「米国問題」を考える(前半)

戸田清(長崎大学環境科学部)  20071129日 200812月2日改訂

初出 「『米国問題』、米国のシェア、『9・11事件の謎』を考える」『社会運動』2008年1月号(334号)5063頁(市民セクター政策機構)および「アメリカ的生活様式を考える」総合人間学会編『総合人間学2 自然と人間の破壊に抗して』(学文社2008年)3749頁 に加筆

 

「ベトナムを石器時代に戻してやる。」カ-チス・ルメイ将軍、1964年5月

Tell the Vietnamese they've got to draw in their horns or we're going to bomb them back into the Stone Age.

http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/eo20020930hs.htm

 

「(東京大空襲などを念頭に)もしわれわれが負けていたら、私は戦争犯罪人として裁かれていただろう。幸いなことに私は勝者の方に属していた。」カ-チス・ルメイ将軍

「もしアメリカが戦争に負けていたらルメイ将軍も私も戦争犯罪者だった。」ロバート・マクナマラ、2003

    松尾文夫『銃を持つ民主主義』(小学館2004年)3233

McNamara said in the movie "The Fog of War" about LeMay and the air raids, that if they lost the war they would have been on trial for war crimes.

http://www.gottsu-iiyan.ca/gib/index.php?blog=1&title=tokyo_war_crimes_tribunal_part_1a&more=1&c=1&tb=1&pb=1

      注 1945年1月にハンセル司令官(日本軍の重慶無差別爆撃に反発していた)が更迭され、後任に「低高度での無差別爆撃推進」のルメイ将軍が着任したことが、東京大空襲(一晩で10万人死亡)、大阪大空襲などをもたらした。1964年に佐藤栄作内閣は航空自衛隊育成への貢献を讃えてルメイに勲一等旭日大綬章を贈るという「自虐」ぶりを示している。

 

 地球社会における米国人(特にその支配層、財界)のわがままな振る舞いが引き起こす迷惑のことが、しばしば「米国問題」と呼ばれるようになってきた(第1章)。世界の軍事、政治、文化、経済における米国のプレゼンス(特にソ連崩壊以降)を考えるならば、世界の資源・環境、平和、民主主義、人権などの問題を考えるうえで、「米国問題」をいかに認識し、向き合い、解決策をさぐるかは、21世紀のきわめて重要な課題のひとつであろう。

 本稿では、「米国問題」を象徴する3人の有名人の言葉を紹介し(第2章)、世界の資源消費などに占める米国のシェアを検討し(第3章)、さらに「9・11事件」が大量浪費社会を維持するための軍事活動の口実をつくるための謀略ではないかという仮説(ブッシュ政権共犯説)を紹介したい(第4章)。

 

第1章   「米国問題」という言葉

 

 第2次大戦以降、米国は世界システムの覇権国となった。米国文化を代表するものに、生活様式、石油文明、軍事活動などがある。

米国的生活様式は、「大量採取、大量生産、大量消費、大量廃棄」(見田,199668)を特徴としており、これを守るために嘘をついたり、戦争をしたりということにもなりかねない。「米国式石油文明」が得意とするのは、「大量生産、高速移動、大量破壊」などであり、やや苦手とするのは、「適量生産、適度な移動、対話」などであると思う。「世界における米国のシェア」を示す15の数字が、いわゆる「米国問題」の背景をさぐるときの重要な手がかりのひとつとなろう。

先進国の過剰消費という意味では「西欧問題」や「日本問題」もあるが、「米国問題」が一番典型的でわかりやすい。沖縄の基地問題の本質もやはり「米国問題」および「日本問題」であろう(吉田,2007などを参照)。日米両政府は普天間基地の代替と称して「北限のジュゴンの生息地」である辺野古に新基地を建設しようとしているが、これも実は米国が1966年(沖縄の本土復帰前)から待ち望んでいたものであった(西山,2007143)。

私の知る範囲では、5人の学者・知識人が「米国問題」「アメリカ問題」(American problem)という言葉を用いた(米本,1998;土佐,2006;西谷,2006243;菅,2007:9;太田,200768270)。米国問題とは、米国人、特にその支配層の身勝手さが世界を振り回すという問題である。「米国問題への適切な対応」は、21世紀の人類にとって大きな課題のひとつであろう。ブッシュ政権の「米国問題」としては、京都議定書離脱、国連人種差別問題会議からの途中退席、「使える核兵器」政策、ABM条約離脱、「テロとの戦争」、グアンタナモ基地やアブグレイブ刑務所での人権問題などがあげられる。なお、鈴木透はパナマ侵攻、湾岸戦争、アフガン侵攻、イラク戦争などは「リンチ型戦争」であると指摘し、「二十一世紀の世界の行方は、アメリカが変われるかどうかにかかっている。アメリカ自身が抱える暴力の悪循環を断ち切り、『より完全なる統合』を実現するうえでも、また、国際社会の平和を維持するうえでも、『アメリカが変わることがよいことなのだ』というメッセージを、国際社会はアメリカ社会に送り続けるべきなのである。」と述べている(鈴木,2006246

太田昌国(民族問題・南北問題研究家)の「米国問題」についての発言を引用しておこう。

「世界のどの地域であれ、政治・経済・軍事上の大問題が起こるたびに、それを解決するための交渉や話し合いの場に、必ずといっていいほど米国が登場するのは、この国に倫理的な高みがあるからではない。自分の言葉をしか信じず、周囲を理解しようとしない自己陶酔主義のこの国に備わってしまった、世界の命運を左右するほどの巨大な力のゆえに、である。したがって、これを仮に「米国問題」と名づけるならば、米国外に住む私たちに課せられるのは、米国への強度の依存体制からいかに脱却するかという課題であることを、私たちは自覚している(太田,2007270)。

私たちは、資源浪費・環境汚染・自然破壊・戦争をもたらす「米国的生活様式」に代わるものを作り出していかねばならないだろう。

 

第2章「米国問題」を象徴する発言

 

第1節   スメドレー・バトラー(1935年)フランクリン・ローズヴェルト政権時代

 

スメドレー・バトラー(18811940)は、米国海兵隊の少将であったが、退役後の著書『War Is A Racket(戦争はいかがわしい商売)』(1935年の著書である。Butler and   Parfrey2003,を参照)のなかで次のように述べた。これは有名な発言(注1)で、ウィキペディア(Wikipedia)の英語版の「スメドレー・バトラー」の項目(後掲)でも引用されており、またジョエル・アンドレアスの『戦争中毒』などいくつかの文献で引用されている(Andreas2002:8〜9;Andreas200220021213;新原,2007118119)。

"I spent 33 years and four months in active military

service and during that period I spent most of my time as a high class

muscle man for Big Business, for Wall Street and the bankers. In short,

I was a racketeer, a gangster for capitalism. I helped make Mexico and

especially Tampico safe for American oil interests in 1914. I helped

make Haiti and Cuba a decent place for the National City Bank boys to

collect revenues in. I helped in the raping of half a dozen Central

American republics for the benefit of Wall Street. I helped purify

Nicaragua for the International Banking House of Brown Brothers in

1902-1912. I brought light to the Dominican Republic for the American

sugar interests in 1916. I helped make Honduras right for the American

fruit companies in 1903. In China in 1927 I helped see to it that

Standard Oil went on its way unmolested. Looking back on it, I might

have given Al Capone a few hints. The best he could do was to operate

his racket in three districts. I operated on three continents."

出典 http://en.wikipedia.org/wiki/Smedley_Butler

 

「私は、33年と4ヶ月間、わが国のもっとも敏捷な軍事力――海兵隊の一員として現役任務を経験した。そして、少尉から少将まですべての任官の階級を勤めた。そしてこの期間、ほとんどの日々を、大企業とウォール街と銀行家のための、高級雇われ暴力団員として過ごした。端的に言えば、私は資本主義のためのゆすり屋だった。当時から自分が、ゆすり屋のまさしく一翼ではないかと疑ったものだが、いまではそれを確信するに至った。職業軍人のだれでもがそうであるように、軍務を離れるまでは、私も決して独自の考え方は持っていなかった。上官の命令に従っているあいだは、私の知的能力はずっと一時停止状態にあった。これは、軍務に服しているすべての者に典型的なことである。そんなわけで、1914年にはアメリカの石油権益のために、メキシコ、とくにタンピコを安全にする手伝いをした。ハイチやキューバを、ナショナル・シティ銀行の連中が税金を徴収するのにふさわしい場所にするのを助けた。ウォール街のために、10あまりの中央アメリカの半分の国々を略奪するのを助けた。ゆすりの経歴は長い。190912年にはブラウン・ブラザース国際金融会社のために、ニカラグアの浄化を助けた。1916年に、アメリカの砂糖の利権のためにドミニカ共和国に火をつけた。1903年には、アメリカの果物会社のためにホンジュラスを〝申し分のない〟ものにした。中国では1927年に、スタンダード石油が妨げられずにやれるようにするのを助けた。これらの年月のあいだ中、舞台裏の連中がよく言うように、粋な悪事にありついた。そして、叙勲と勲章と昇級で酬いられた。ふりかえって見るとき、私だってアル・カポネ(新原訳注=米国の禁酒法時代、酒の密売で巨額の利益を手にしたギャング)に、1つや2つくらいのヒントなら与えられたのではないかという気がする。アル・カポネにできたのは、せいぜい市内の3つの区域でゆすりを働くことだった。われわれ海兵隊は、3つの大陸で働いたのだ。」(新原,2007118119

バトラーの言葉を、歴史年表であとづけておこう。

1903年 米海兵隊がホンジュラスの革命に干渉

190609年 キューバの選挙の際に米海兵隊が上陸

1907年 ホンジュラスの対ニカラグア戦争中に米海兵隊が上陸

1908年 パナマの選挙論争に米海兵隊が干渉

1910年 米海兵隊がニカラグアのブルーフィールズとコリントに上陸

1911年 ホンジュラスの内戦中、米国権益保護される

1912年 キューバのハバナの米国権益が保護される

1912年 パナマで過熱した選挙中、米海兵隊が上陸

1912年 ホンジュラスで米海兵隊が米国経済権益保護

191233年 米国が20年にわかるニカラグア占領、ゲリラとの戦い、爆撃も

1913年 ドミニカ共和国でサントドミンゴをめぐる反乱分子と米軍が戦う

1914年 ハイチの反乱後19年にわたる占領。爆撃も行う。

191418年 米国がメキシコの民族主義に干渉するため同国領土と領海で活動

191624年 米海兵隊が8年にわたりドミニカ共和国を占領

191733年 キューバを米軍が占領、経済保護領

191820年 パナマで選挙後の不穏な状況のなか、米軍が警察任務

1919年 ホンジュラスの選挙キャンペーン中、米海兵隊が上陸

1920年 グアテマラの労働組合に対し米軍が2週間にわたる干渉

192734年 米海兵隊が中国に駐留

Sarder and Davies20022003135138Williams2007130136156159から作成)

 

第2節   ジョージ・ケナン(1948年)トルーマン政権時代

 

 ジョージ・フロスト・ケナン(19042005)は米国のエリート外交官、後に国際政治学者であり、実に長生きであった。晩年には核軍拡に警鐘を鳴らす『核の迷妄』(1982年)を書いた。「米国的生活様式」と軍事政策の関連を示唆するものとしてよく引用されるのは、国務省政策企画部長であったジョージ・ケナンの非公開メモ(1948年に書かれたが、有権者に情報開示されたのは1974年)のなかの次の1節である(注1)。1948年とは、ソ連核実験(1949年)の前年であり、米英の一部では、「ソ連が核武装する前に予防戦争で叩け」という議論が高まっていた(Easlea19831988)。

Furthermore, we have about 50% of the world's wealth but only 6.3% of its population. This disparity is particularly great as between ourselves and the peoples of Asia. In this situation, we cannot fail to be the object of envy and resentment. Our real task in the coming period is to devise a pattern of relationships which will permit us to maintain this position of disparity without positive detriment to our national security. To do so, we will have to dispense with all sentimentality and day-dreaming; and our attention will have to be concentrated everywhere on our immediate national objectives. We need not deceive ourselves that we can afford today the luxury of altruism and world-benefaction.(中略)

We should dispense with the aspiration to "be liked" or to be regarded as the repository of a high-minded international altruism. We should stop putting ourselves in the position of being our brothers' keeper and refrain from offering moral and ideological advice. We should cease to talk about vague and--for the Far East--unreal objectives such as human rights, the raising of the living standards, and democratization. The day is not far off when we are going to have to deal in straight power concepts. The less we are then hampered by idealistic slogans, the better.

出典Memo PPS23 by George Kennan

http://en.wikisource.org/wiki/Memo_PPS23_by_George_Kennan

アメリカは世界の富の50%(2001年に31%)を手にしていながら、人口は世界の6・3%(2001年に5・0%)を占めるにすぎない。これではかならず羨望と反発の的になる。今後われわれにとって最大の課題は、このような格差を維持しつつ、それがアメリカの国益を損なうことのないような国際関係を築くことだろう。それにはあらゆる感傷や夢想を拭い去り、さしあたっての国益追求に専念しなければならない。博愛主義や世界に慈善をほどこすといった贅沢な観念は、われわれを欺くものだ。人権、生活水準の向上、民主化などのあいまいで非現実的な目標は論外である。遠からず、むき出しの力で事に当たらねばならないときがくる(一部抄訳、西山,2003212;戸田,20032627Alexander1996:1)。

第3節   マデリン・オルブライト(1996年)クリントン政権時代

マデリン・コーベル・オルブライト(1937〜  )は、女性初の国務長官になった(コリン・パウエルが黒人初、コンドリーザ・ライスが女性2人目で黒人女性初の国務長官)。クリントン政権の米国国連大使在職時の1996年5月12日、テレビリポーターのレズリー・スタールに、経済制裁のせいでイラクの子どもが50万人死亡したという国連の推計について尋ねられたとき、オルブライトは、「難しい選択」であったが、「代償として払う値打ちはあった」と答えている(注2)。これは有名な発言で、ウィリアム・ブルムやジョン・ピルジャーの著書にも引用されている(Blum2002200349Pilger2002200481)。

QuestionWe have heard that a half million children have diedI meanthat’s more children than died in HiroshimaAnd -and you knowis the price worth it

AnswerI think this is a very hard choicebut the pricewe think the price is worth it

質問 (イラクで)50万人の子どもたちが死亡したと聞いています。その数は、ヒロシマの原爆で死んだ子供たちよりも多い。この(経済制裁の)代償は、払うに値するものだったのでしょうか?

回答 それはとても難しい選択だったが、代償は……、われわれは、代償は払うに値したと思う。

(戸田,2003146Blum2002200381

第3章   世界社会に占める米国のプレゼンス

 

「世界に占める米国のシェア」を19の数字でみてみよう(表1)。

 

表1 世界に占める米国のシェア

 

世界に占める米国のシェア(%)

日本のシェア(%)

世界銀行の総裁ポスト

100

  0(ただしアジア開発銀行では100

広告費

 65

 12(世界2位)

戦略核兵器

 53

違法麻薬の消費

 50

軍事費

 45

  4(世界5位)

銃保有数

 33

武器輸出額

 31

紙消費

 29

  9(世界2位)

国内総生産(GDP)

 28

9(世界2位)

自動車保有台数

 26

  8(世界2位)

石油消費

 25

  7(世界3位)

電力消費

 25

  7(世界2位)

牛肉消費

 24

  1.5

原子力発電所の数

 24

 13(世界3位)

炭酸ガス排出

 22

  5(世界4位)

刑務所等収容人口

 22

  2

世界銀行・IMFの投票権

 17

  7(世界2位)

喫煙関連疾患の死者

  9(中国に次いで世界2位)

  2

人口

  5(世界3位)

  2(世界10位)

出典 戸田清「アメリカ的生活様式を考える」総合人間学会編『総合人間学2 自然と人間の破壊に抗して』(学文社2008年)、グローバル・エクスチェンジのサイトhttp://www.globalexchange.org/campaigns/wbimf/faq.html 等から作成。

炭酸ガス排出総量は米国、中国、ロシア、日本、インド、ドイツ、英国、カナダ、イタリアと韓国の順(2003年)

1人あたり炭酸ガス排出量は米国、ブルネイ、オーストラリア、カナダ、シンガポール、ロシア、ドイツ、英国、日本、韓国の順(2003年)

http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h18/html/vk0602010000.html#4_0_5_1

自動車については長谷川公一ほか『社会学』(有斐閣2007年)244

石油についてはUFJ総合研究所。石油消費は米国、中国、日本、ドイツ、ロシア、インド、韓国、カナダ、フランス、メキシコの順

http://www.murc.jp/report/research/china/2005/20050926.pdf

軍事費についてはSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)。米国、英国、フランス、中国、日本、ドイツ、ロシア、イタリア、サウジアラビア、インドの順

http://www.sipri.org/contents/milap/milex/mex_trends.html

日本の牛肉消費は畜産ZOO鑑

http://zookan.lin.go.jp/kototen/nikuusi/n423_3.htm

日本はフードマイレージ世界一? 食糧・飼料輸入世界一? 面積あたり原発世界一(地震大国であるが)

人口は中国、インド、米国、インドネシア、ブラジル、パキスタン、バングラデシュ、ロシア、ナイジェリア、日本、メキシコの順(以上が人口1億以上)

喫煙疾患死者世界一は中国

    (以上は表1の説明)

第1節   世界銀行の総裁ポスト

 

世界銀行の総裁ポストは米国が独占している。ウィキペディア「世界銀行」の「総裁」の項目を下記に転載する。

 

総裁

暗黙の了解として、国際通貨基金(IMF)の専務理事(managing director)は欧州出身者が選出され、また世界銀行歴代総裁(president)はすべて米国出身者である。副総裁には日本人も選ばれたことがある。

1946年~1946年:ユージン・メイアー

1947年~1949年:ジョン・ジェイ・マクロイ

1949年~1963年:ユージン・ロバート・ブラック

1963年~1968年:ジョージ・デビット・ウッズ

1968年~1981年:ロバート・マクナマラ (元フォード社長、元国防長官=ケネディ政権で)

1981年~1986年:アルデン・ウィンシップ・クローセン

1986年~1991年:バーバー・コナブル

1991年~1995年:ルイス・トンプソン・プレストン

1995年~2005年:ジェームズ・ウォルフェンソン (元投資銀行家)

2005年~2007年:ポール・ウォルフォウィッツ (元国防副長官=ブッシュ子政権で)

2007年~:ロバート・ゼーリック (元国務副長官=ブッシュ子政権で)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E9%8A%80%E8%A1%8C

( )内の元職は戸田の注

 なお、IMF(国際通貨基金)の事務局長は欧州人が、アジア開発銀行の総裁ポストは日本人が独占している。

 

第2節  広告費

 米国のジャーナリストで市民運動家のドラファンは、1997年の時点で米国の広告費は世界の3分の2を占める1870億ドルであり、2位は日本の12%だと述べている(Draffan200310)。1870億ドルといえば、当時(クリントン政権2期目)の年間軍事費の半分を超える巨額である。とりあえず米国のシェアを65%とみておこう。

 

第3節 戦略核兵器

 

 日本原水禁のサイトには、国連安保理常任理事国(米、露、英、仏、中)および非公式核保有国(インド、パキスタン、イスラエル)の戦略核弾頭数、非戦略核弾頭数、合計弾頭数の表が出ている。なお北朝鮮は9番目の核兵器保有国になろうとしていた。

http://www.gensuikin.org/57/1-7.htm#top

 非公式3カ国については、合計弾頭数の推計(インド3035、パキスタン2448、イスラエル200)のみで、戦略核兵器と非戦略核兵器(戦術核兵器)の内訳はわからない。大型核兵器(戦略核兵器)はいわゆる核抑止のためであり、実戦に使われるおそれがあるのは小型(戦術核)のほうであろう。ブッシュ政権が使うかもしれないと示唆しているのも、地下貫通型の小型核兵器(小型の戦術核)である。実はロシアは戦術核が多いので、合計数も米国より多い。戦略核はもちろん米国が最多である。戦略核は5カ国合計で12246発、米国は6480発であるから、米国のシェアは53%になる。

 核兵器実戦使用の「前科」があるのは、もちろん米国だけである。広島・長崎への原爆投下が戦争犯罪であることは言うまでもない(戸田,2006b)。米国政府は、朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東戦争、台湾問題などで、核脅迫(核兵器使用の威嚇)・核戦争準備を30回以上行ってきた(Gerson2007200744;大友・常磐野,199092)。

2002年の「核体制見直し(NPR)」は、従来の不使用を前提とする核抑止から、使える小型核兵器の開発へと転換する方向を示している。2002年8月の長崎市平和宣言で、伊藤一長市長(2007年4月に殺害された)は、テロ対策を口実ないし契機とするロシアとの弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約破棄、ミサイル防衛(MD)計画、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准拒否、水爆の起爆装置の製造再開、新しい世代の小型核兵器の開発、核による先制攻撃の可能性表明、ロシアとの戦略核兵器削減条約における取り外した核弾頭の再配備条項などに言及して、「国際社会の核兵器廃絶への努力に逆行しています。こうした一連の米国政府の独断的な行動を、私たちは断じて許すことはできません」と名指しで批判した。

 

第4節 違法麻薬消費

 

 麻薬の生産を見ると、ヘロインはアフガニスタンなどが多く、コカインはコロンビアなどが多い。消費では欧米が多い。ドイツのジャーナリスト、マチアス・ブレッカースは、米国が世界の違法麻薬消費の50%を占めると述べている(Bröckers200692)。

 

第5節 軍事費

 

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2005年の米国の軍事費は約4800億ドルで、世界の48%であった。1人当たりの軍事費支出は1位が米国の1604ドル、2位がイスラエルの1430ドルであった(宮田,2006219;新原,200768)。またSIPRIのサイトによると、2006年の米国の軍事費は5287億ドルで世界の46%、1人当たりの軍事費は1756ドルである。2006年の軍事費上位10カ国は、米国、英国、フランス、中国、日本、ドイツ、ロシア、イタリア、サウジアラビア、インドである。

http://www.sipri.org/contents/milap/milex/mex_trends.html

2002年の米国の軍事費は3990億ドルで、2位以下の20カ国の合計を上回っていた(高橋,200444)。米国の軍事費の推移を見ると、レーガン時代に急増、ブッシュ(父)時代にやや減少、クリントン時代に減少、ブッシュ(子)時代にまた急増という経過になっている(戸田,200387)。世界192カ国の軍事費の約半分を米国が占めるので、大変なものである。米軍は、全方位支配(full spectrum dominance)を追求している(Bacevich2002)。すなわち、地球全体と宇宙(大気圏外)を米軍の軍管区に分けて各軍(太平洋軍、欧州軍、中央軍、北方軍、南方軍、宇宙軍)を配置している(梅林,200265)。イラク、アフガニスタン、イラン、スーダンなどは中央軍の管轄である。宇宙軍(スペース・コマンド)は、人工衛星の軍事利用、宇宙への兵器配備、さらには宇宙への原発設置まで視野に入れている。土星探査衛星(カッシーニ)や冥王星探査衛星(ニュー・ホライズンズ)へのプルトニウム電池使用も米軍の意向と無関係ではない。そして米軍は、制海権、制空権に加えて、「制宇宙権」を志向している(藤岡,2004)。ミサイル防衛も「宇宙の軍事化」の一環であり、日本もその下請けに組み込まれている(PAC3の配備など)。

もちろん最近十数年の「米国の戦争」が外国の資金に支えられているのも事実であり(日本が米国系施設から石油を購入して米艦船に無料給油してきたのも象徴的な事例である)、中国や日本による米国国債の大量購入が米国の財政・経済を支えていることもよく知られている。

良心的な米国人による批判としては、ブルム(元国務省職員)やアンドレアス(社会学者・漫画家)の著作が有益であろう(Blum20022003Andreas20022002)。

 

第6節 銃保有数

 

 伊藤千尋(朝日新聞記者)は、米国で「世界の銃の3分の1を占める2億丁以上の銃が出回り、全世帯の半分近くが自宅に銃を持っている。」と述べている(伊藤,2007)。とりあえず33%とみておこう。

第7節  武器輸出

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の統計によると、20032007年の世界の武器輸出に占める米国のシェアは31%である(表2)。第6位は中国がほぼ常連である。すなわち、世界の武器輸出6大国とは、国連安保理常任理事国(5カ国)およびドイツである。環境先進国ドイツは、武器輸出大国でもある。また、武器輸入大国日本も輸出国別の上位4カ国にはまだ入っていない。憲法第9条のおかげであろう。

表2 主要通常兵器の5大輸出国とその主要輸入国(20032007年)

 

輸出国

世界の武器輸出に占めるシェア(%)

輸出先国の数

主要輸入国(当該輸出国の輸出に占める比率、%)

米国

31

71

韓国(12)、イスラエル(12)、アラブ首長国連邦(9)、ギリシャ(8)

ロシア

25

45

中国(45)、インド(22)、ベネズエラ(5)、アルジェリア(4)

ドイツ

10

49

トルコ(15)、ギリシャ(14)、南アフリカ(12)、オーストラリア(9)

フランス

 9

43

アラブ首長国連邦(41)、ギリシャ(12)、サウジアラビア(9)、シンガポール(7)

英国

 4

38

米国(17)、ルーマニア(9)、チリ(9)、インド(8)

資料はSIPRI Arms Transfer Databaseによる。http://armstrade,sipri.org/

出典 SIPRI Yearbook 2008p294

http://www.sipri.org/contents/armstrad/YB08%20Arms%20Transfers%20chapter%207.pdf

 

第8節 紙消費

 

 古紙ネットのサイトを見ると、2001年の時点で国民1人あたりの紙消費量(年間)は、世界平均が52kg、米国が307kg、日本が243kg、インドが5kgであった。数字の出典は日本製紙連合会などである。

http://homepage2.nifty.com/koshi-net/sub/seisansyouhi.htm

当時の世界人口を60億人、米国の人口を29000万人と仮定して単純計算すると、米国のシェアは約29%である。また、財団法人古紙再生促進センターのサイトによると、2004年の米国は312kg2005年は301kgだから、「減少傾向」のようだ。

http://www.prpc.or.jp/statistics/sekainotoukei.pdf

同サイトによると、1人あたり消費量は2005年の時点でルクセンブルク、ベルギー、フィンランドのほうが米国より多い。欧州の「小国」は福祉国家で貧困層が少なく、米国は貧富の格差(小林,2006)が大きいため、平均値は小さくなるのかもしれない。

 

第9節 国内総生産

 

 進藤栄一(国際政治学者)は、世界の国民総生産(GNP)に占める日米のシェアは、1951年には米国が45%、日本が1%であり、1980年代中葉には米国が27%、日本が15%であったと述べている(進藤,2001140)。河辺一郎(国連研究者)は、世界の国内総生産(GDP)に占める米国のシェアが2005年には32%であったと述べている(河辺,2006172)。また藤井厳喜(評論家)は、世界のGDPに占める米国のシェアは、第2次大戦直後には65%であったが、2002年には32%になったと指摘する(藤井,2007234)。GDPの新しい数字では、EU(27カ国合計)31%、米国28%、日本11%とのことである(井上ひさし長崎講演、20071216日)。

 

10 自動車保有台数

 

 自動車の脱石油化のために、欧米はバイオ燃料を推進している(米国はバイオエタノール、欧州はバイオディーゼルが中心)。そのため従来は食料にまわされていた穀物がバイオ燃料の原料にまわされ、穀物価格が高騰している。食品価格の高騰のため、メキシコなどで低所得層の抗議デモが起こっている。レスター・ブラウン(アースポリシー研究所所長)は朝日新聞のインタビュー(聞き手・田中美保)のなかで、「8億人の車所有者と20億人の貧困層が同じ食糧を巡って争う構図だ。」と指摘する(『朝日新聞』2007529日)。1995年の時点で米国の自動車保有台数は1000人あたり766台(日本もドイツも534台)である(戸田,2003173)。米国の人口を3億人とすると、10年後の現在も保有率がほぼ変わらないとすれば、22980万台である。8億で割って単純計算すると、米国のシェアは29%である。つまり約30%である。国連統計局の数字でも、2002年の米国の自動車保有台数は乗用車22093万台、商業車869万台、合計22962万台である(United Nations20052006518)。同じく国連の数字では、2003年の日本は乗用車5521万台、商業車1731万台、合計7252万台である。2005年(世界人口64億人)には、世界の四輪車保有台数は8億9682万台、米国は1位で2億4124万台(世界の26.9%)、日本は2位で7569万台(8.4%)である(長谷川ほか,2007244)。2006年には世界の自動車が9億2275万台になった(竹内2008)。米国のシェアを26%とみておこう。

他方、「交通事故対策の南北格差」にも留意すべきだろう。世界の交通事故死は推計年間120万人で、餓死(1000万人)、煙草病(490万人)、エイズ(300万人)、結核(200万人)より少ないが、マラリア(100万人)や戦争(50万人)より多い。公害病(中国だけで100万人以上)と比べてどちらが多いかはわからない。ところが、先進国は自動車保有台数では60%を占めるのに、交通事故死では14%にすぎないのである(Williams20042005110)。車の便利さを享受するのは先進国であり、交通事故の被害を受けやすいのは発展途上国である。ベトナム(人口は日本の3分の2なのに、事故死は毎日30人以上で日本の倍、特にバイク事故が多い)などで交通事故は激増しているという(柴田,2007)。

 

11石油消費

 

前述のブレッカースは、米国が世界の石油消費の40%を占めると述べている(Bröckers2006150)が、この数字はどうも大きすぎる。三菱UFJリサーチ(http://www.murc.jp)のサイトに「BP世界エネルギー統計」の引用で米国の石油消費は日量約2000万バレル、世界に対するシェア25%とあるが、こちらのほうが正確だろう。なお、世界の石油消費に占める米国のシェアの推移をみると、19201950年代には50%を越えていたが、ピークの1925年には70%、1950年でもなお51%であった(戸田,199421)。石油大量消費の最大要因である「クルマ社会」の形成と問題点については、スネル弁護士などの分析が有益である(Snell1974=2006)。

 

12節 電力消費

 

 米国の電力消費は世界の25%を占める(天笠,200755)。日本は66%である。

 

13節 牛肉消費

 九州大学と鳥取大学の農学部が作成している「世界の食料統計」サイトによると、世界の牛肉消費は2005年に約5100万トンである。米国農務省(USDA)の数字だ。

http://worldfood.apionet.or.jp/graph/graph.cgi?byear=1960&eyear=2006&country=WORLD&article=beefveal&pop=0&type=2

食品安全委員会のサイトによると、2001年の米国の牛肉消費は1235万トンである。

http://www.fsc.go.jp/senmon/prion/p-dai7/prion7-siryou4-1.pdf

したがって、統計に数年の開きはあるが単純計算すると米国のシェアは約二四%になる。米国式「牛肉文明」がもたらす資源浪費、環境汚染、動物虐待、健康劣化については、リフキン(文明評論家)やパターソン(歴史学者)の分析が有益である(Rifkin19921993Patterson20022007)。

 

14節 原子力発電所

 日本原子力産業会議の発表によると、2004年末現在で、運転中の原子力発電所は、世界で434基、上位10カ国は、米国103基、フランス59基、日本52基、ロシア30基、英国23基、韓国19基、ドイツ18基、カナダ17基、インド14基、ウクライナ13基である(原子力資料情報室編,2005253)。 米国のシェアは基数では24%である。他方、世界の原発出力は37921万キロワット、米国は1259万キロワットであるから、シェアは27%になる。基数のシェアに比して出力のシェアが大きいのは、大型原発が多いからである。先進国で原発の増設に熱心なのは日本だけで、2007年現在で55基である。

 2006年現在では、世界で429基、米国103基、フランス59基、日本55基、ロシア27基、英国19基、韓国20基、ドイツ17基、カナダ18基、インド15基、ウクライナ15基である(原子力資料情報室編,2007237)。米国のシェアは基数では24%である。他方、出力は世界で3億8705万キロワット、米国は1億476万キロワットであるから、シェアも27%で変わりない2008年1月現在では、世界で435基と3億9224万キロワット、米国104基と1億0606万キロワットであるから、基数のシェアは24%、出力のシェア27%で変わりない(原子力資料情報室,2008257)。

 

 

15節 炭酸ガス排出

 平成18年度版環境白書によると、2003年の時点で世界の炭酸ガス排出に占める米国のシェアは23%である。数年前の24%とほぼ変わらない。

http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h18/html/vk0602010000.html#4_0_5_1

 二〇〇四年の時点では、米国のシェアは二二%になっている(北村,2007156)。

 

16節 刑務所等収容人口

 レーガン政権以降の米国は、「監獄大国」として知られている。刑務所・拘置所・少年院・軍刑務所などの収容人口は世界900万人のうち230万人が米国であり、世界一である(Davis200320082-3)。2位が中国の150万人、3位がロシアの89万人である。世界におけるシェアは二二%となる。人口10万人あたりの収監数は、1位が米国の750人(つまり133人に1人)、2位がロシアの628人、3位がベラルーシの426人である(菊川,2008a:52)。米国では犯罪減少にもかかわらず収容は増えており、また収容はアフリカ系、ヒスパニック系に集中している。アフリカ系黒人男性は15人に1人、ヒスパニック男性は36人に1人が収監されており、2034歳のアフリカ系男性は9人に1人が刑務所に入っているというから驚かされる。またジェンダーでは男性が95%を占めるが、女性の収容も急増している。刑務所内での女性差別事件も多い。日本も収容人口は急増中であるが、現在8万人であり、人口に「見合っている」。

 なお先進国で死刑制度を存置しているのが米国と日本だけであることはよく知られているが、死刑執行件数ではやはり中国が多い。中国の死刑執行件数は世界の約8割を占めるが、正確な件数は国家秘密なので不明である(王,200897)。

 

17節 世界銀行・IMFの投票権

世銀改革・世銀批判に取り組む米国のNGOであるグローバル・エクスチェンジのサイトに「米国のシェアはおおむね17%を維持、G7の合計は約45%」とあるので、投票権比率に1990年代半ば(北沢・村井編,199523)と大きな変化はない。

http://www.globalexchange.org/campaigns/wbimf/faq.html

 

18節 喫煙関連疾患

 

世界保健機関(WHO)によると、喫煙関連疾患による死亡数は、世界で年間に約490万人である(戸田,2006a)。米国保健福祉省(USDHHS)によると、米国では年間約44万人である。したがって、米国のシェアは約9%である。なお、WHOの最近の推計によると、受動喫煙(他人の煙)による死亡数は世界で約20万人(年間)とのことである(NHKニュース2007530日)。

煙草病の年間死者は世界で約500万人、米国で約45万人、日本で約11万人。これは喫煙による能動喫煙被害であるが、他人の喫煙による受動喫煙被害もその5%から10%程度になるものとみられる。これは、地上最大規模の構造的暴力である。その「主犯」は煙草会社と煙草を奨励する政府機関である。会社や政府機関の目的は喫煙者の生命健康を害することではなく、利潤や財政収入の増大であるから、典型的な構造的暴力である。世界の3大煙草会社は、フィリップモリス、ブリティッシュ・米国ン・タバコ、JT(日本たばこ産業)である(戸田,2006a)。財務省が所管するたばこ事業法(1984年制定)は、その第1条でいうように「我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的」としている。米国の通商代表部(USTR)は、自由貿易の美名のもとに煙草の輸出促進をはかっている。厚生労働省や米国保健福祉省は公衆衛生の立場から喫煙抑制をはかっており、WHOの煙草規制枠組み条約(FCTC)や日本の健康増進法が存在するのであるから、政府の行動が矛盾を含んでいることになる。喫煙者は副流煙によってまわりの人に迷惑(受動喫煙の被害)をかけるので、侵略戦争に動員される下級兵士と同様に「被害者となることによって加害者となる」わけである。

中国衛生部が2007529日に発表したところによると、同国で喫煙に起因する疾病での死者が毎年約100万人、受動喫煙による死者も10万人を超えるとの推計値が得られた。中国人13億人のうち喫煙者は35億人。また受動喫煙者は54億人で、うち18億人が15歳以下だったという(「中国情報局」サイト)。

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2007&d=0530&f=national_0530_001.shtml

 喫煙関連疾患による死亡の絶対数では人口の多い中国が世界一であるが、人口比では米国のほうが多いだろう。米国の喫煙関連疾患には癌や呼吸器疾患の他に心臓病も多い。

 

19節 人口

 

「世界の人口」サイトによると、2007724日現在の世界人口は、約661500万人である。

http://arkot.com/jinkou/

 人民網日本語版サイトによると、米国の人口は20061017日に3億人を突破した。

http://j.peopledaily.com.cn/2006/10/19/jp20061019_64068.html

中国、インドに次ぐ、世界第3位の人口で、世界人口に占めるシェアは、5%弱だ。

 

以上のように、広告費65%、戦略核兵器53%、違法麻薬の消費50%、軍事費46%、銃保有数33%、武器輸出31%、紙消費29%、GDP28%、自動車保有台数26%、石油消費25%、電力消費25%、牛肉消費24%、原子力発電所の数24%、炭酸ガス排出23%、喫煙関連疾患9%、人口5%というのが、とりあえず得られた数字であった。これらの数字はあくまで「おおまかな目安」にすぎない。しかし、地球社会の物質フローと貨幣フローにおける米国の地位について、具体的なイメージが得られるであろう。軍事大国であることはよく知られているが、広告費のシェアがさらに突出しているのは、不必要なものを大量生産して売りつけるために広告で騙す「浪費社会」の構造(Schor19982000)を示唆している。

 

第4章  「9・11事件」の謎 

 

戦争や秘密工作のためにはしばしば「謀略」が「必要」となる。イランのモサデク政権転覆(1953年)、グアテマラのアルベンス政権転覆(1954年)、インドネシアのスカルノ政権転覆(1965年)、ベトナムでのトンキン湾事件(1964年)、チリのアジェンデ政権転覆(1973年9月11日)などである。「謀略」の最新の例が「9・11事件」ではないだろうか。

ブッシュ政権の公式見解は、①アルカイダによる不意打ち的奇襲である。異論(少数意見)には、②予知していたが、傍観していた(a.情報機関レベルの対応、b.トップレベルの対応)、③予知しており、攻撃が成功するように防衛レベルを下げた、④予知しており、被害を拡大するために破壊活動にまで手を染めた、⑤実行犯は米国のスパイで、米国の自作自演、などがある(注3)。③に相当するのはハイジャックへの迎撃機を発進しなかったか、もしくは遠方の基地からゆっくり向かわせた、④にはツインタワーが約10秒できれいに崩壊するように事前に爆薬を仕掛けた、などが考えられる。⑤の実行犯とは、複数のアラブ男性のことである(私自身は②③④を支持するが、⑤については判断を保留する)。なおFBIのサイトでは、ビン・ラディンは9・11事件ではなく1998年テロ(ケニア、タンザニアの米国大使館への攻撃)の容疑者であると説明されている。つまり、9・11事件との関係については、「証拠不十分」なのである。オサマ・ビン・ラディン(1957〜 )の英文綴りには、Osama Bin LadenUsama Bin Ladenの2種類があるが、米国政府は後者を愛用しているようだ。Googleで「FBI Bin Laden」を引くと「10人の重大な逃亡中容疑者」のなかのビン・ラディンの説明(1999年6月掲示、200111月改訂)が出てくるので確認してほしい。

http://www.fbi.gov/wanted/topten/fugitives/laden.htm

容疑説明の部分(2008年2月現在)を抜粋しておこう。

 

CAUTION

USAMA BIN LADEN IS WANTED IN CONNECTION WITH THE AUGUST 7, 1998, BOMBINGS OF THE UNITED STATES EMBASSIES IN DAR ES SALAAM, TANZANIA, AND NAIROBI, KENYA. THESE ATTACKS KILLED OVER 200 PEOPLE. IN ADDITION, BIN LADEN IS A SUSPECT IN OTHER TERRORIST ATTACKS THROUGHOUT THE WORLD. (オサマ・ビン・ラディンは、1998年8月7日にダルエスサラームの駐タンザニア米国大使館とナイロビの駐ケニア米国大使館の爆破で200人以上殺害したこと及びその他世界各地でのテロ行為の容疑で捜索中である。)

ビン・ラディンと9・11事件の関係が不明であるから、「9・11事件の首謀者は不明である」というのがFBI(連邦捜査局)の公式見解だということになる。では9・11事件の実行犯についてはどうか。FBIが事件直後に公表した19人のアラブ人男性のうち7人は人違いであることがわかったが、情報は訂正されていない。9・11事件についての少数意見(公式見解への異論)は、「9・11事件への米国政府の共犯」という仮説を採用する。「陰謀説」というと誤解を招くので「共犯説」と呼んでおきたい。公式見解も陰謀説なのである。公式見解は「アルカイダ陰謀説」である。少数意見は「外部テロリストと政府の共犯的陰謀説」である。グリフィン教授が繰り返し指摘するように、「2つの陰謀説が対立している」のである。

もし公式見解の虚偽性が十分に証明されるならば、その影響は計り知れないであろう。それは、世界の多くの人々を「米国神話」の呪縛から解き放つ一歩となるに違いない。不正選挙を疑われたブッシュの人気回復も、国際法違反のアフガニスタン戦争、イラク戦争も、愛国者法も、グアンタナモ基地やアブグレイブ収容所の不祥事も、出発点は9・11事件だったのである。

少数意見が提示する「9・11事件の謎」(表3)は複雑な問題であるが、日本語文献としては、2007年9月11日発行の3冊(Griffin20042007;木村編,2007;童子丸,2007)が必読である。また、平易な解説としては、漫画本(藤田シーン他,2006)がある。また、未邦訳の英語文献では、グリフィンの2冊とスコットの新著、フェッチャー編の論文集が特に有益であろう(Griffin2007Griffin2008Scott2007Fetzered) ,2007)。スコット教授は映像『テロリストは誰? 第三世界に対する戦争 僕がアメリカの外交政策について学んだこと』(グローバルピースキャンペーン、2004年)にも出演している。

 

表 9・11事件の謎(2001年9月11日の出来事)

    週刊金曜日トークライブ資料(2008年9月26日、東京)に加筆 戸田清

 

空港出発

旅客機の最初の異変(諸説あり)

衝突

崩壊

主な仮説・疑惑(米国政府共犯説)

アメリカン航空11便

ボストン

7時59

8時14

 

 

 

WTC1(ノースタワー)8時46

1028分(衝突から102分後)

爆破解体か?

ユナイテッド

航空175便

ボストン

8時14

8時42

 

 

 

WTC2(サウスタワー)9時03

9時59分(衝突から56分後)

爆破解体か?

アメリカン航空77便

ワシントン

8時20

8時46

 

 

 

ペンタゴン

9時32分(地震観測データほか)または

9時38分(政府見解)

 

衝突したのは別の飛行物体か?

ユナイテッド航空93便

ニューアーク[ニュージャージー州]

8時42分(予

定より41分遅

れ)

9時16分または9時28

 

 

 

 

 

ペンシルヴァニア州シャンクスビル

1006分(地震観測データほか)または1003分(政府見解)

 

墜落ではなく米軍による撃墜か?

93便無傷説もある)

 

 

なし

WTC7(第7ビル)1720

爆破解体か?

出典 『9・11事件は謀略か』デヴィッド・レイ・グリフィン、きくちゆみ・戸田清訳(緑風

出版2007年)および下記Griffin2008a、Griffin2008bから戸田が作成。WTC1とWTC2をあわせてツイ

ンタワーと言う。

 

世界貿易センター(WTC)のツインタワーはそれぞれ約10秒で崩壊した。数百カ所以上のボルト・ナットや溶接が一挙に破断しないとそうならないので、事前に爆薬を設置した可能性が示唆される。爆薬によると思われる爆発音を聞いたという消防士などの証言も多い。ツインタワーから100メートル離れた「第7ビル」が午後5時すぎに10秒以内で崩壊したことも不可解である。第7ビルには飛行機が激突していない。そもそも第7ビルの崩壊自体が話題にならなかったので、第7ビルの崩壊の事実そのものを知らない人も多い。第7ビルも爆薬の設置による制御解体(controlled demolition)の可能性が示唆される。ツインタワーにしても、飛行機の激突と50分や90分の火災だけで崩壊するのは不思議である。飛行機の激突はなかったにしても、2005年のマドリードの高層ビル火災では、20時間の火災でもビルの崩壊はなかった。ツインタワーの崩壊の際にはがれた鉄柱が、150メートル離れたビルに「突き刺さった」のも不可解である(童子丸,2007)。位置エネルギーからそのような水平方向のエネルギーが生じるであろうか。

ハイジャックがわかってから迎撃機がすぐに発進する標準手順がとられなかったことも不思議である。公式説明では、3機目がペンタゴンに激突してから迎撃機が発進した、あるいは近くの空軍基地からではなく遠方の空軍基地から、最高速度ではなく最高速度の3分の1位の速度で現地へ向かったことになっている。

ペンタゴンへの激突は、旅客機が激突する場面の写真がないし、激突で生じた穴も小さすぎる。そもそも世界一厳重に警備されているペンタゴンに激突すること自体が不可解である。友軍の信号を出す米軍の飛行物体(無人飛行機やミサイルなど)がペンタゴンに激突した可能性が示唆されている。

9・11事件の真相を追究する市民運動が注目されるが、とりあえず3つのサイトを紹介しておこう。

9・11事件再調査運動(ReOpen 911

http://www.reopen911.org/

9・11事件の真相を究明する学者の会(Scholars for 9/11 Truth

http://911scholars.org/

9・11事件の真相と正義を追求する学者の会(Scholars for 9/11 Truth & Justice

http://stj911.org/

9・11事件の公式見解を疑う愛国者の会( Patriots Question 9/11)  http://patriotsquestion911.com/

 

 

 

 

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