「研究計画」作成例 戸田清 2006年4月6日作成 2009年12月7日改訂

 

@仮題  日本のプルトニウム政策

 

A問題意識

日本は先進国のなかで唯一、原発の増設を国策としている。経済産業省は地球温暖化対策のために原発増設が必要だと主張しており、環境省も同調している(朝日新聞20071021日「低炭素社会」)。

日本の環境法令には諸外国にない特異性がある。環境基本法体系の主要法律である環境基本法、環境影響評価法(環境アセス法)、循環型社会形成推進基本法、廃棄物処理法のなかに「放射能を適用除外」とする条項があり、放射能汚染は原子力基本法の対象となっている。すなわち、放射能汚染以外の環境問題を環境省が所管し、放射能汚染を文部科学省が所管することになる。また環境基本計画のなかにエネルギー政策を組み込むことができない(吉村・水野編,1999;戸田,2003)。

日本は先進国のなかで唯一、「プルトニウム路線」をとっている(伴,2006)。すなわち、高速増殖炉、軽水炉でのプルサーマル運転、核燃料再処理を国策として推進している。ウラン濃縮と核燃料再処理を推進しているのは、核兵器保有国と日本だけである。米国も商業的再処理からは撤退している。日本のプルトニウム路線に対しては、必要性、安全性、経済性、核拡散の観点から疑問を投げかける人も多い。原発を肯定する人のなかにも、プルトニウム路線に批判的な人は少なくない。プルトニウムの大量蓄積(特に高速増殖炉で出来る兵器級)は、「潜在的核武装」になる。

 

B論文で言いたいこと

 日本のプルトニウム路線の是非、原発推進の是非について、必要性、安全性、経済性、核拡散の観点から国民的な議論(もちろん在日外国人も討論に参加する)がなされるべきである。

 

C章立て

 はじめに、第1章、第2章、第3章、第4章、第5章、おわりに

 

D先行研究の状況

 社会学では、長谷川(環境社会学)、八木(労働社会学)、吉岡(科学社会学)などの研究がある(八木編,1989;長谷川,1996舩橋晴俊,長谷川公一,飯島伸子編,1998吉岡,1999)。原発推進派の社会学者では田中がいる(田中,1982)。理系では多くの研究がある(たとえば、小出,1992;高木,1991)。市民運動の文献も多い(たとえば、大庭,2005;中島,1988;西尾,2006)。また、ジャーナリズムの文献も多い(たとえば、明石,1997;七沢,2005)。

 

D参考文献(卒業論文で5点以上、修士論文で10点以上が最低限の目安)

明石昇二郎,1997,『敦賀湾原発銀座 「悪性リンパ腫」多発地帯の恐怖』技術と人間。

大庭里美,2005,『核拡散と原発』南方新社。

小出裕章,1992,『放射能汚染の現実を超えて』北斗出版。

高木仁三郎,1991,『下北半島六ヶ所村核燃料サイクル施設批判』七つ森書館。

田中靖政,1982,『原子力の社会学』電力新報社。

鳥井弘之,2007,『どう見る、どう考える、放射性廃棄物』エネルギーフォーラム。推進派の代表的文献。

中島哲演,1988,『原発銀座・若狭から』光雲社。

七沢潔,2005,『東海村臨界事故への道』岩波書店。

西尾漠,2006,『新版 原発を考える50話』岩波書店,岩波ジュニア新書。

長谷川公一,1996,『脱原子力社会の選択』新曜社。

伴英幸,2006,『原子力政策大綱批判』七つ森書館。

舩橋晴俊・長谷川公一・飯島伸子編,1998,『巨大地域開発の構想と帰結 : むつ小川原開発と核燃料サイクル施設』東京大学出版会。

八木正編,1989,『原発は差別で動く』明石書店。

吉岡斉,1999,『原子力の社会史』朝日新聞社。

吉村良一・水野武夫編,1999,『環境法入門』法律文化社。

 

●下記4点はゼミの必読文献

小笠原喜康,2009,『新版 大学生のためのレポート・論文術』講談社現代新書/戸田清,1994,『環境的公正を求めて』新曜社。/戸田清,2003,『環境学と平和学』新泉社/戸田清,2009,
『環境正義と平和』法律文化社。

卒業論文、修士論文の分量の目安は400字換算で50200枚程度。

 

 

 

 

戸田ゼミ 卒業論文・修士論文の題目一覧


2006年7月7日 2008年5月2日改訂

 

●卒業論文

2002年3月卒業

「原発広報活動についての考察」岡野真由美(1998年入学)

「科学と差別−優生学による生命の支配」田口谷明(1998年入学)

2003年3月卒業

「日本とデンマークにおける環境に配慮した共同体の比較分析」大関はるか(1998年入学)

「食品表示についての考察」荒木英智(1999年入学)

「BSEが社会に与えた影響と今後の展望」高津弘明(1999年入学)fumas

「リサイクル政策についての考察」竹下綾(1999年入学)

2003年9月卒業

「ジェンダー等の視点から日本社会を考える」上野朋子(1998年入学)fumas

「シンプル&スローライフのすすめ」木村真二(1998年入学)

2004年3月卒業

「公共事業の販売戦略」金本祐輔(1999年入学)

「犯罪被害の構造」入内島俊介(2000年入学)

「アメリカの軍事外交」西川直介(2000年入学)

「ファストフードとスローフード」春田倫子(2000年入学)

2005年3月卒業

「戦後日本における「食」の変容」菅原聖子(2000年入学)

「食品の安全性についての考察」戸高研二(2000年入学)

「幼少期の虐待におけるその影響」溝口昇(2000年入学)

「構造調整プログラムと世界銀行・IMFの問題点」奥園涼(2001年入学)

「食品の容器包装」日下部裕美子(2001年入学)

「食品被害の構造」森本隆(2001年入学)

2005年9月卒業

「市民運動における社会変革の可能性−戦後日本社会の平和運動を対象として」吉満友樹(2001年入学)

2006年3月卒業

「バーチャルウォーター−隠れた日本の水消費」福田裕子(2002年入学)

2007年3月卒業

「地球温暖化問題と環境運動 NGOの果たすべき役割」山本哲也(2000年入学)

「ジェンダーがつくる日本社会」大内山広樹(2002年入学)

21世紀の戦争と平和学」小永吉幸太郎(2003年入学)

「中国の三峡ダムについて」呉涛(2003年入学)

「中国のゴミ問題とゴミ処理」張延頡(2003年入学)

2008年3月卒業

「核廃棄物政策についての考察」囲瑠美子 2003年入学)

「格差社会の日米比較」山藤雄(2003年入学)

2008年9月卒業

「人間の生活と捕鯨文化のかかわりについての考察」早崎真実(2004年入学)

2009年3月卒業

日本の新左翼の「内ゲバ」についての考察」岡崎寛典(2004年入学)

「貧困
削減に向けた債務帳消しについての考察」谷孝矩(2005年入学)

「温暖化対策についての批判的考察」
張芸帆(2005年入学)

「ネットいじめについての考察」
中里辰弥(2003年入学)

「お産と医療についての考察」
橋本沙代子(2004年入学)

「フォルケホイスコーレ International People's College デンマークのもうひとつの教育」
 松浦和代(2003年入学)

「新聞報道と市民社会」山下あゆみ(2005年入学)  


北島利起(2005年入学)

大井三郎(2006年入学)

九万田健司(2006年入学)

陶山翔平(2006年入学)

田尻春香(2006年入学)

濱崎俊介(2006年入学)

騰飛(2006年入学)

方莉媛(2006年入学)

王利萍 (2006年入学)

上村貴志 (2007年入学)

中村龍也 (2007年入学)

西原和宏 (2007年入学)

竹田津秀輔(2009年編入学)

●修士論文

2005年3月修了

「食品安全行政に関する考察」高津弘明(2003年入学)

2006年3月修了

「グローバリゼーションと社会的不平等」西川直介(2004年入学)

2006年9月修了

「日本におけるフェアトレードの現状と課題」内田陽子(2002年入学)

「エイズ問題の現状と課題」川嵜治代(2004年入学)

2007年3月修了

「日本のエコライフとその社会的条件の関係についての考察」奥園涼(2005年入学)

 

●博士後期課程

タクル・バハドー・パウデル・セトリ(ネパール) 200710月入学

 

卒論報告会(パワーポイントで発表)のスライドは、発表時間5分を前提として1530枚が目安(40枚は多すぎる)







左が戸田

2008年2月14日の懇親会

トップページに戻る

inserted by FC2 system