環境科学概論B 廃棄物問題 2008年度前期(小野、武政、戸田、赤渕)

2008年6月9日 6月16日改訂

 

授業内容と予定

1.有害廃棄物の越境移動1 中国への電子ごみ 6月9日

2.有害廃棄物の越境移動2 南アジアへの船舶解体 6月16

3.放射性廃棄物 6月23

 

第1回 6月9日

 

配布資料 なし

配布プリント 出席確認と感想の用紙

映像資料提示 Basel Action NetworkBAN)とSilicon Valley Toxics 

CoalitionSVTC)共同制作(2002年)の化学物質問題市民研究会による日本語

版DVD『危害の輸出 アジアで処分されるハイテクごみ』(23分)を映写した。

★この映像は米国の市民団体が米国市民向けにつくったので米国企業を中心に出てくるが、下記ENVIROASIAの引用にもあるように、広東省Guiyu(貴嶼鎮)には三菱、東芝など日本製パソコン廃棄物の部品も搬入されている。

 

資料提示装置で以下を説明

中国広東省Guiyu(貴嶼鎮)の電子ごみ(パソコン、携帯電話などの廃棄物)リサイクルについて

Environmental Health Perspectives誌(米国)に2007年に掲載された中国の医学者による貴嶼鎮の子供たちの血中鉛濃度上昇についての論文の内容解説

ENVIROASIA(日中韓環境情報)などのサイトに掲載された「電子ごみ」情報の解説

SVTCのサイトに掲載された台湾台南市近郊の電子ごみ処理についての記事の解説

有害廃棄物の越境移動に関するバーゼル条約の解説

BANSVTC、化学物質問題市民研究会のサイトの紹介

 

第2回 6月●日

 

映像資料提示 『海外ドキュメンタリー 大型船解体のかげで』NHK教育1999年9月10日 VHS 44

老朽化した大型船の解体 デンマークからインドへ アスベスト 有害廃棄物

 

第3回 6月●日

 

映像資料提示 『六ヶ所再処理工場 七夕大学習会』DVD(2007年)から原発推進派宮川氏の講演20分と原発反対派小出氏の講演20分を聞き比べる。

放射性廃棄物 直接処分方式と再処理方式 全量再処理路線 高レベル放射性廃棄物最終処分場の選定問題(対馬も候補地の1つ)

 

●ネット情報 ENVIROASIA

 

ENVIROASIA 日中韓環境情報サイト

 

 http://www.enviroasia.info/news/news_detail.php3/C04102702J

 

以下ENVIROASIAから引用

 

 環境ニュース > ごみ・リサイクル (中国 発)

 「電子ごみの町」、貴嶼を訪ねる

 

 広東省の東、練江の北岸に位置する貴嶼鎮は、毎年100万トンを超える電子廃棄物の回収・処理を行っており、世界最大の電子廃棄物分解基地といわれている。貴嶼鎮では、20の村落、300社以上の企業が電子廃棄物分解・加工にたずさわっている。そのうち、年処理量が2万トン以上の企業は10社、1000トン以上の企業は40社で、中にはピーク時の一日当たりの処理量が200トンに達するというところもある。

 貴嶼には、プラスチック・銅・鉄などの再生資源の加工・生産量が年間2万トンを超える大企業が4社ある。また5500戸近くの農家が、不定期にではあるが、手工業の工場を経営している。貴嶼鎮では80%以上の住民が電子廃棄物分解にたずさわっており、一人あたりの平均年収は1万5千元。これは全国鎮農民の平均年収の5倍にあたる。

 

■「ごみ」の中を歩く

 

 貴嶼は小さくて辺鄙な町である。広州から高速バスで5時間ほど行ったところに汕頭(スワトウ)があり、貴嶼はそこからさらに100里(5キロ)ほど離れたところにある。バスに乗り換えて国道324号線にそって延々と東に進み、狭い陳貴道路をぬけ、浮草橋を越えると、プラスチックが焦げたようなにおいが立ち込めてきた。「もう貴嶼だ」とのこと。車外には、「電子ごみ」をいっぱいに積んだ5トントラックがのろのろと進んでいった。

 貴嶼に入るとすぐに、積荷を下ろしているトラックを発見。積荷は不用になったパソコンのモニターだった。

 

 記者:「これらのモニターはどこから?」

 運送業者:「広州です。」

 記者:「一台にどれくらい積んでいますか?」

 運送業者:「8トン強です。」

 記者:「どれくらいのお金になりますか?」

 運送業者:「数万元でしょう。」

 

 この業者の話では、一日に少なくとも二台の、つまり16トン分の荷物が運ばれて来るそうだ。これらのモニターをよく見ると、三菱や東芝などの日本産のものと、タイ産のものがあった。三菱のモニターの裏側の表示を見ると、電圧は100ボルト(ヨーロッパやアメリカでは通常100ボルトを使用)と記載されており、明らかに輸入された不要電子ごみであった。

 まるで「ごみ」の中を歩くようだった。道路の両脇には廃棄物置き場、もしくはさまざまな看板を掲げた電気店がひしめいている。民家の周りに、電子廃棄物が解体されて積まれているところも少なくない。ハードディスク、ディスクドライブ、パソコンボディ、モニター、電話機、、、なんでもある。大小のトラックが電子廃棄物をのせてゆらゆらと通り過ぎていく。多くの家の前には小さな「作業場」があった-座って手作業で電子ごみを分解している労働者たちだ。

   ある商店の店主によると、町ではほとんどの家が「電子ごみ」分解の仕事を行っていて、多くは仕入れ、分解、加工から販売までの一貫経営であり、細かく分業し、安く大量生産しているらしい。

 川にも、道路にも面しておらず、地理的には非常に辺鄙なところにある貴嶼鎮がなぜ「世界から注目」の「電子ごみの町」になり得たのだろう?事情を調べたところ、次のようなことがわかった。貴嶼鎮は古くは農業を営んでいたのだが、くぼ地の中央に位置する深刻な冠水地区であったため、たびたび洪水や冠水に見舞われた。農作物も大きな影響を受け、農業生産にまったく保障がなかった。このためすでに解放前には、現地の大部分の農民は家族を養うために、周辺地区や遠い村落まで出て、ガチョウやアヒルの毛、豚の骨、不用になった銅やすず、プラスチック製品を仕入れてはそれぞれ転売し、手数料を得ていた。このようにして少しずつ不用物資回収の「専門集団」が作られていったのだ。

 80年代末から90年代初めになると、貴嶼は不用プラスチックや不用金属などの回収から不用電子機器の回収を行うようになり、規模は年々拡大、就労人数も増えていった。貴嶼はまたたく間に国内最大の電子廃棄物分解販売センターへと発展し、電子廃棄物回収の初歩的な産業チェーンが完成された。90年代初めには外地から不用電子機器を買い入れ、分解・加工を行うようになり、1997年から1999年には、分解量がピークに達し、「国内最大の不要電子機器分解基地」と呼ばれるようになったのである。

 

19世紀のテクノロジーで21世紀のごみを処理

 

 貴嶼の電子廃棄物処理方法を指して、「19世紀のテクノロジーで21世紀のごみを処理している。」と言う人がいる。調べたところ、中古市場に出回るものを除き、貴嶼に入るほとんどの電子廃棄物は絶えず分解されている。プラスチック部分は、小さな粒原料に加工されるか、またはプラスチック造花になる。不用になった電子回路にはCPUやコンデンサ、極管などさまざまな部品がついており、再利用される。

 回収してきた多くの電子廃棄物からは、分解のほかにも、燃焼・酸洗浄などの方法でメッキ、すずのはんだ、銅の骨組みなどの各種金属が取り出される。コードは皮をはがしたり炙ったりして、銅を取りだす。このような分解・燃焼・酸洗浄などの過程で産出された大量の有害物質が、環境に深刻な被害をもたらしている。

  ある回収地点では、女性たちが丸く囲んで座りながらコードの分解作業を行っていた。コードの周囲の皮を剥き、銅芯を取り出し、分けて積み上げるという作業だ。中の一人に話を聞いた。

 

 記者:「どこからいらっしゃいましたか?」

 女性:「四川省です。」

 記者:「日当はいくらですか?」

 女性:「16元です。多いときは20元もらいます。」

 記者:「毎日何時間働きますか?」

 女性:「9時間です。」

 記者:「このコードはどうして分けて置いておくのですか?」

 女性:「これから燃やすんです。」

 記者:「どこで?」

 女性:「部屋の中です。」

 

 部屋の中からは煙がもうもうと上がり、こげた臭いが鼻を刺した。話を聞くと、以前は部屋の外で燃やしていたのだが、最近管理が厳しくなり、多くの燃焼炉は遠い郊外へ移ったという。しかし中には大胆にも燃焼炉を部屋の中に移したところもあり、外の目を警戒して、番犬まで飼っているそうだ。

 メッキ燃焼の真実の姿を見届けるため、記者はタクシーに乗った。運転手の話では、貴嶼には大規模な回路板の燃焼工場があるらしく、何度も頼み込んで、そこまで連れて行ってもらえることになった。「ここだ。」と運転手。確かに、鼻を刺す臭いは立ち込めているものの、簡単な倉庫式の入り口と、中に積まれた電子廃棄物の山しか見えなかった。「中で燃やしているから、入ればわかる。」

 記者は車を降りるとまっすぐ入り口に向かった。中に入るとさまざまなパソコン部品がつまれていた。ハードディスクや、CDディスクドライブもある。運転手の話によれば、この密閉された焼却場には、数十人が働いているにもかかわらず、数台の扇風機といくつかの換気扇しかない。しかし収入はよいので、たとえ有毒ガスが人体に危害を与えるとしても、ここで働きたいという労働者は多いらしい。

 現地の人々にとって、分解・燃焼以上に儲かるのは、硫酸で電子回路を洗浄する、つまり、電子回路上のメッキを洗い流す仕事だ。この仕事は、大量の硫酸廃水を産出することから、汚染は深刻で、現在貴嶼では厳しく禁止されている。しかし僻地では、秘密裏に行われている酸洗浄も少なくない。

 長期にわたる深刻な汚染によって、貴嶼付近の川にはにごった黒い水が流れ、悪臭が漂う。このため、貴嶼では水がとても貴重だ。貴嶼の飲料水は全て周辺の鎮から買ってきたもので、貴嶼ではたびたび水を売る車に出くわす。

 貴嶼には、河南省、四川省、湖北省などから10万人近くの労働者が集まっている。ある調査では、一年以上働くこれら労働者の80%が、さまざまな病気にかかっているという。これら出稼ぎ労働者たちは、農村での過酷な生活から逃れるため、電子廃棄物のもたらす危害を承知の上で、健康を犠牲にしてでもリスクの高い仕事をするのだという。

 「ここには、若い女性は長い間いられません。特に燃焼炉にはね。長い間いると、子供を産めなくなってしまうから。」-河南の労働者は言う。「何人か女の子がやめていって、今は広州で別な仕事をしている。女の子たちはここでは一番出入りが激しくて、普通は短期間でやめていきます。」見ると、町に貼られている多くの求人広告には、「女子工員求む」の文字が書かれていた。

 

記事執筆、翻訳 /日付 2004-10-27 /筆者 黄 喬 

 

 以上ENVIROASIAから引用

 

Guiyu(ウィキペディア英語版)

 

http://en.wikipedia.org/wiki/Guiyu

Guiyu (Chinese: 屿; Hanyu Pinyin: Gùiyǔ)

 

●講義で紹介したEHP(米国)掲載論文

http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=1913570

 

Environmental Health Perspectives Volume 115, Number 7,pp. 11131117July 2007  

 

Elevated Blood Lead Levels of Children in Guiyu, an Electronic Waste Recycling Town

in China グイユの子供たちの血中鉛濃度の上昇

Xia Huo, Lin Peng, Xijin Xu, Liangkai Zheng, Bo Qiu, Zongli Qi, Bao Zhang, Dai Han,

and Zhongxian Piao Central Laboratory and the Key Immunopathology Laboratory of Guangdong Province, Shantou University Medical College, Shantou, China

 

グイユ(貴嶼鎮)で高率に見られた健康影響:skin damage皮膚疾患, headaches頭痛, vertigo目まい, nausea吐き気, chronic gastritis慢性胃炎, and gastric and duodenal ulcers,胃潰瘍および十二指腸潰瘍

 

●ウェブサイト

 

化学物質問題市民研究会 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

   バーゼル条約関係 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/basel.html

ENVIROASIA(日中韓環境情報サイト)日本語、中国語、コリア語

 http://www.enviroasia.info/top/index.php3?J

Basel Action Network;BAN(バーゼル条約行動ネットワーク) http://www.ban.org/

Silicon Valley Toxics CoalitionSVTC) http://www.etoxics.org/site/PageServer

●朝日新聞記事  日本から中国への公害輸出の事例  

1998426 朝刊 1面総合1059文字

  http://database.asahi.com/library2/main/start.php?loginSID=dc75624b3bbc507dcd6d889a166bcc84

 

ダイオキシン発生の恐れ 日本の廃電線、中国農村部で野焼き

 

 銅などを回収する「再生用原料」として日本から中国に大量輸出された廃電線の一部が、施設の整っていない浙江省の農村部などで「野焼き」処分されていることが、現地を訪れた複数の関係者らの証言から明らかになった。廃電線は燃やすとダイオキシンが大量に発生するとして、二十七日からスイス・ジュネーブで始まる「有害廃棄物の越境移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」の技術作業部会(TWG)でも、輸出を規制すべきかどうかが協議の対象とされている。しかし、同条約を所管する通産省、環境庁とも「中国国内でも適正な再生が行われているはずだ」と、野焼きの実態を把握していなかった。

 ポリ塩化ビニルやポリエチレンで被覆された廃電線は、老朽化による交換や工場の解体などで発生する。被覆電線回収業者四十五社からなる「電線リサイクル協議会」(東京都港区)の推計発生量は昨年で、年間約三十万トン。協議会の推計によると、輸出量は年間約七万二千トンで、中国向けが半分以上という。浙江省が特に多いほか、福建省、江蘇省、広東省などにも陸揚げされているという。

 中国政府は一九九六年夏ごろから、廃電線など「再生用原料」として輸入される品目について、輸入業者ごとに国家環境保護局が施設を検査したうえでライセンスを与える許可制をとり、野焼きについても規制を強めているという。

 しかし、今年三月中旬、再生事業を視察した関東地方の電線回収業者は、浙江省の農村地帯で、廃電線の野焼きを目撃したという。

 それによると、畑の遊休地を利用した五百平方メートルほどの敷地に、廃電線が一度に十―二十トンずつ運び込まれ、昼間は六―七人が被覆の樹脂をはぐ作業をしていたが、細すぎたり鉄で被覆されたりしているものは仕分けられ、夜のうちに野焼きされたという。

 バーゼル条約で輸出を規制する有害物質の範囲をより具体化させるため、条約加盟国の会議で、廃電線など様々な廃棄物を規制品目と対象外品目に分類し直す作業が進められている。

 通産省環境指導課は「エジプトやタイで野焼きの事例があるとは聞いていたが、中国では、銅、塩ビともに適正に再生利用されており、野焼きはされていないと聞いている」としている。また、環境庁海洋環境・廃棄物対策室は「野焼きが行われているとしたら問題だと思うが、実態は把握していない」としている。

   <野焼きとダイオキシン>

 廃棄物を野焼きなどの低温で燃やすと、ダイオキシン類が発生する。金属を含む破砕くずや廃電線は、特にダイオキシン類が大量発生しやすいとされる。

 

●朝日新聞記事 バーゼル条約と日本/フィリピンへ医療廃棄物

 

朝日新聞2000年3月28日4面 1655

http://database.asahi.com/library2/main/start.php?loginSID=7bd9f97d24cb6ac643515da4375e382a

 

バーゼル条約の完全批准急げ 志田早苗(論壇)

 

日本からフィリピンへ医療廃棄物を含む大量のごみが違法に輸出された事件は、国内で多発する廃棄物の不法投棄が海外へと拡大している実態を示している。

 今回の事件を受け、厚生省はごみの不正輸出に対して罰則を強化することにし、それを盛り込んだ廃棄物処理法改正案が二十一日、国会に提出された。しかし、それでもなお有害物質を含む廃棄物を合法的に輸出できる現状があることを見逃してはならない。

 先進国から途上国へ「排出」される廃棄物による環境破壊や人権侵害を止めるため起案されたバーゼル条約は、一九九二年に発効した。それ以前には廃棄物が国際間でどう流れているかを監視する仕組みさえなかったため、大きな前進には違いなかった。しかし条約締結時には「再生利用を目的とする」有害廃棄物の輸出を許したままだったため、その実態を知る途上国の多くは批准に消極的で、当時の締約国は六十五カ国にとどまった。

この状況が変わるのは、九四年の第二回締約国会議が、「経済協力開発機構(OECD)諸国から非OECD諸国への、再生利用目的も含めた有害廃棄物輸出を九七年末までに禁止する」必要性を訴える決議を全会一致で採択してからである。
 さらに九五年の第三回締約国会議では、前年の決議をふまえた条約改定決議が全会一致で採択され、改定条項が条約に組み込まれた。こうして、ようやく途上国への有害廃棄物輸出の全面禁止に向けた足がかりができた。

バーゼル条約改定決議の採択から五年。現在では締約国の数も百三十七カ国に増えた。条約だけでなく改定条項も批准した国は十七カ国になる。また、改定条項を批准しないまでも、多くのOECD諸国では国内法の整備を行っているといわれる。実態を伴った有害廃棄物の輸出禁止が始まったことは画期的な出来事であり歓迎すべき進歩といえる。

しかし日本の市民としては、世界の動向を喜んでばかりいられない。

 日本は、条約そのものは九三年に加盟してはいる。しかし、改定決議は最終的には賛成したものの最後まで抵抗し、いまだに改定条項を批准しないでいるからだ。

 改定条項を批准していないということは、日本の国内法は、海外へ有害廃棄物が流出することを止められないし、ごみ行政は海外への「ごみ捨て」を計算に入れたまま動いているという意味である。

 日本が改定条項を批准しない理由について、環境庁は「途上国が再生用の安価な原料を輸入して経済活動をすることを、先進国が妨げる権利はない」と説明している。しかし、再生名目で有害物質も輸出できてしまうのが現状である。排出者の手元を離れた廃棄物は「安き」へ流れ「弱き」へ向かう。条約の精神に従うならば、「再生用の安価な原料」と一緒に「汚染」まで輸出してしまう可能性は断つべきである。

 条約改定決議から五年、今回の違法輸出事件を機に、改定条項を批准するために必要な国内法整備について関係四省庁に問い合わせてみたところ、異口同音に「(批准を)検討したことがないので分からない」という答えが返ってきた。これは、今後も有害廃棄物を途上国に輸出すると明言したに等しい。

フィリピンへの廃棄物不法輸出事件は、国際社会に対して日本のゴミ行政の欠陥ぶりをさらしたというのに、それを改める気はさらさらないというわけだ。

廃棄物の押し付け先を確保することで帳じりを合わせようとする限り、処分場紛争や産業廃棄物の不法投棄はなくならない。排出者の責任を徹底的に強化しなければ、有害物質の排出削減など到底おぼつかない。有害廃棄物輸出の問題も、こんな国内の惨状と同一線上にある。

国際社会に対して信頼を回復するためには、まずは再生利用の名の下に途上国へ有害廃棄物を合法的に輸出する道を、日本が自ら封じなければならない。すなわち、バーゼル条約の改定条項をすみやかに批准して、締約国として責任を果たすという決意表明をすること、そして廃棄物排出の責任を厳しくすることが日本に求められている。

 (しだ・さなえ グリーンピース・ジャパン事務局長=投稿)

朝日新聞2000510日夕刊   社会面631

http://database.asahi.com/library2/main/start.php?loginSID=7bd9f97d24cb6ac643515da4375e382a

 

バーゼル法適用断念、容疑の社長に逮捕状 ニッソーの産廃不法輸出

 

栃木県小山市の産廃中間処理業者「ニッソー」が医療ごみを含む大量のごみをフィリピンに輸出していたとされる事件で、栃木、長野両県警の合同捜査本部は十日、医療廃棄物などの輸出入を規制するバーゼル国内法の初適用を断念し、産業廃棄物を不法輸出していたとする外為法違反(無承認輸出)などの疑いで、同社社長の伊東広美容疑者(五〇)=仙台市青葉区=の逮捕状を取った。全国に指名手配する。

 調べでは、伊東容疑者は一九九九年七月と十月の二回、九八年末から九九年七月までに関東地方など一都七県の二十二業者が同社に運び込んだ廃プラ、木くずなどの産廃約二千二百トンをコンテナに詰め、通産大臣の承認を得ずフィリピンに輸出した疑い。

 この事件は、大量の医療廃棄物を不法輸出した「国際的環境犯罪」とされ、通産省が告発。国が二億八千万円を投じてフィリピンからごみを回収、焼却した。

捜査本部は、告発に従って医療廃棄物など有害廃棄物の輸出入を規制するバーゼル国内法に基づいた外為法違反容疑での立件を目指した。

しかし、輸出ごみから押収した注射針など約千七百点を鑑定した結果、血液や薬品が付着するなど医療廃棄物と特定できるものの割合が小さかったため、「医療廃棄物を故意に混入したとはいえない」と判断、廃プラスチックなどの産業廃棄物を輸出した容疑での逮捕状請求にとどまった。

伊東容疑者は昨年十月ごろから所在がわからなくなっており、長野県警が廃棄物処理法違反容疑ですでに指名手配し、行方を追っている。

 

朝日新聞1999125日  社会面 462

http://database.asahi.com/library2/main/start.php?loginSID=7bd9f97d24cb6ac643515da4375e382a

 

栃木県が業者聴取へ フィリピンに船で医療廃棄物送る

 

使用済みの注射器など二千トンを超えるとみられる大量の医療廃棄物が日本からフィリピンに船で送られた問題で、栃木県はコンテナの送り主とされる同県小山市の産業廃棄物処理会社が、有害廃棄物の輸出入を規制するバーゼル条約や廃棄物処理法に違反している可能性もあるとして、同社の社長(四九)らから事情を聴くことにしている。

同県の産業廃棄物対策室などによると、送り主とされる会社の社長は、所在が分からないという。同社は産業廃棄物の中間処理などをしているが、昨年、小山市内などにプラスチックや紙くずを圧縮こん包したものを数千個、長期間放置したとして、県が撤去を指導。また、圧縮こん包の許可を受けていなかったことから、業務変更許可を得るよう県が指導し、いまは業務を停止している。

一方、長野県警は、長野県内の農地や山林への産業廃棄物の不法投棄事件で、社長の弟の同社工場長(四二)を十一月下旬、廃棄物処理法違反容疑で逮捕。社長も同事件にかかわっている容疑が持たれている。

厚生省は、事実関係の確認ができ次第、厳正な処置をとりたいとしている。

 

 

●船舶解体についての資料

 

船舶解体(ウィキペディア)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%B9%E8%88%B6%E8%A7%A3%E4%BD%93

 

船舶解体についてのILO報告(英文2000年)

Is there a decent way to break up ships(報告書)The Shipbreakers(ビデオ)

http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/papers/shpbreak/

 

船舶解体における人命のコスト(化学物質問題市民研究会2005年)グリーンピース報告の和訳

End of life shipsThe human cost of breaking ships

http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/05_12_14_shipbreaking.html

 

●フィリピンのセブ島における日本企業の船舶解体(1998年当時)

 

グーグルで「セブ島 船舶 解体」で検索すると1720件の情報が出てくる。

 

フィリピンのこどもたちの未来のための運動(CFFC)

http://www.geocities.jp/fujiwara_toshihide/index.html

→日本・フィリピン経済連携協定(JPEPA)問題

→アスベストの関税削減

→常石造船 セブ 廃船解体問題

ここに下記の情報がある。

 

(イ)常石造船 セブ 廃船解体問題 (フィリピンに限らない 開発途上国における船舶解体問題)

 

海外での廃船処理による公害等に関する質問主意書

提出日 平成101214日  提出者 加藤  修一君

答弁書 平成十一年一月二十二日

 

造船大国日本の船の解体責任と常石セブ造船問題  弁護士小島延夫

 

「フィリピン・セブ島開発と「公害輸出」(上・下)」諏訪勝(『法学セミナー』No.514,515 1997年)

「常石造船が公害輸出!?フィリピン・セブ島の海上で廃船解体」(諏訪勝)週刊金曜日 第168 憲法施行50周年 1997.4.25

「フィリピン・セブ島の廃船解体で」(諏訪勝)週刊金曜日 第221 化学物質の逆襲 1998.6.5

小島延夫弁護士による「常石セブ造船問題977月現地調査報告」(カラー写真、地図付き)があるので参照されたい。小島弁護士(公害輸出問題の第一人者)らのサイトは

環境問題を考える法律家のページ

http://www.asahi-net.or.jp/~KM7N-KJM/index.html

質問主意書(全文)と答弁書(別表4点を除く全文)を以下に引用する。

 

1998年に参議院で加藤修一参議院議員(公明党)が提出

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/144/syuh/s144014.htm

 

質問主意書

 

質問第一四号

海外での廃船処理による公害等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十年十二月十四日

加 藤 修 一   

       参議院議長 斎 藤 十 朗 殿

   海外での廃船処理による公害等に関する質問主意書

 現在、広島の造船会社(常石造船)が運輸省の「船舶解撤促進助成金」を受けてフィリピンで行っている船舶の解撤事業によると思われる、環境ホルモンの一種である有機スズ化合物によって海洋が汚染されているという実態が報告されている。この地域の海底の泥から検出されたTBT(トリブチルスズ)は、日本で検出された過去最高の数値の数十倍にも及ぶという。

 この件に関し以下質問する。

一、運輸省は当該問題についての環境汚染の実態調査をすべきだと思われるが、いかがか。

二、日本企業が海外で行っている船舶の解撤事業について、国別・港湾別に、船舶の総隻数、トン数、船籍、船年齢及び最終出航港を示されたい。

三、助成金に関して「環境基準」を条件づけるべきであると思われるが、政府の見解如何。

四、解撤される船舶内にはアスベスト、PCBを含む備品が存在すると思われるが、そのような船舶を解撤目的で国外に移動することはバーゼル条約に抵触すると思われる。政府の見解を示されたい。また、書類上、解撤目的になっていないものが、現地到着後即座に解体作業に移されることもある。この点の実態調査の必要性についても政府の見解を示されたい。

五、現在、多国間の貿易・投資が一段と進展していることから、本件を初めとして、我が国からの公害輸出という問題が深刻化しつつあるように見受けられる。この点を踏まえて、外為法の第二十三条第四項第二号の解釈において、このような環境的側面に配慮することが必要かと思われる。今後検討する予定はあるか。政府の見解を改めて問う。

  右質問する

 

政府による答弁書は下記の通り

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/144/touh/t144014.htm

 

答弁書

第百四十四回国会答弁書第一四号

内閣参質一四四第一四号

  平成十一年一月二十二日

内閣総理大臣 小 渕 恵 三   

       参議院議長 斎 藤 十 朗 殿

参議院議員加藤修一君提出海外での廃船処理による公害等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員加藤修一君提出海外での廃船処理による公害等に関する質問に対する答弁書

一について

 外国における環境汚染の実態調査については、当該国が自ら行うものであり、我が国が独自の判断によって行うものではないと考えている。

二について

 日本企業が船舶解撤促進助成金の交付を受けて海外において行った船舶の解撤事業について、解撤を行った場所ごとの隻数並びに解撤された船舶の総トン数、国籍、船齢及び最終の出港地は、別表のとおりである。

三について

 船舶の解撤事業を行う者が当該事業が行われる国の環境基準を遵守することは、船舶解撤促進助成金の交付に当たって環境基準の遵守を条件とするまでもなく、当然のことであると考える。

四について

 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(平成五年条約第七号。以下「バーゼル条約」という。)は、有害廃棄物等の国境を越える移動及びその処分の規制について国際的な枠組みを定め、これらの廃棄物によってもたらされる危険から人の健康及び環境を保護することを目的とするものである。

 アスベスト又はポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)を含む物質又は物体は、バーゼル条約の規制の対象となる「有害廃棄物」に該当し得るものである。一般に、アスベスト又はPCBを含む備品が存在する船舶が、解撤を目的として国境を越える移動がなされる場合で、当該備品の処分をも目的の一つとしている場合には、バーゼル条約の規定に従って、輸入国である締約国に対し当該移動の計画を通告し、その同意を得る等の手続をとる必要があると考える。

 また、解撤目的になっていないものが現地到着後即座に解体作業に移されることもあるとの御指摘に関しては、そのような事例の有無を含め実態の把握につき検討してまいりたい。

五について

 平成十年四月から施行している外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号。以下「外為法」という。)においては、内外資本取引等の一層の自由化のため、対外直接投資を原則として事後報告制としているが、一部の制限業種に属する事業に係るものについては事前届出制としている。具体的には、外為法第二十三条第一項の規定により、居住者は、対外直接投資のうち同条第四項第一号に掲げる「我が国経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼすことになる」事態を生じるおそれがあるもの又は同項第二号に掲げる「国際的な平和及び安全を損ない、又は公の秩序の維持を妨げることになる」事態を生じるおそれがあるものを行おうとするときは、あらかじめ、大蔵大臣に届け出なければならないこととされており、大蔵大臣は、当該対外直接投資が行われた場合には、同項各号に掲げるいずれかの事態を生じ、外為法の目的を達成することが困難になると認められるときに限り、当該対外直接投資の内容の変更又は中止を勧告することができることとされている。このうち、同項第二号に掲げる事態を生じるおそれがある対外直接投資は、外国為替に関する省令(昭和五十五年大蔵省令第四十四号)第二十一条第三号から第五号までに掲げる制限業種に属する事業に係る対外直接投資とされており、同令に掲げられている業種は、現在、武器の製造業、武器製造関連設備の製造業及び麻薬等の製造業に限られている。したがって、現行法令上、海外に進出する日本企業が当該進出先の国で行う事業により環境問題を引き起こすおそれがあるとの観点からは制限業種は定められていない。

 一般に、企業が事業活動を行う場合において環境保全に留意することは重要であり、これは海外に進出する場合であっても同様と考えられるが、外為法に基づく環境保全を図るための対外直接投資の規制については、(1)環境保全については、国際的な取組に配慮しつつも、世界全地域に多数の投資家が存在する以上、投資国側での規制は実効性上限界があり、基本的には、当該進出先国の環境規制によることが適当と考えられること、(2)外為法の基本的な考え方は内外資本取引等の自由化を原則としており、外為法に基づく規制は、その法目的に照らして必要最小限の範囲とすることが適当と考えられること等から慎重に判断する必要があるものと考える。

 

 

なお別表1/4、別表2/4、別表3/4、別表4/4は省略するので、上記サイト(答弁書)を見られたい。

 

★佐久間真一氏の論説(1999年と思われる)を以下に引用する。

http://www.yasuco.com/sakuma1.html

 

造船王国日本と環境対策

                 佐久間真一(進出企業問題を考える会 事務局長)

 

  日本は世界一の造船王国であることは広く知られていますが、日本で造られた船がどこで、どのようにスクラップされているかご存知でしょうか。船舶を解体することを「解撤」といいますが、この解撤事業は作業自身が「労災の百貨店」といわれるほど危険である上に、廃油やアスベスト、PCB、有機スズ系塗料などによる深刻な海洋汚染が避けられないこともあって、日本で造られた船も含め世界の船舶解撤量の9割以上がインドやバングラディシュ、パキスタンなどの途上国で行われています。

 

  日本の造船会社によるセブ島での海洋汚染

 

  進出企業問題を考える会では、この間、日本消費者連盟、全造船労組(関東地協)、全国労働安全衛生センターなどと協力して、広島県に本社のある常石セブ造船のフィリピン・セブ島での船舶解撤事業によるものと思われる海洋汚染問題に取り組んでいます。977月の第二次現地調査、9911月の第三次現地調査で、常石造船の現地合弁企業の操業海域周辺の汚泥や巻貝から高濃度の有機スズ化合物やPCBが検出され、地元の住民達が危惧している海洋汚染が進んでいることが判明しました。船舶にはこれまで、船底に貝などの生物が付着しないように殺生物性の有機スズ系塗料が広く使われてきました。この塗料には「環境ホルモン」物質の一つである猛毒の有機スズ化合物(TBT)が含まれていて、それが海に溶けだして海生生物に深刻な異変をもたらしています。有機スズ系塗料は、今は日本国内では生産・使用が禁止されていますが、海外ではまだ日系企業も含め生産・使用されています。現在スクラップされている船舶は規制前に造られたものですから、この有機スズ系塗料が使われています。また、日本国内でも船舶の修繕による有機スズ汚染が危惧されています。

 

  日本の「公害輸出」と市民の責任

 

  日本の造船会社の海外でのCには運輸省から助成金が交付されていて、これまでにフィリピン、ベトナム、中国での解撤事業に13億円以上が支払われています。フィリピン・セブ島の住民達は、私たち日本の市民に「日本の官民一体の公害輸出を止めさせて!」と訴えています。私たちは、常石造船のセブ島での船舶解撤事業による海洋汚染問題の解決をはかるとともに、海外事業を含む日本の造船・船舶解撤事業の環境保全対策の改善を求めるために、市民団体、労働組合、弁護士グループ、研究者などが協力しあって、日本国内でこれまで問題とされてこなかった「船舶解撤事業と環境問題」について調査研究し、造船業界や運輸省、環境庁など関係省庁への働きかけを行っています。省庁交渉や国会での取り上げの際には、当会の会員でもある竹村泰子参議院議員にいつもお世話になっています。私たち市民のキャンペーンも多少影響したと自負していますが、日本政府及び国際海事機関(IMO)、バーゼル条約締約国会議においてもようやく「船舶解撤事業と環境問題」への取り組みが始まっています。私たちは、造船王国・海洋国の市民として、引き続きこの問題に取り組んでいきますので、関心のある方はご連絡ください。

 

  <進出企業問題を考える会の連絡先>

204-0022 東京都清瀬市松山1-21-12 カトリック清瀬教会気付

Tel0424-91-0104 Fax0424-91-1744  E-mailrc21@asahi-net.email.ne.jp

 

以上引用。なお進出企業問題を考える会(ウェブサイトはなさそうであるし、2008年現在この会が存在するかどうかも不明)の連絡先は当時(1999年)のものである。また、船舶解体のことを業界用語で「船舶解撤」という。

 

 

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