の中ではブッシュ大統領の罪について有罪か無罪か議論されていた。判決は「有罪」であった。私もこの判決に賛成である。大きな被害が出ることは容易に予想されたのに、攻撃を実行させたブッシュ大統領には罪があると思う」(女子)

「どの国も戦争犯罪を起こした経験はあると思うけれど、それを過去におかした過ちを反省してそこから学ばなければいけないと思いました。米国の正義とはどこにあるのだろう。難しい問題だと感じました。イラクの子供たちの絵はとても印象深いものでした。世界各国の人たちが集まって行われた民衆法廷のビデオは、いろんな人の考えが聞けて良かったです」(女子)

戸田コメント 確かにこれまで軍事大国で戦争犯罪をしなかったところはない(米、露、英、仏、独、日など)。戦争犯罪の不処罰が目立つのは米国(原爆投下、枯葉作戦、都市無差別爆撃、劣化ウラン兵器など)だろう。

「イラク戦争の劣化ウラン弾の悲惨さについて改めて知った」(男子)

「ブッシュのイラク戦争に対する非難は前から言われているが、今回の映像を見ると、やはり戦争犯罪人としてのイメージが強くなり、あれだけの現状を見せつければ、もう言い逃れはできないと思う。このまま、これを見逃してしまうと、全ての戦争や犯罪を黙認してしまうことになるので、それだけは絶対にやめてほしいと感じた」(男子)

戸田コメント 映像の大半はアフガニスタン戦争のもので、一部劣化ウランについてはイラクのもの。イラクの子供の白血病などの大半は湾岸戦争の後遺症であろう。潜伏期があるので、アフガン戦争の劣化ウランの影響はそろそろ出始めるころ。イラク戦争の劣化ウランの影響はもう少しすると出てくるだろう。

「アメリカが民間施設まで攻撃していたなんてひどいことだと思った。そして、子供たちが被害にあっているのはとてもかわいそうだ。何も責任がないのに辛い思いをするのはいつも弱者だと思う」(女子)

戸田コメント 米軍の民間施設攻撃は、第二次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、パナマ侵攻などでもやっている。

「日本で、ビデオで見たような会が行われているとは知りませんでした。また、アフガニスタンの奇形になってしまった子供たちの写真に心が痛みました。爆弾などの兵器すべてがなくなれば自分の国を守ることも、他の国を攻めることもないのにと思いました。前回のボノボの授業を思い出し、改めて人間は愚かだと思いました。きっと兵器がなくなっても別の形で人間は色々なものを求めて争いを続け、環境を破壊し、地球をダメにしてしまうんだろうなと感じました。」(女子)

戸田コメント 映像の多くはアフガニスタンだが、奇形の子供はイラクだと思う。

「自衛隊は確かにないほうがもちろんいいと思うのですが、国を守ろうとして自衛隊に入った人の意志はどうなるのでしょうか?」

戸田コメント 自然災害の被災地支援も国を守ることだと思う

「最近9・11の真相について興味がある。9・11は作られた事件であるのか? You Tubeでも多くの動画が出ている」(男子)

「私もブッシュ大統領は人道的問題があると思った」(男子)

「私もブッシュは戦争犯罪などについて有罪だと思います。ですが、こういうことが日本であっていたことは今まで知りませんでした。劣化ウラン弾の被害が予想以上だったので驚きました」(女子)

戸田コメント 日本のマスコミは民衆法廷に関心が薄いのであまり報道しない(欧米も同様らしい)。民衆法廷への理解が浅い日本社会でNHKスペシャルにいきなり女性国際戦犯法廷が出ようとしたので誹謗中傷を浴びた。

「イラクへの劣化ウラン弾の発射がブッシュによるものだとわかってびっくりした」(男子)

「今回見た裁判は有意義なものだと感じた。9・11についての裁判なのか、ブッシュの裁判なのか、両方なのか、はっきりしなかった。また、この裁判によって、刑を受けることはあるのか、というのも疑問に感じた。裁判官、検事はほとんど日本語で話していたので、日本向けの裁判なのだろうか。ブッシュを裁く裁判なら英語で裁判を進め、結論を“勧告”レベルにするのではなく、きちんとした刑をもって裁くべきだと感じた。」(女子)

戸田コメント 民衆法廷なのでもちろん刑を受けることはない。9・11自体は直接の主題ではないが、9・11を口実に戦争したことについては議論されている。インド人判事、米国人判事、英国人判事などはもちろん英語で話し、日本語に通訳された。この判決公判は日本なので日本語が基本であったが、マニラ公聴会などはもちろん英語が基本だった。判決文はもちろん和文と英文で作成され、米国大使館、米国政府には英文が送付された。民衆法廷は拘束力がないので、勧告形式となることが多い。

「アメリカのアフガニスタンに対する戦争はやはり帝国主義的なにおいがする。一刻も早く裁判が開かれることを願う」(男子)

戸田コメント ICCでアメリカの戦争を裁くのは当分無理なので(米国は批准していない)しばらくは民衆法廷でいくしかない。米国がICCを批准しないのは、米国人が被告になると困るからである。日本がICCを批准しないのは、米国追随を国策とするからだろう。英国は批准しているのでイラク戦争でブレアだけ裁くことは、理論上は可能だが、それはどこか変である。

「この公聴会に何の意味があるのですか? この判決に意味または拘束力はあるのですか? ブッシュしかり日本の隣の国々しかり、自分の支持率が落ちるたびに余所の国に粉かけるのはやめてほしいですね」(男子)

戸田コメント 民衆法廷は拘束力がないことにむしろ意味がある。事実を法に照らして犯罪を明らかにできる。ICCは拘束力があるので、米国はいやがって批准せず、裁判ができない。ICJは国連の裁判なのに拘束力がないので米国は敗訴しても痛痒を感じなかった。民衆法廷は自己満足ではない。積み重なると国際世論に影響を与える。

「ビデオで見た民衆法廷は、もう何回も行われているようですが、結果はすべて有罪なのでしょうか? 一瞬の爆撃で精神を病み、一生寝たきりで心に傷が残るであろう少女の目が強く印象に残りました」(女子)

戸田コメント ICTA(アフガン)とICTI(イラク)に同じ判事もいたと思うが、大半は交代している。これまでの民衆法廷は、ベトナム戦争も湾岸戦争もアフガン戦争もイラク戦争も原爆投下も従軍慰安婦もいずれも「被告(米国や日本の国家指導者)有罪」である。従軍慰安婦では「裕仁天皇有罪」が右翼と自民党右派を激怒させた。有罪の見通しのあるテーマが民衆法廷の対象になるのが普通である。

「このビデオを見ていると、ブッシュがヒトラーの再来のように思えてきた。独裁とは違うが、身勝手で残酷な手法は通じるものがある。科学技術が当時より著しく成長しているために規模も内容も随分と異なるが、もしもヒトラーがブッシュの立場にいたら、似たようなことを行うだろう。それに問題提起する今回の裁判だったが、言論というものの強さと弱さ、両方を感じずにはいられなかった。うまくプレゼンすれば「ペンは剣よりも強し」の通りになるが、しかしペンは剣よりたやすく折れるもので、無理して赤十字を攻撃しようと思えばできてしまう。条約の力は偉大だが所詮は人間が紙切れに偉大な価値をおいているだけである。もちろんそうするよりほかないのだが、字の読めない大統領が早く降りないことには、混乱はまだまだ続いてしまうだろう」(男子)

戸田コメント 確かに米国にはファシズムの到来を心配する人がいる。デモクラシーはプルトクラシー(plutocracy、パーキンスの表現ではcorporatocracy)になってしまった。誰かペンで赤十字を攻撃した?

「法律上でブッシュの有罪だとわかったが、現実的には何の意味を持っていますか?」(男子)

戸田コメント 多くの人がブッシュ有罪を理解することが重要である(国際世論の喚起)

「民衆法廷で裁判して有罪か無罪か法律上で認められるか?」(女子)

戸田コメント もちろん拘束力はないが、自己満足ではない。

「今回の講義でビデオを通じてアフガニスタン侵略戦争に関して勉強しました。いくら理由があっても戦争の勃発を許すことはできない。ブッシュ大統領は平和に対する罪、人道に対する罪など有罪を裁定するべきだと思います」(女子)

「今日のビデオを見てブッシュ大統領は有罪と感じました。そして世界で行う平和活動は大きな意味を持っています」(男子)

 

 

トップページに戻る

 

inserted by FC2 system